2011.12.31

デコレーションういろ・その後

 23日から25日の三連休は、夢かうつつかと過ぎ、気がつけば26日。夢として忘れていたことが、うつつに呼び出されました。「クリスマスだから」と棚上げしていたことは、忘れようとしながらも忘れられず、26日はもしかしたらクロース翁がなんとかしてくれているかもしれない、と粉雪ほどの期待を持って棚を見ると、上げていた問題は厳然とそこにあり、肩を落としながら、棚から下ろします。
 そこには、パンドラの箱の上の方に詰まっていたようなことが、わんさかと残っています。これをしないと納まらない仕事、来月に向けての試験勉強、部屋の隅に残るホコリを取ったり、しつこい油汚れをこすり落としたり、行く年を見送り、来る年を迎える儀礼に必要なものの用意、など、皆様それぞれ、重いものを棚の上に置いていらっしゃったのではないでしょうか。お見舞い申しあげます。
 そんななか、クリスマス前からの甘い記憶を続けさせてくれるものは、やはりあります。ケーキが終われば、和菓子です。年末年始もクリスマスと変わらず、西洋風のお菓子、という手もありますが、ここは和菓子屋さんが、臥薪嘗胆、クリスマスで溜めていた気を発散させた成果に全面的にお任せしようではありませんか。
 そう思って、そそくさとコートを着ようとすると、襟足がひっぱられました。付き合いの長い冷蔵庫からです。
「ああ、そうだった……」
 クリスマスケーキの予約をし損ねて、ういろをデコレーションしました。精一杯、ういろをおめかしさせました。そのデコレーションういろに対しては、私の味覚は一定の評価を与えましたし、その変身過程を書いた記事もご好評いただけたようです。
 おめかしは、贅沢にしました。ティースプーンに乗るくらいの金時人参のために、二分の一本煮ました。その土台となるあんこのためにお鍋一杯に小豆を煮ました。味に変化を付けるために柚子蜜をカップ一杯作りました。抹茶は一番少ないものを購入しましたが、容器内を見ると、まだ何杯も飲めそうです。黒蜜はどれだけ作ることが出来るか分からないくらいに、まだまだ砂糖類が残っています。
「自分で作っておいて、それっきりかよ」
 彼らが言っています。いや、そんなわけはない、きちんと後でいただきますよ、となだめても、
「後で、と言って、きちんと済ませたためしが、君にあるのか」
 追及の手を緩めません。分かりました、分かりました。ちゃんと、お世話になったあなた方をいただいてから、次の甘味に移ります。
 それでは、順番に、残り物を福にして、今年を納めることにしましょう。

・つぶあん
 これは、応用が利きやすい甘味です。特に名古屋ですと、あちらこちらそちらどこでも、あんこが出てきます。年中あんこです。朝からあんこです。それならば、

つぶあん・その後
 粒に元気がありませんが、美味しいです

 小倉トーストにしましょう。こんがりきつね色トーストにバターを塗って、少し塩気を利かせます。その上に、あんこをお好きなだけ乗せてください。完成です。
 あんぱんとはまた違う和洋折衷の甘味です。名古屋の喫茶店の定番甘味も、あんこを作っておけば、いつでも食べられます。ジャムやはちみつよりも、コーヒーに合うような気がいたします。

・黒蜜
 これは、掛けるか、混ぜ込むか……。掛ける方にしました。

黒蜜・その後
 熱焼き菓子

 ホットケーキに掛けてみました。先日、NHK-Eの「グレーテルのかまど」という番組で、小説家・池波正太郎さんが大のホットケーキ好き、ということを知りました。池波さんが幼少の頃、召し上がったホットケーキには、メープルシロップではなく、黒蜜が掛かっていた、らしいのです。
 メープルシロップと黒蜜。見た目は似ているけれども、そうやって食べたことは無いな、と思い、真似をしてみました。
 当たり前ですが、和風ですね。少し時間が経つと、黒糖が固まって、しゃりしゃりとした食感が出てきます。よって、なめらかさ、には欠けますが、強引に和風にしたことで、かえって「舶来のお菓子」という雰囲気が生まれています。これからは、黒蜜もホットケーキのトッピングの選択に入れることにしました。

・寒天
 金時人参につやを出すためだけにお湯で溶かした寒天。当然、余ります。
 これは、もう、ささっ、と、

寒天・その後
 シナモン好きには簡単で嬉しいお菓子です

 きび砂糖と豆乳とシナモンを好きなだけ入れて(もちろん加減を見ながらです。でもかなり曖昧です)、小さなグラスに入れて固めれば、冷菓のできあがり。
 食後に、するっ、と食べたいときに重宝します。豆乳を牛乳に変えても、シナモンを入れても入れなくても、その他の香料を入れても入れなくても、それはお好みのままに。

・柚子蜜
 これは、はじめから狙っていた使い方があります。はちみつと、柚子蜜を入れて、

柚子蜜・その後1
 柚子ジャ……、蜜です!

 熱湯を注いだら、

柚子蜜・その後2
 あったまりますし、なにより簡単

 柚子とはちみつのホットドリンク・生姜風味、です。簡単、簡単。しかも美味しいです。しかも温まります。いいことずくめ……、かと思いきや、そのまま飲むと、刻んだ柚子の皮が底に沈みます。スプーンなどで、混ぜながらお飲みください。最後に残った柚子にも味があるかも、と思い、そのままお湯を足して飲んでみましたが、ただのお湯と皮でした。

・金時人参の甘露煮
 難関が来ました。前の二つが簡単だっただけに、悩みます。そのまま食べても、甘くて美味しいのですが、芸がありません。かといって、これ以上、お菓子っぽいものにはできそうにもなく……。
 手近な材料を追加して、晩ごはんにしましょう。

