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2012.02.13

今日の「山」登りは「きしめん風チョコスパ」

「平日は遅くまで時間がとれないし、お休みの日はお休みの日で片付けなければならない用事があった。最後の土日も過ぎ去った。今日も終わってしまう……。いや、当日がある。ああ、18時閉場。なお、言うまでもなく百貨店ごとの限定商品はとうに売り切れている。……万事休す!」
 という御仁はいらっしゃいますか?
 お住みの地域が名古屋、もしくはその近郊でしたら、そのように慌てふためくことはないと思います。名古屋は日本屈指の大都市。なんでもあります。九州で田畑に囲まれた土地に出生し成長した私からすると、どのようなチョコレートでもあるような気がします。
「いや、名古屋の人を和三盆糖のように甘く見てはいけない。様々な美味が集まる大都会名古屋。そこで暮らす人々は様々な美味を渡り歩いている。姿形の妙なるもの、世界中を酔わせるうまみ。それらを常に追求している。皆、先陣を切ることでそれらの体験を具現化させるている。したがって、初っ端、後れを取った時点で、己のこの熱き鼓動を伝達することは叶わないのである。インパクトを与えることはできないのである」
 インパクトをお求めですか。それならば、山に登ってください。あります、チョコが。インパクトのあるチョコが。まだ間に合います。

きしめん風チョコスパ
 チョコパフェをかなり名古屋寄りに発展させています

 チョコレート界に新しい分野が生まれました。名古屋でしか生まれないであろう分野です。地元愛を表明することができます。
 マウンテンでは、太麺のスパゲティに様々な味(主に甘い)を練り込んできました。その甘口スパがマウンテンの主力商品です。マウンテンに登った方の多くが甘口スパにアタックしています。それにより、
「甘いスパゲティって、あれでしょ、名古屋の、……マウンテン」
 と人口に膾炙するまでになりました。常連組も今では、
「とりあえず、小倉スパ。それに小倉トースト、抹茶フロート、あとライスダブル」
 と注文しているようです。
 でも、さすがにこの茶色平打ち麺を目にすると、今度は何を仕掛けてきたのか!? と思うこと必至です。
 昨年の前半からきしめん風チョコスパの存在は、登山者には口伝で知られていました。私もその一人です。あるのは知っていました。でも、とっておきました。この時期に。そして、注文をしました。他のお品よりもやや長い調理時間を経てやって来たものを見て、笑いを禁じ得ませんでした。なんじゃこりゃ。
 もうもうと立ちこめるチョコレートの匂い。もわあっと体表を包み込む強い甘さ。まだ口にしていないのにたらふくです。チョコレート風呂にでも入っているのでは無かろうか、というチョコレートまみれの気分。
 麺は幅7mm、厚さ2mm。「きしめん風」となっていますが洋麺ではありません。「きしめん」です。固めのゆで加減で、きっちきちとした食感で歯に強い抵抗感。麺に負けるか、と強く噛みしめるたびに、甘い甘いミルクチョコレートの風味が乗算で強まります。
 もちろん、熱々のスパ……、いや、きしめんですので、刻一刻と生クリームは溶けていきます。生クリームとチョコきしめんが混じり合えば、生チョコになるはず……、なのですが。

きしめん風チョコスパ・横
 生クリームとチョコレート味なので、これも生チョコです

 麺そのものにチョコレート味がしっかりと練り込まれている上に、丁重にココアパウダーまで降っています。きしめんが濃いブラウンの山肌、生クリームが山頂の万年雪、缶詰チェリーが登頂旗だとしたら、このココアパウダーは何になるのでしょうか。登山者の、何か、なのでしょうか。
 麓に置かれた金色の栗は、甘露煮、なので、甘い、はず、なのですが、他の甘さでいつもの甘さを発揮できていないようです。いや、栗の甘露煮なので甘いのです。それを上回る甘みが続々と押し寄せているのです。その中で、栗の甘露煮と分かるほどの甘みを表出させていることは健闘していると思って良いでしょう。