金時人参・その後1
 材料:お肉と野菜

 豚肉とジャガイモと玉ねぎ、そして、甘露煮にできなかった分の金時人参をお鍋で炒めて、

金時人参・その後2
 豚肉を炒めて、一旦出して、野菜を炒めて、豚肉を再度入れる、の順番で行きました

 ひたひたの水で煮ます。アクを取りながら、煮込んで、

金時人参・その後3
 甘みは、甘露煮からのみ

 柔らかくなってきたところで、甘露煮とその汁、お醤油、ダシを追加して、落としぶたをしてさらに煮込みます。

金時人参・その後4
 粉山椒が無かったので、代わりに五香粉をふりかけました

 肉じゃがです。お砂糖とみりんは使いません。甘みは、甘露煮の汁で代用します。今回は、おたまで二杯入れたのですが、少し甘くなりすぎました。私は甘い肉じゃがは好きな方なので、良かったのですが、これ以上甘かったら、問題あり、のレベルでした。あっちの水は苦いことを警戒したら、こっちの水はちょっと甘すぎて、蛍が困るくらいです。
 肉じゃがのお肉は地域によって違いますので、これもお好みでどうぞ。私は牛肉の肉じゃがをたらふく食べて育ちました。今回は、お安かったので、豚こまです。

・抹茶
 一度に飲みきることは難しいですし、拙宅には茶器はありません。マグカップなら結構ありますが、茶筅が使いにくそうなので、しゃかしゃかしない抹茶のいただきかたを考えます。
 抹茶はクリーミーなものと合います。抹茶アイスクリームの発明者には相応の対価が支払われるべきではなかろうか、とさえ思います。
 スターバックスさんにも、定番で抹茶メニューがあります。前記のホットケーキの如く、あれを真似してみます。
 真似しようと思いますが、詳しい作り方が分かりません。甘くて、クリーミーで、抹茶で、とても美味しかった気がします。

抹茶・その後1
 まだ、これだけお抹茶が余っています

 熱い豆乳でクリーミーに、

抹茶・その後2
 適量が分からないので、これくらいを試しに

 抹茶の薫りをぞんぶんに吸い込みながら

抹茶・その後3
 きび砂糖はレギュラーになりました

 きび砂糖で甘くして、

抹茶・その後4
 惨事の後です

 ミキサー! (この段階でフタがきちんとされていなくて、豆乳が辺りに飛び散り、惨事が発生しました。幸い、飛び散った量はそれほど多く無かったので、掃除は直ぐ済みましたが、意欲はかなり失せました。これは少し時間を置いた二回目のチャレンジです)
 慎重かつ大胆にミックスできたら、グラスに注ぎます。

抹茶・その後5
 淡く色づき、香りもゆらめき

 できました。豆乳抹茶ドリンクです。スターバックスさんのコーリング風に書きますと、「トール、エキストラホット、ソイ、抹茶ラテ、っぽいのー」でしょうか。
 きちんと泡立っていて、クリーミー、ほんのり甘く、抹茶もちゃんと香ります(抹茶はもう少し多く入れて、薫りを強くしても良かったかもしれないと、空になったグラスを見ながら思いました)。

 これで、デコレーションういろの余りは全て無くなりました。新しいお菓子を、新しい年を迎える準備ができました。
 襟足を引っ張られることなく、コートを羽織って、甘味を探しに行ってきます。

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2011.12.20

クリスマスケーキの予約を逃した方のために、デコレーションういろのご案内(4)

 クリスマスケーキの基礎は、スポンジケーキが一般的です。それを、富士の高嶺なる雪のような真白き生クリームで覆います。それが、テーブルに運ばれたとき、人々に清らかな歓びをもたらします。
 よって、


 伊勢虎屋ういろさんの「白」

 白ういろです。名古屋で白い和菓子といえば、白ういろです。しかも、


 白さに見惚れます

 今回は二本です。一本だけでもなかなか食べきれるものではないのですが、今回は二本です。贅の限りを尽くします。
 名古屋を中心とした中京地域では、たくさんの種類のういろが販売されていますが、今は「虎屋ういろ」さんの白ういろです。虎屋ういろさんのういろは一本ごと個別にパックされておらず、店頭で「二本くっつけて並べてください」という購入方法が取れるためです。ういろの味が良いのは言わずもがなです。
 ういろをそのままお皿に置いたのでは、やや寂しい感じがしましたので、笹の葉を敷きます。
 笹の葉は、濡らしたクッキングペーパーで表面を拭き、ハサミで切りました。文字型のちまちまでやや疲れていたのと、私に芸術的才能が無いため、ただの長方形です。


 10枚入りだったので8枚残っています

 お寿司の職人さんのばらん切りを見ると、感嘆の声が漏れてしまいます。まな板に置いたばらんを、さらしに巻いていたであろう包丁一本で華麗に切っていきます。濃緑の葉が七色に変じたかのように見える妙技は、その修得にさぞかしご苦労もおありだったであろうと、胸中涕泣いたします。
 ばらんの上に白ういろ二本をぴったりと並べ、その上に、長かった道のりを想いながら、あれこれを飾っていきましょう。


 美術的センスを強く欲します

 飾りの第一は、ちまちまの祝い言葉からにします。祝い言葉は「妙香園」さんのお抹茶で書きます。店員さんに、
「お菓子用にお抹茶を使いたいのですが」
 とお伺いしたところ、一番お手頃価格のお抹茶で十分美味しく綺麗にできますよ、ということでしたので、そのご助言を取り入れ、「宮の森」20gです。開けてみると、一番少ない20gで十分さ加減が分かりました。思う存分、文字を作ることができます。


 妙香園さんでお買い物をすると、お茶を振る舞っていただけます

 文字を切り抜いたトレーシングペーパーを白ういろ(二本)にぴったりと張り付かせ、その上から、茶こしで、とんとんと宮の森を降らせます。


 最高級のお抹茶の香りはどれだけ素晴らしいのでしょう…?

 こんなに緑色たくさんでいいのだろか、失敗は許されないのだけれども、と少し不安を覚えつつ薫り高い緑をさらに降らせます。十分に行き渡った後、トレーシングペーパーを、ちまちまと外すと、


 文字が出てきた

 文字が浮き出ていました。良かったです。あとは、肩の力を抜いて飾り付けられます。
 黒蜜を垂らします。
 粒を潰さないように、小豆を乗せます。
 小豆の上に、寒天をまとった金時人参を載せます。
 できました。


 ようやく完成

 クリスマスデコレーションういろです。
 白ういろを二本も使うという贅沢をして正解でした。
 「祝 御降誕」のお祝いの言葉。アップにしてみると、細かい部分が表現しきれていないことが露呈してしまいます。何卒、お許しいただきたく存じます。


 

 イチゴに見立てた金時人参、その土台となる粒あん、甘さを引き立てる黒蜜、の組み合わせです。黒蜜は、作ってから少し時間を置いてしまったので、固まった部分がありました。つぶつぶが悔しいです。再度湯煎して、漉して掛けるべきでしたが、気力に余裕がありませんでした。


 赤と緑のコントラスト

 では、白ういろ入刀。


 弾力が強い…

 ……ひっつきます。ケーキナイフよりも普通の包丁の方が良かったようです。それでも、できるだけ形を崩さないように、お皿へ。
 こうすると、白ういろに見えません。まだ、白ういろに見える方は、一旦眼鏡をお外しください。


 カット版・デコレーションういろ

 しばらくの鑑賞の後、いただきます。
 一口目は、ういろ、黒蜜少し、粒あん乗せ、お抹茶です。おお、あれだけ主張の強かった黒蜜が大人しくなっています。粒あんの甘さと、宮の森の香りの雅やかさが、長く長く、口からのどへと、ふうわり渦巻きます。白ういろは、甘さは彼自身のものを最低限保ちつつ、多くは他に任せましょう、という姿勢のようです。でも、もっちりねっちりの食感だけは誰にも譲れない、という気概が見て取れます。
 金時人参の甘露煮は、もう少しきび砂糖を入れて、甘さを強くして然るべきでした。金時人参そのものの味は良いですし、食感も白ういろとは違い、柔らかくとも、しゃっきりとしていています。ただ、私の腕不足により、お菓子としての役を十分に果たせなかったようです。金時人参に、ただただ叩頭するのみです。
 三分の一くらいいただいたところで、少し味に変化を付けてみることにしました。このようなものも作っていました。


 「蜜」です

 柚子蜜です。決してジャムではありません。蜜です。和風です。


 柚子に頑張ってもらいます

 柚子の皮をむき、細かく刻みます。私は、調味料柑橘類は、かぼすで育ちました。よって、柚子とはあまり付き合いがありません。でも、嫌ってはいません。むしろ、好ましく思っています。冬場、お猿さんが柚子湯に入っているニュースは、ほほえましく観ております。かぼすは、その鋭さから、目の覚めるような酸味を提供しますが、柚子はひんやりとした落ち着いた酸味だと思います。これからはお料理で使い分けたいと思います。
 皮と果汁とその他の部分(果汁をしぼった後のもの)に分けて、あとは、お砂糖を入れて、順繰りに煮ていけばいいのですが、これも少し下準備を。


 三つの部分に分けます

 皮は、何度か茹でる、湯切りを繰り返してえぐみを取ります。かぼすよりえぐみが無さそうなので、これが必要なのかな、と思いながら、ジャ……、蜜の作り方のレシピを見つつ茹でます。


 クセを取るために湯がきを三回繰り返しました

 次に、クッキングペーパーで包んだその他の部分をお湯で気が済むまで煮ます。ペクチンというのを出すためらしいです。今作っておりますのは、ジャムではありません。蜜です。
 ペクチンが出たのかどうか分かりませんが、その他の部分を上げてから、皮を入れて煮て、果汁を入れて煮て、温め効果を期待したショウガ(一かけ。刻みとすり下ろし汁を半々です)を入れて煮て、砂糖を入れて煮て、さらに煮て、煮詰まったら、蜜、できあがりです。


 今度は、柚子と生姜の風味で

 こうしてできたのを添えて、一口。
 ……確かに、クセがありますね。もう少し、皮を湯がいたら良かったかもしれません。お抹茶と合わせると、味がかち合うようです。白ういろには、別々に添えると良いと思います。

――――――――――

 白ういろ(二本)をいくつかの味でいただきました。二本なので、たらふくになるかと思いきや、少しの時間で、また、おなかが空きました。意外と腹持ち力を有さないのか、私が食いしん坊なのか。
 ぐー、とおなかの音を聞き、不器用に切られた笹の葉が残ったお皿を見つつ思いました。煮豆、甘露煮、柚子、お抹茶……。

「これは、おせちだ」


 緑バージョン・名古屋テレビ塔

 皆様、メリー・クリスマス。


 ◎主な店舗・商品データ
 ・商品データ
  商品名:白ういろ
  価格:¥315

 ・店舗データ
  店舗名:伊勢虎屋ういろ 名古屋三越栄店
  住所:名古屋市中区栄3-5-1 地下1階
  営業時間:名古屋三越・栄店に準じる
  定休日:名古屋三越・栄店に準じる
  アクセス:名古屋市営地下鉄・栄駅から、サカエチカ6番出入口直結
  公式サイト:http://www.torayauiro.co.jp/


 ・商品データ
  商品名:宮の森 20g
  価格:¥500

 ・店舗データ
  店舗名:妙香園 サンロード
  住所:名古屋市中村区名駅4-7-25先
  営業時間:10:00-20:30
  アクセス:JR名古屋駅から、桜通口方面・地下街サンロードへ下り、ミッドランドスクエア方向へ。
  公式サイト:http://www.myokoen.com/


  その他の材料は、名古屋市内各百貨店、東急ハンズさん、成城石井さんなどで揃えました。

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クリスマスケーキの予約を逃した方のために、デコレーションういろのご案内(3)

 あんこと黒蜜で、和菓子としての甘味を演出することができるでしょう。
 しかし、いかんせん、派手さに欠けます。彼ら、彼女らに内包された甘味には華やか且つ押しの強さはありますが、外見は落ち着き払っています。
 ここで今一度、洋菓子のクリスマスケーキを、思い起こしてみましょう。スポンジを覆う生クリーム。その上に配された、イチゴと祝い言葉。
 ケーキをクリスマスケーキにしているのは、円いホールであること、そして、イチゴと祝い言葉なのです。それらを疎かにしていては、和風でいきます、と言っても、なかなか認められないでしょう。
 では、イチゴは和風に合うか?
 この疑問に対する答えの一つが、苺大福です。イチゴは和風になります。それならば、今回イチゴを乗せてみましょう、とは簡単には行きません。
 イチゴは英語で何と言うでしょうか。「ストロベリー」です。それでは、小豆は? 黒蜜は? 簡単に英語で言えるものは、今回はお引き取り願うことにしました。
 代わりに用意したものは、