きしめん風チョコスパ・アップ
 栗が添えられるとお得感が増します。嬉しい……

 きしめん風チョコスパは、マウンテンの甘口スパの中では、食べやすい方に居ると思います。「甘めのホットココア+モンブラン」のような感じです。ただ、そこに、きしめんの背筋の伸びた食感が加わっているだけです。
 デザートとして見たときには、とても食べやすく、調和が取れていると感じられました。
 まずは、インパクト。それから、甘い性格。デザートしての完成度の高さ。
 これをご馳走してくれた人のことは忘れられないはずです。
 ただし、何を忘れられなくなるかは、人に依るでしょう。一か八か、です。
 きしめん風チョコスパは、平日限定です。明日は平日です。

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2012.02.12

芯の強さが思い出させる(生チョコ:シェ・シバタ)

 心に残るもの、には、忘れられないものと、思い出すものがあるようです。
 相も変わらず、試食をして、美味しいな、と思って、小箱を一つ購入して、帰る途中で我慢できずに箱を開け、一つ口に入れ、美味しいな、と思って、二つめを口に入れ、を繰り返すと、小箱なので、あっという間に無くなりました。
「ああ、美味しかったなあ、たらふくたらふく」
 と思って、途中だった帰り道を継続させました。このあとはあれに寄らないと、明日はあれをしないと、この前のあれをするのを忘れていたな、冷蔵庫のあれはまだ大丈夫のはず、などの多種多様の雑多な日常のあれが頭に浮かんでは消えていきました。
 その継続中に、猛々しいまでに思い出されたのです。先ほど空けてしまったチョコレートの味。
「わあ、美味しかった! あれは、美味しかった! もう無い! 美味しかった。食べたい! どうしよう!」
 この思い出し力は、帰り道を行き道に変化させるほどの力を持っていました。あれに寄らないと、を放擲して、きびすを返しました。

シェ・シバタ 生チョコ 外箱
 ピンク+型押し+銀のリボン

 そして、二箱目のこれです。
 生チョコレートは、彼らの柔らかさそのもののように、最近は人々の中にとけ込んでいます。シェ・シバタさんのこれも生チョコです。商品名は「生チョコ」。なんと飾り気の無い、と思われるかもしれません。しかし、奇をてらわない真摯さ、と思うこともできるのではないでしょうか。
 真摯さは強いです。
 その強さは、ひとたびは心の片隅に退いて、姿をひそめていても、失せてしまうことはありません。
 3cm四方を取り上げると、生チョコです。くちびるに近づけます。その1cm手前。軽く開けた口から鼻へと、鼻からのどへと、香りが動きます。甘みと苦みがすっきりとしなやかに通っていきます。

シェ・シバタ 生チョコ 3個入
 ココアパウダーが柚子味で粉砂糖がアールグレイ味です

 歯触りは、ねっとりと絡みつくよう。先だっての香りにしては重い、と感じながら、もくもくと溶かしていると、絡んだ食感は潔くほどけます。
 歯から舌へ。ぽってりとした重さ。生クリームの重さ。重さは口から胸へと下りていきます。甘みもあります。しっかりしたカカオの香り。そこに柚子のわずかな酸味とクセが徐々に強まっていきます。
 甘み、苦み、酸味、柑橘のクセ。これらは芯の太い風味です。でも、次の一個へ移るまでの短い時間のうちに、快く去っていきます。
 アールグレイ味の方が、いくらか甘みが強く感じられました。同じく、歯にねっとりと絡みつき、舌に移り、とろける。その頃に来る味は、華やか、絢爛。瑞な風が口を満たします。
 甘さと茶葉の香りが渾然となります。ミルクティーに似ているようで、それには如かず。温和に、鮮やかに後から後からアールグレイが連なってきます。でも、それも、形が無くなり、少しの間までです。にこやかに涼やかに風合いは去っていきます。
 自らの重みをさしでがましくなく感じさせ、頃合いを逃さず、密度を一気に低くし消えていきます。

シェ・シバタ 生チョコ 柚子&アールグレイ
 自然な形の内にある強さと潔さ

 重くて、消える。これが、この生チョコの持ち味です。
 そして、しばらく、また、しばらくと、時間を置いたときに、彼の力が発揮されます。
 拡散した風味が一気に集まります。ぎゅっ、と密度が高くなり、そこにあるかのような重さがよみがえります。
 そうなると、居ても立ってもいられません。「思い出す」のです。一度、心に浮かび上がると、抑えられないほどの衝動の強さです。
 それで、もう一箱、となりました。今また、思い出しています。居ても立ってもいられない思いで、書いています。
 この生チョコに籠められたであろう念の強さと、味わいを思い返しますと、陶然となり、目が潤みそうです。
 これだけ「強い」チョコレートですが、季節のお品としてはお手頃な価格です。ぜひ多くの方々に味わっていただきたいと思うのですが、残念ながら、岐阜県・多治見市か、名古屋市の店舗、もしくは、名古屋の催事会場でしか、入手できないということでした。
 忘れられない味。頭の中で現せるのですから、素晴らしいです。
 思い出す味。すぐに手に入れ、味わうことができない場合は……、罪作りな味です。