 いつもより長い人参を使います

 ニンジンです。
 「キャロット」ではないか、と仰る方もいらっしゃるのではないかと推測します。これは「金時人参」です。和風です。大丈夫です。
 確認が取れたところで、下ごしらえをします。三センチ幅くらいに切り、面を取り、丸っこくします。


 丸くしていないのも煮ます。もったいない、もったいない

 金時人参とその半分の量のきび砂糖を鍋に入れ、水から弱火で煮ていきます。
 鍋の中の水がちりちりと温まって行くにつれ、水から変わったお湯が薄い橙色に染まっていき、それとともに、ほろほろと湯気が立ち上ります。この湯気は、金時人参ときび砂糖発祥ですので、優しく、甘く、だけど、背が伸びきりっとしていて、潔さを感じます。きび砂糖も良い方と出会うことができたようです。


 きび砂糖が金時人参と邂逅

 小豆にしても、黒蜜にしても、この金時人参にしても、その湯気を吸い込むと、いろいろな想いがわいてきて、楽しいです。料理は食べる楽しさがあるのはもちろんですが、作っている段階の「湯気の味」が大切だなあ、と思わされます。
 ある程度煮えたところで、みりんと塩を参加させます。塩の万能さは世界にとどろいていますが、みりんの巧みさも唸らせられます。これほど、お得な調味料はなかなかありません。大さじ一杯入れるだけで、甘みが生まれ、お酒が香り、つやが出ます。これほど、有能なのに、全面的に日の当たる場所に出ていないのが不思議です。後ろでてきぱきとそつなく働く存在です。当人がお酒出身なので、飲み友達なったら、たらふくになるまで快く付き合ってくれそうです。


 みりん、凄い

 多数の参加者により、味の複雑化を果たした金時人参は、色味に役立ってもらいます。クッキングペーパーで軽く水分を取り、バットに並べます。あら熱が取れたところで、刷毛を使って、お湯で溶かした寒天を表面に塗ります。これで、さらに金時人参に艶っぽさを出します。光を反射させた朱い珠からは、もうイチゴの代役なんて言わせません、という意気込みが伝わってきます。


 ゼラチンを使うと「洋」っぽいので寒天を

 クリスマスケーキ飾りのもう一つの柱「祝い言葉」を書きます。
 はて、書くにはどうしたらいいのやら、何で書いたらいいのやら、と思った後、書かずに型抜きすれば良いではないか、と結論に幸運にもすぐさま達しました。
 和風のデコレーションですから、言葉も和風です。パソコンで、祝い言葉を印刷して、

 祝い言葉はワープロソフトで作成

 トレーシングペーパーを重ねて、


 トレーシングペーパーの方が後ではがしやすそうな気がしました

 カッターで切り抜きます。これが、予想していたよりも、骨の折れることでした。細かい部分が切りにくいです。金時人参の面取りをするときも思いましたが、もう少し、自分の手先が器用だったらな、と無い物ねだりをしつつ、無いものをねだったら、二十五日には、クロース翁が贈ってくれるのかな、と期待しつつ、今回一番のちまちましたことを続けます。


 今回、一番細かいところです

 長いちまちまの時間が終わりました。準備完了です。やっと、飾り付けです。今のところ、イメージに近いです。緊張と嬉しさと、もう少し早くクリスマスケーキを予約していればこんなことには、という思いがない交ぜになっています。


 (4)につづきます

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クリスマスケーキの予約を逃した方のために、デコレーションういろのご案内(2)

 ケーキ屋さんで、「和風のケーキ」と名づけられていると(「~ジャポネ」「~ド・ベール」など)、抹茶や小豆が使われていることが多いようです。今回は、本職の方々のその方式に倣います。既に「素人+創作和風ケーキ」なので、これ以上、冒険するわけには参りません。
 頭の中には、もう、デコレーションが出来上がっています。それにいかに近づけるか、が勝負です。
 近づくように、各部分ごとにレシピを調べます。そして、「一番大変そう」なのは、小豆だと分かりました。「明日できることは今日しましょう」の格言とおりに、大変そうなのは、早めに仕上げることにします。
 小豆は、袋に、煮る方法が表記されていました。ありがたいことです。もう、クロース翁がプレゼントを贈ってくださったようなものです。
 それを見ますと……、


 袋の裏面に小豆煮詳細。煮ようとして、困る人が多いのでしょう

 仕上がりまでに、四時間以上掛かることが判明しました。心が折れきってしまう前に、小豆を洗います。


 小豆あらいにとりつかれたように洗います

 「小豆あらい」という妖怪がいます。小豆あらい伝説は全国に広がっていて、川に引き込んだり、福をもたらしたりと、様々なタイプがいるようです。このような多様性を見せているのは、小豆がそれだけ、古くから日本で親しまれた甘味だったからではないでしょうか。小豆の風味と甘味に魅せられる人がたくさん居て、小豆を大切にしていたからこそ、その味に感謝し、ばちがあたらないように、たとえ一粒でも心を込めて扱ったのではないかな、と思いつつ、洗った豆を鍋に移し、くつくつと煮える豆を見つめます。


 これくらいの火加減でじっくりと

 小豆が煮える間は、アクを取り、差し水をする、のくり返しです。大変です。和菓子屋さんに敬意を表します。


 アクを取って


 差し水。というのを10分おきくらいにひたすら

 煮汁から小豆が出ないように気をつけつつ、軟らかくなるなるまで煮ます。ひたすら煮ます。二時間ほどして、煮上がった小豆を味見してみますと、
「豆だ……」
 まだ、あんこにはなっていません。煮豆です。そこはかとない、つま先からゆっくりと温かくなるような甘さはありますが、豆です。味付けをしましょう。
 家に上白糖がありましたが、後ほど別のものに使用するために新規に導入した「きび砂糖」がありますので、こちらを使ってみます。小豆レシピの注意書きによると、砂糖を一気に入れると、小豆が固くなるので、三回くらいに分けて入れるように、とのこと。言われるがままに三回に分割しました。そもそも、こんなに大量のお砂糖を一気に入れる、度胸の良さはありません。そんな豪気を持ち合わせていたら、既に世界に羽ばたいているはずです。


 お菓子作りをすると、こんなに、大量の、お砂糖が、使われているのかと、見せつけられます

 弱火にして、くたくたと煮つつ、十数分ごとにきび砂糖を入れていきます。分割しましたが、それでも結構な量です。一回……、二回……、少々の塩を入れて、三回……、数十分過ぎた頃、胸が高鳴ってきました。徐々に強まるきび砂糖の甘い香り、小豆のふっくりとした匂い。勢い良く入っていく大量の褐色の結晶。
 危うさ、楽しさ。
 砂糖の魔力、でしょうか。宴の前に近い気分になっていきます。クロース翁の微笑みが見えます。


 やっと、煮詰まった!

 煮えました。小豆があんこになっています。香りも確かにあんこです。ちょっと味見を。

 我慢できずに、ほんの少しだけ

 このまま、お餅を入れて、おしるこでたらふくになってもいいかもしれない、という気分がわき起こります。私は九州出身なので、丸餅です。焼きません。
 丸餅衝動を抑えて、お鍋に蓋をして、数十分寝かせるように、という指示に従います。美味しくなるのならば、蓋くらい、二枚でも三枚でもかぶせます。
 ようやく小豆の下ごしらえができました。一番大変そうなのが終了したので、あとは楽ちん、のはずですが、いきあたりばったりがそれを阻む、という話しは有名です。
 次は、もう少し甘味を足そうと思います。
 夏場にお世話になった、あんみつや白玉を思い出します。それには、あれが付き従っていました。


 お砂糖二種類とお水

 とろりとした黒蜜とすっきりした冷菓。あの組み合わせは絶品です。しゅるり、と舌の上を舞うあんみつ、白玉を、黒蜜がとろりと引き留めます。ともすれば、のどへと急ぐ彼らを黒蜜は「まあまあ、あわてずに」と小さな分銅のような重みとともに甘みを与えてくれます。
 そんな、安心感のある黒蜜ですが、作り方は意外や、簡単。
 今回は、先程も用いたきび砂糖に登場願います。そこに黒糖を合わせ、水で溶かしつつ煮れば良いだけ。東大寺金剛力士像のようなあんこ作りの厳しさに比べたら、広隆寺弥勒菩薩半跏思惟像の如き穏やかなレシピです。
 さて、全部をお鍋に移して、と、思いましたが、その前に、それぞれのお砂糖の味見します。袋を開けた途端に立ち上った甘い香りに参ったためです。


 黒糖からきび砂糖へと

 黒糖ひとつまみを舌に乗せます。濃いけれども、烈しさはありません。じんわりと沁みる力強い優しさです。明るく素朴なはっきりとした表情が見えたかと思ったら、瞬間、消えていきます。黒糖の去り際の良さには、一種呆然とさせられます。華やかだけれども、遠い昔が見えて、たおやかで、どこか静かな泣き笑いのような悲しい甘さです。
 黒糖から、上白糖に行く途中が、彼女、きび砂糖。黒糖の風味が残っていますが、さらさら、すっきりしています。お料理にもお菓子にも合います。
 しかし、どうしても、「いいのか、それで君はいいのか」と問いたくなります。
 以前のような、深く沈み込んでいくような甘さはありません。黒糖よりも洗練されていて、馴染みやすい甘さです。これが、問わせる原因です。何かが、彼女に起こったような気がしてなりません。見えないところで何かをしている、誰かと付き合っているような感じです。「何かを知ってしまった」雰囲気です。
「お、おい! なんだ、その化粧は、その服はどうしたんだ!」
「別に、なんでもない」
「なんでもない訳ないだろ! 昔は……」
「いいから、ほっといて」
 ドアが、ばたん、と閉じる。
 というような、変化です。誰かに、何かに影響を受けてしまっています。悪い人にはだまされてほしくない、という気が働きます。
 不安を覚えつつ、鍋に、黒糖、きび砂糖、水をまとめて入れて、煮ます。焦がさないように、木べらで混ぜていると、黒糖が香り、きび砂糖がかたまり、丸まり、とろん、とした熱気が辺りをおおいます。


 こちらはすぐに煮えます

 こういうことだったのか。たぶん、水、みたいに無害そうな者が、何もかもを受け入れさせてしまう要注意の存在なのです。
 しばらくすると、どろどろの黒蜜っぽいものになりましたが、蜜と言うには粘りけがありすぎましたので、もう少し水を足します。どんどん、要注意存在を介入させます。こうして、深みにはまっていくのでしょう。
 蜜らしくなったら、目の細かい茶こしで漉して、できあがりです。


 黒い!

 もう、黒糖もきび砂糖もありません。黒蜜です。全てを知ってしまった黒蜜です。だからこそ、あんみつや白玉をあんなに美味しくできたのでしょう。
 いくら清楚に見えても、綺麗なもの、美味しいものには、裏が居ます。


 (3)につづきます

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クリスマスケーキの予約を逃した方のために、デコレーションういろのご案内(1)

 今年も、走って閉店間際の店舗に駆け込み誰かのために椅子を購入しそれを抱えて電車に乗り込みたい時期になりました。
 街の夜の下、灯りと人々がきらきらしています。ダウンコートのポッケに片手を入れて、マフラーをくるくるに巻いて、肩幅を狭めて背を丸くしていると、血流が悪くなって、肩こりしてきますが、街のたくさんのきらきらを見遣ると、寒い緊張も少し解けて、肩のこりもいくらか和らぎます。クリスマス前の楽しみ方は、そのようなちょっとずつの合わせ技でいいのではないでしょうか。