 ◎店舗・商品データ
 ・商品データ
  商品名:生チョコ(3個入)
  価格:\580

 ・店舗データ
  購入店
  店舗名:ジェイアール名古屋タカシマヤ 催事「アムール・デュ・ショコラ」
  住所:名古屋市中村区名駅1-1-4 10階
  営業時間:10:00-20:00
  定休日:期間中無休
  アクセス:JR名古屋駅直結
  公式サイト:http://www.jr-takashimaya.co.jp/
  ※「アムール・デュ・ショコラ」は2012年2月14日まで。最終日は18:30閉場

  主要販売店
  店舗名:chez Shibata Nagoya(シェ・シバタ 名古屋)
  住所:名古屋市千種区山門町2-54
  営業時間:10:00-20:00
  定休日:火曜日
  アクセス:名古屋市営地下鉄・覚王山駅1番出入口から、栄方向(西方向)へ約40m、「覚王山」交差点を右折し、日泰寺参道に沿って約120mの右手。
  公式サイト:http://www.chez-shibata.com/

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2012.02.10

航海の波に寄せらるる甘美(ラジョラス・ジントニック:カカオサンパカ)

 板チョコ、は、まず名前で損をしていると思うのです。
 歴史はあります。スーパーマーケットでおなじみの各社板チョコのページをご覧ください。「~年から変わらず」「~年以来」「~年に初めて」などのことばが躍っています。色々なチョコレート菓子がありますが、全ては板チョコから始まっているのです。
 始祖としての確固たる地位を築いている板チョコですが、その地位ゆえに容易に姿を変じることが叶いませんでした。初代校長の肖像のように、厳格さを保たねばなりませんでした。
 その間、初代のもとから様々な師弟が羽ばたきました。あるものは中に果実を抱き、玄き珠となりました。またあるものは大気をまとい、天弓を越えるほど軽くあろうとしました。そしてまたあるものは、その柔らかき資性をもって、姿態を変え、きのこやたけのこや船舶など、万物の形象を現そうとしています。
 その間、初代校長も装いを変えておりました。しかし、人々は、彼のものを見てことばを交わします。
「あれ、この板チョコ、外側のデザイン変わったよね?」
「そうかな? 前からこういうのじゃなかった? いつから変わったっけ?」
 あんまりです。でも、初代は度量が大きいので、気にしないふりをして、威厳を保ち続けます。
 板、というのも、あんまりです。師弟は「ボール」「バー」「フレーク」「チップ」「山」「里」など、その風体に合わせて、人々に親しんでもらえるようにと、二つ名をもらい受けています。
 板。
 抗いようが無い断定です。しかし、
「あなたは板ですか?」
「いかにも私は板であります」
 彼のものは、問われれば荘厳さをもってそう答えるはずです。その有り様を誇りとしているからです。
 登山者の背嚢の中には、今でも板チョコが入っているのでしょうか? 彼のものはただ実用的であろうとしました。
 手作りチョコレート。市井にカカオマスから作る方がどれほどいらっしゃるでしょうか。
「『贈られるならば? ガナッシュ、ジャンドゥーヤとか……、ボンボンも……、ジュレが入っているのも……。でも、板チョコが案外いいですね』というアンケート結果も!」
 もう、これ以上は止めておきます。これ以上、彼のものの威厳を傷つけるに及びません。

ラジョラス・ジントニック 外箱
 お洒落ですが、平たい

 これは、ラジョラス、です。長方形で平たいチョコレートです。
 カカオサンパカさんの、板チョコレートは、ラジョラス、という名前です。スペインでは、この称号を以て国王陛下に謁見しているのです。広き海洋を渡りし頃の威厳は、チョコレートに於いても健在です。