 イルミネーション点灯はケーキのお知らせです

 当日は、大きなケーキを囲んだり、大きなケーキに囲まれたりして、イチゴと生クリームを飛び交わせ、メリー、メリーと派手やかで楽しいたらふくのひとときを過ごせばいいのではないでしょうか。甘みは、肩のこりも胸のこわばりも解きほぐしてくれます。
 そうそう、だから、ケーキ、大きいのを予約しなくてはいけません。百貨店で。
「無い……」
 ありません。うかうかしていました。クリスマス以外の何やかやが年末にとんとん拍子に私を責め立ててくれましたので、ケーキを見に行く余裕がありませんでした。気がついたときには十二月。
 百貨店は、早いところでは、十月から予約が開始されます。まだカボチャの熱気立ちこめる時に、イチゴとクリームはウォームアップをしていたのです。よって、うかうかして十二月にそろそろケーキなどと言うのは、百貨店のケーキさん達からしたら、ちゃんちゃらおかしい、のです。
 それでも、まだ……、と淡い期待を抱きつつ、百貨店巡りをいたしました。


 ジェイアール名古屋タカシマヤさん

 こちらは、十二月の初めにうかがいましたが、カタログさえも無かったようです。「おせち承り中」があちらこちらに。


 三越栄店さん

 こちらも、カタログは早くも無くなっていました。


 名鉄百貨店本店さん

 こちらは、カタログはありましたが、いくつかのお店のケーキは完売です。


 松坂屋名古屋店さん

 こちらも同じく、完売マークがずらずらと。


 丸栄さん

 こちらは、まだ余裕がありました。しかし、今日が予約締め切り日です。品切れになったであろうと思います。

 つまりは、もう、手遅れです。改めて、手遅れを思い知らされて、とぼとぼと百貨店地下名店街をあてどもなく彷徨しました。ショーケースの中には白と朱のカットのショートケーキ。手を伸ばせば届くところにショートケーキ。しかしながら、クリスマスイブには(23日も25日もです)、大きなホールのあなたたちには触れることができない。実に寂しく、悲しいです。(附記:プチガトー、ピースのケーキも当日夜はかなりの行列ができるはずです)
 鬱々ととぼとぼと、さらに名店街を廻ると、和菓子コーナーに行き着きました。こちらもクリスマス版になっていますが、洋菓子コーナーほどの張り詰めた感じはありません。店員さんから、どこかしら、ゆったりした感じの「いかがですか?」のお声が掛かりました。
 ショーケースを見ます。あんこなどが居ます。もっちりしたのがあります。生クリームはありません。
 今年、私は、例年よりも和菓子をたくさんいただきました。お正月、初詣帰りにたまたま立ち寄った和菓子屋さんで煉りきりを購入し、そのたたずまいにすっかり惹かれました。
 あのとき、大福を。あのとき、ちまきを。あのとき、若鮎を。あのとき、水ようかんを。あのとき、くりきんとんを。今年の和菓子が走馬燈のように駆け抜けていきます。
 そうだ、これだけ、和菓子に心癒されたのだから、和菓子に感謝の念を捧げるべきだ。
 頭の中の走馬燈の明るさが増しました。
 なにも、洋菓子ケーキに拘泥することはない。和菓子でもクリスマスをお祝いできる。クロース翁も「おー、フィンランドにはないケークですネ」と仰ってくれるに違いない。
 和菓子を尊重しつつ、派手やかに、楽しく、デコレーションケーキを作ってみようではありませんか、と己に言い聞かせて、素材集めの気持ちに勢いよく切り替えました。


 洋菓子デコレーションケーキへの想いはありますが……

 ケーキですと、スポンジを作るのが結構厄介です。今は、出来合いのスポンジも販売されています。同じ要領で、和菓子版を調達です。あとは、デコレーションのいろいろを。
 困ったときは、こちら。


 ハンズさんの頼もしさにはいつも甘えてしまいます

 東急ハンズさんには、製菓材料もかなりの数が揃っています。あれに、これに、それ、とかごに入れていきます。
 うーん、それでも、足りないものが出てきますね。それならば、こちら。


 成城石井さんにも甘えてしまいます

 成城石井さんならば、食材はさらに豊富。あ、あった、あった。これで八割くらい揃いました。あとは、再び百貨店地下に潜り、生鮮品を買い足します。
 あとで分かりましたが、近くのスーパーではこの八割が揃いました。思いつきで行動すると、このようなことが多々起こります。下調べが大切です。ですが、私の八割が思いつきですので、食材集めはこれで良いのだと思います。
 残りは、その近所のスーパーで集めたり、家にあるものを使うことにします。


 これで、デコレーション……、してみます

 思い切り和風です。これならば、和風デコレーションケーキになりそうです。
 さて、行き当たりばったりお菓子作りを始めましょう。


 (2)へつづきます

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2006.12.21

ソフトクリームてんこ盛りにおけるコーンフレークの有効性

 甘いものが好きで好きでしょうがない人々は、甘いものをたくさんたくさん食べたいという欲求に突き動かされることがあると思います。もちろん、私もその衝動に突き動かされることが間々あります。
 そのような時に私が利用いたしますのが、甘いもの関係のバイキングでございます。このバイキングは呼び名は、

 ケーキバイキング
 デザートバイキング
 デザートビュッフェ
 ドルチェバイキング
 ランチバイキング(デザート食べ放題)
 ビュッフェレストラン(デザート食べ放題)
 等々

のように多岐に渉っておりますが、要は「好きなものを食べられるだけ食べてもいいですよ」というシステムで、甘いものが用意されているという場所のことです。
 「好きなだけ食べてもいいですよ」とはなっていますが、「いつまで食べてもいいですよ」となっているところは、皆無と言って良いでしょう。ほとんどのバイキングで時間制限が設けられています。90分が一番多いようで、あとは60分、90分といったところでしょうか。私が好きなケーキバイキングを実施しているあるお店では、最長180分というところがありますが、人間、いくら好きなものでも、そんなに長い間食べ続けることはできません。経験則でいきますと、おおよそ70分あたりで「ふぃ~、美味しかったな~。食べた、食べた。よく食べた」とたらふく感を味わうことになります。

 「甘いものバイキング」で気をつけなければならないのは、時間制限があるからと思って、最初から飛ばしてしまうと、後々、苦しい目を見る羽目に陥りやすいということです。あれやこれやとお皿にてんこ盛り盛りに甘いものを盛り付けて、「いただきますー」と行きますと、二皿目の終わりくらい、2,30分くらいのところで「あれっ? ちょっと苦しいかも…」となり、折角、バイキングなのに、あまり食べることができずに、お店をすごすごと退散することになりかねないのです。

 ここで、私が好きなタイプの「甘いものバイキング店」について述べさせていただきたく思います。

 私はソフトクリーム(アイスクリーム)が好きです。

 夏はもちろんのこと、冬でももりもりいただきます。
 最近流行の、パスタ類やごはん類、サラダなども置いているデザートバイキング店、「メインはたくさんのお惣菜ですが、甘いものもいくらか取り揃えていますよ」というビュッフェレストランでは、自分でソフトクリームを作ってくださいね、とソフトクリームサーバーを設置しているお店があります。
 そこでは、お皿をソフトクリーム排出口に差し出して、機械のレバーを引くと、「うんにゃら、うんにゃら」とソフトクリームが次々と製造されていくのです。

 これが、実に楽しいのです。

 私が初めにこの機械に遭遇したときは、レバーの引き具合が分からずに、異常に早いスピードでソフトクリームが飛び出してきて、驚愕すると同時に慌てまくったのを覚えています。あの機械は、思ったよりもソフトクリームの「出」が良いので、少ーしだけレバーを引くのが、上手く渦巻状にソフトクリームを盛るコツと言えるでしょう。

 先に申しましたように、私はソフトクリームが好きなので、この機械が設置されているバイキング店では、何杯もソフトクリームのお代わりをしたいのです。
 しかし、このシステムにも陥穽があります。冬場はもちろんのこと、夏場でも、2杯ほどソフトクリームを多めに盛っていただきますと、体が冷えるのと、ただ「なめらかさ」が続く食感の単調さにヤられてしまうのです。おいしい、お腹もそれほどたまっていない、時間もある、それなのに大好きなソフトクリームを堪能できないというジレンマに陥るのです。

 そこで、活躍してもらうのが「コーンフレーク」なのです。

 コーンフレークを少々、ソフトクリームに添えるだけで、「えっ、こんなにソフトクリームを食べることができるの!?」と驚くくらいに、「ソフトクリーム食(しょく)」が進むのです。
 まず、ソフトクリームにコーンフレークを加えることで、「するりとろり」としたソフトクリームの食感に「ジャクザック」とした、大きな変化を与えることができます。これだけで2杯分、食が進みます。
 さらに、ソフトクリームの冷たさによって麻痺した舌を休めることができます。これが無ければ、何を食べているのか分からない、「ぬめぬめした何か」が咽喉を通り過ぎているという感覚しかなくなるのです。
 このように、素晴らしい力を見せてくれるコーンフレーク。ここで、コーンフレークの「盛り」に注目してみようと思います。
 多くの場合、ソフトクリームサーバーの近辺にコーンフレークが詰め込まれたビンにスプーンが添えられて置かれています。さて、どのタイミングでこのコーンフレークにアプローチすればいいのでしょうか。
 まずは、最初にお皿にコーンフレークを入れ、その上にソフトクリームを練り落とす「ボトム型」というのがあります。

コーンフレーク・ボトム型
 ボトム型は美しいです

 ソフトクリーム屋さんで売られている時も、この「ボトム型」が一般的でしょう。この利点は、「盛り」の美しさにあるでしょう。お皿に平らにコーンフレークを敷き詰めると、その上には綺麗にソフトクリームの渦を作ることができます。さらにその上に、チョコレートソースなどを流し掛けると、普通にお店で売っているソフトクリームそのものになるではありませんか。
 さらに、食する時にも、この盛りはいい効果をもたらします。まずはソフトクリームをスプーンで一掬い。口に甘味を感じ、軽い冷気を感じたところで、もう一度、スプーンを差し込みますと、

 「ジャクッ」

と、コーンフレークの層に到達します。ソフトクリームの下に敷かれたコーンフレークですので、アイスクリームをまとった状態になっているはずです。コーンフレーク自体には、あまり強い味はありません。コーンフレークにソフトクリームが衣をまとったことで力が発揮されるのです。甘くて滑らかなソフトクリームに硬質のコーンフレークとの兼ね合い。「ザクザク」した食感にミルキーな味わいが加わると、向かうところ敵無しの甘味となるのです。
 順次、ソフトクリームとコーンフレークを食べ進みますと、最後には、お皿の底に、溶けきったソフトクリームとその湖に沈んだ幾許かのコーンフレークが残ります。このコーンフレークが、食べはじめの時のコーンフレークとは、また違った味わいを持っています。ソフトクリームの甘味をしっとりと沁みこませたコーンフレークは、「くんなり」となり、最初の頃の頑なな姿勢を崩し、平和な融和状態とも言える甘味菓子となっています。コーンフレーク一つが二つの味わいをもたらしてくれるのです。なんと贅沢なことでしょう。

 「ボトム型」では、どうしてもソフトクリームからいただかねばなりません。コーンフレークの硬さをお好みの方には、「サイド型」をご提案いたします。

コーンフレーク・サイド型
 サイド型は、コーンフレークがお好きな方向け

 「サイド型」では、最初にソフトクリームだけをお皿の中心を外して、やや少なめに盛り、その横にコーンフレークをもたせ掛けるというものです。これで、完全に「ザクザク」のコーンフレークを味わいつつ、間にソフトクリームの滑らかさを挟むという食べ方ができます。もちろん、ソフトクリームの滑らかさの間に、コーンフレークの「ザクザク」を挟むという食べ方でも構いません。ほとんど同じことです。