ラジョラス・ジントニック 外箱側面
 隠れたところに情熱的色味

 バルセロナの本店では、ラジョラスのホワイトチョコレート「ロサス・イ・フレサス」が一番人気とのこと。このシーズンの各地の催事でも、ロサス・イ・フレサスがやはり一番人気とお聞きしました。カカオサンパカさんは、出店されている催事会場ごとに品揃えを若干変えていても、ロサス・イ・フレサスは外すことなくお取り扱いされているようです。
 そのため、試食でロサス・イ・フレサスをいただけます。
 薄いピンクの中に、細かくローズピンクの粒子。桜絨毯の中に紅梅が散っているような趣き。地中海、バルセロナというよりも、春の和の雰囲気を湛えているように思われます。
 ひとかけら、手のひらで受け取り、味見をします。
 すると、和の雰囲気はどこへやら、一気に欧州の華やかな庭園へと誘われます。バラの花弁を口にしたらこのような味なのだろうな、という貴く聖らかな香りに充ちます。華華の女王と呼ぶに相応しい香り。気品と烈しさを併せ持ちながらも、押しつけられるような、圧迫感は覚えません。
 君臨するバラの香りから弾け出るイチゴのすっぱさは、爽やかに明るく。
 両者のきらびやかさを、ホワイトチョコレートが雄大に柔らかく甘く受け止めています。
 ほんのひとかけらでこれだけの印象を与えるのですから、一番人気もむべなるかな、です。
 今回の試食の前に、これは分かっていました。既に、試食したことがあったからです(今回、カカオサンパカさんは名古屋初出店です。以前は、別のところでいただきました)。試食ばかりなのを心より申し訳なく思っております。以前の試食で迷いました。迷った挙げ句に、購入を見送りました。後日、惜しいことをした、と思いました。今回、名古屋初出店の情報をかぎつけました。駆けつけました。試食しました。また、迷いました。
 他にも、魅力的なラジョラスが並んでいるのです。私が優柔かつ不断に迷っているのを見て取られた店員さんが、ご親切に試食分をお出ししてくださいました。本当に試食ばかりで申し訳なく思っております。

ラジョラス・ジントニック 内部包装
 航海の果てにカカオにたどり着いた先人に敬意を表している、のだと思います

 ラジョラスの「ジントニック」を選びました。
 こちらは、少々無骨な雰囲気です。海で灼けた人々が、陽気にお酒をあおっている姿が浮かびます。

ラジョラス・ジントニック 全体
 これ以上ないくらいの板っぷり

 ジントニックのベースはミルクチョコレートです。ただ、ビターチョコ、ダークチョコほどではないにしても、甘さはやや抑えめです。一片を口に放ると、最初に、仄かはありますが、きっ、とジンの熱い刺激が伝わります。最初に目が開かされるこの印象は、味は大きく違っていても、ロサス・イ・フレサスと通底するようです。
 ジンの熱気が収まってきて、やや角の取れた頃、奥歯でかみしめると、しゃりっ、という音とともに、またもや別の切れの良い刺激が現れます。レモンの酸味です。イチゴの明るさとは別の風合いを持った明るさ、やや羽目を外したような、痺れにも似た強い酸味です。思わずまぶたを閉じ、眉間を寄せてしまうすっぱさ。寸前の熱気を払い、ミルクチョコレートの甘さを高く飛び越えてきます。

ラジョラス・ジントニック カカオサンパカロゴ
 強い意志をうかがわせる刻印

 熱気、元気、これらが口中を圧倒するのも、つかの間。前の時を落ち着かせて、寡黙なミルクチョコレートがじっくりゆっくり甘みを広げて五臓六腑へと移っていきます。
 五臓六腑です。お酒をたしなんだときの定番の文言です。おなかの中で、再び、ジンとレモン、そして寡黙だったはずのミルクチョコレートまでが、「たらふくになるのはまだまだ早いよ」とばかりに、しばし騒ぎ出すのです。
 二度楽しめるとは、このこと。
「もう一杯」
 が、お酒の定番となっている方は、思わず、そして、すぐさま、ラジョラスをもう一片割ってしまうことでしょう。
 贈り物には……、ロサス・イ・フレサスを一枚、ジントニックをもう一枚。ジントニックが取り扱われていなければ、試食をされてお気に召したものを。