 サイド型に似た「盛り」に「トップ型」というのがあります。お皿にソフトクリームを盛りきった後に、上からぱらぱらとコーンフレークを振り掛けるという方法です。しかし、これはあまりおすすめできません。余程、慎重にコーンフレークを振り掛けなければ、お皿からコーンフレークをぱらりぱらりとこぼしてしまい、見た目が美しくないだけではなく、他のお客さんや店員さんにご迷惑をお掛けしてしまうということにもなりかねません。そのため、こぼさないように、そーっとコーンフレークを振り掛けることになるのですが、それでは舌休めにもならないほどの少量のコーンフレークしか振り掛けることができません。それでは、コーンフレークの持ち味が発揮されません。「トップ型」を実行する際は、お皿の大きさに余裕がある時に限るというのが良いと思われます。

 以上、いくつかソフトクリームとコーンフレークの組み合わせについて申し上げました。コーンフレークによってソフトクリーム食は確実に進みます。しかし、おなかの容量が増えるわけではありません。「とろりざくざく」と、テンポ良く食べ進むうちに、おなかに負担がかかるほどの量のソフトクリームを食べてしまう惧れがあります。私も、何度か失敗して、体に負担をかけたことがあります。
 たくさん食べつつも、今、自分がどれだけの量のソフトクリームを食べてしまっているのか?と、ご自身の体と相談をしながらお召し上がりくださいませ。


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2005.05.22

だんごであり、ほうちょうであり、やせうま。

 最近、デイリーポータルZできな粉がらみのコネタが続けて採用されています。藤田チエさんもそれを受けて、きな粉ごはんの魅力を熱烈にアピールされました。甘いもの好きの私は近いうちに試してみるつもりです。
 それで、チエさんの記事に、

 「きな粉ごはんに抵抗は全く無い。子供の頃はきしめんがさらに大きくなったような麺にきな粉をかけて食べていた」

という旨のコメントを書き込んだところ、

 「ところできしめんみたいな麺にきなこまぶしたものってどこで食べられるのですか?」

と、お返事をいただきました。

 そこで、今回は九州の一部の者にしかなじみがないであろう、この謎の麺をご紹介いたしましょう。

 この麺の正式名称は「だんご」もしくは「ほうちょう」もしくは「やせうま」といいます。正式名称が三つもあるところからして、県民性がでています(どういう県民性かは詳述しません)。
 「だんご」と呼ばれますが、丸くは無く、麺です。
 「ほうちょう」とも呼ばれますが、物を切ることはできず、麺です。
 「やせうま」とも呼ばれますが、痩せた馬ではなく、麺です。

 実際どのようなものかはこちらを御覧下さい。麺ですね。おばあさんがすごい人数で麺を作っている様がすごいですね。

 長いのに何故か「だんご」と言います。丸いものもだんごと呼んでいます。紛らわしいです。「ほうちょう」は「包丁」ではなく「鮑腸」。あわびの腸のような形状をしているから名づけられたということですが、あわびの腸なぞ見たことはないので、それが正しいのかどうかはわかりません。
 「だんご」も「ほうちょう」も麺の事を指しますが、「やせうま」だけは麺の事も料理名も指します。麺にきな粉を絡ませたものを「やせうま」と呼びますが、「だんご」や「ほうちょう」とは呼びません。これにはこんなエピソードがあります。

 昔、あるお城に若様がいました。
 その若様には「八瀬(やせ)」さんというお世話係の女性がいました。
 若様がお腹を空かせると、八瀬さんは手作りの麺にきな粉を絡ませたお菓子を作ってあげていました。
 若様はそのお菓子がお気に入りで、お腹が空くと「やせ、うま」と美味しいあのお菓子をせがみました。

 …ほんとかいな。とにかく、これが一番良く知られている「やせうま」の由来です。

 私の地元では「やせうま」はスーパーなどに売っていました。ゆでうどんがビニールパックに入って売っていることがよくありますよね。あの形式で売っていたのです。なので、食べたくなったらその「やせうま」の麺を買ってきて、温めなおすだけ。あとはきな粉をかけて出来上がり。お店で食べたことはないです。出している店もあるのかもしれませんが、見かけたこと無いです。上に書いたように、わざわざお店で買わなくても食べられましたし。

 なので、私の出身地にまで行って、スーパーで買わないと食べられないかも。と、思っていたら、通販で取り扱っていました。これ

 でも、通販まで利用しなくても、作ろうと思えば作れます。時間はかかりますが手順は簡単です。材料も身近にあるものだけです。

 作りました。

 材料
 ・薄力粉 100g
 ・塩 小さじ1/3
 ・水 60cc

 ・きな粉と砂糖 好きなだけ

やせうま材料
 これだけ

 1.薄力粉に塩を入れ、徐々に水を足しながらこねます。

こねる

 2.粉がまとまって、みみたぶくらいの固さになったら、ふきんを掛けて30分ほど寝かせます。

小麦粉玉
 みみたぶくらいという言葉はこんなときにしか使わないな

 3.生地を一つまみずつちぎって、直径1cmくらいの棒状にします。

ちぎろうとしている
 わー、伸びるー。

丸めてみた
 なんだか…、ちょっと…な形

 4.指で平らな麺状に伸ばしていきます。このとき引っ張って伸ばすよりも、生地を指でつぶすように伸ばしたほうがうまくいきます。

潰しつつ伸ばす
 指で伸ばしていくのが他の麺とは違うところか

伸ばし終わった
 ひも麺状に

 5.平らに伸びた麺を、4,5分茹でます。

きな粉を作る
 空いた時間にきな粉をつくる

 6.ざるにとってお湯を切ります。

茹で上がり
 つやつやの麺

 7.きな粉をまぶして、全体に絡ませます。

山盛り
 やっぱりきな粉は山盛り

 8.食べ始めます。

きな粉が光る
 いただきます

 久しぶりに食べたっ! 懐かしい味だわ。派手な美味しさは無いが、しみじみくる素朴な甘さ。たまにはいいわね。

 きな粉が余った。

余りきな粉

 そのまま食べた。

ほんとのごちそうさま
 口の中がもそもそする

 「だんご」の食べ方は「やせうま」だけではなく、豚汁のような野菜がいっぱい入ったお味噌汁にいれたりします。これは「だんご汁」と呼びます。こっちは何のひねりも無い呼称です。


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