ラジョラス・ジントニック 細分化
 ぱきっ、と硬め

 はじめに、板チョコの威厳、などと書いてしまいましたが、板チョコは親しみやすさもずっと持ち続けてきました。憧れの存在から身近な存在へ。板、という形状により、どなたでも気軽に手に取ることができるようになっています。顔は厳しくても、穏やかで好好な心中が見て取れます。
 なので、カカオサンパカさんのラジョラスもお気軽に。……と申し上げることができれば良いのですが、スーパーマーケットの板チョコ諸氏とラジョラスとの間には、ややお値段に開きがあります。それゆえ、贈り物でラジョラスの「二枚渡し(複数枚渡し)」は、お味はもとより、形状の親しみやすさと意外性が加わり、喜んでいただけるような気がいたします。
 そのようにラジョラスにいっとき移り気しても、板チョコ諸氏の威厳は揺るぎはしません。歴史が物語っています。
 あと、私は、板チョコ諸氏もラジョラスも、ガナッシュも、ジャンドゥーヤも、ボンボンも、ジュレ入りも、その他も、好きです。


 ◎店舗・商品データ
 ・商品データ
  商品名:Rajoles Gin tonic(ラジョラス・ジントニック)
  価格:\1260

 ・店舗データ
  購入店
  店舗名:名鉄百貨店・本店 催事「サロン・デュ・ショコラ」
  住所:名古屋市中村区名駅1-2-1 7階
  営業時間:10:00-20:00
  定休日:無休
  アクセス:名古屋鉄道・名古屋本線名鉄名古屋駅直結
  公式サイト:http://www.e-meitetsu.com/mds/index.html
  ※サロン・デュ・ショコラは、2012年2月14日まで。最終日は18時閉場。

  国内主要販売店
  店舗名:CACAO SAMPAKA(カカオサンパカ・丸の内本店)
  住所:東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内ブリックスクエア 1階
  営業時間:11:00-21:00(月~土)、11:00-20:00(日祝)
  休業日:元日
  アクセス:東京駅丸の内中央口から、都道402号線を南へ約300mの右手。丸の内ブリックスクエア内。
  公式サイト:http://www.cacaosampaka.jp/

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2012.02.08

いつまでも新しく在り続ける(ノボラスキュ:黒船)

 百貨店に入り、宝飾品売り場を通り抜け、化粧品売り場を通り抜け、下向きのエスカレーターに運ばれ、地下一階に着いたとき、はた、と気がつきます。
「洋菓子売り場に行けばいいのか、和菓子売り場に行けばいいのか……?」
 目的のお菓子について思います。あれは日本語では無い、はず。いや、売っているお店は漢字だった、はず。はて? To 和菓子売り場, or To 洋菓子売り場, That is the question.
 カステラが欲しいのです。
 「カステラ」と聞くと、長崎。長崎というと、西洋異国情緒。よって、カステラは西洋異国菓子。……とはなりません。カステラは和菓子らしいのです。カステラが主力となっているお店の名前をいくつか思い浮かべてみてください。漢字ばかりのはずです。
 実際、和菓子屋さんには、「かすていら」という墨書が張り出されています。カステラは和菓子です。
 「ラ」です。「ラ」が問題の元なのです。ひらがなの「ら」でも同じです。「la」もしくは「ra」の響きは、和菓子向きではありません。本来、日本語(和語)の語頭にはラ行音は存在しません。カステラの「ラ」は語頭ではない。はい、仰るとおり語尾です。でも、「ラ」が付いていると、「洋」っぽくありませんか? 「かすて」と「かすてら」を声に出して比べてみてください。後者の「洋」っぽさを実感いただけると思います。
 和菓子屋さんで売られているけれども、洋風で、けれどもやっぱり和菓子。
 和菓子の一つとして定着していますが、いつまでも最初期の若やぎを持ち続けています。ハイカラ、ということばが、よく似合うお菓子です。ずっと「新しさ」を自然にまとっています。
 その、新しくハイカラなカステラが、さらに新しくなったらどのような姿になると思われますか。

ノボラスキュ・外箱
 白と黒の円筒の中がラスクとは思い難いです

 ラスクになります。
 黒船さんの「ノボラスキュ」のつづりは「NOVO RASQ」。「NOVO」はポルトガル語で「新しい」の意味とのことです。英語の「NEW」、フランス語の「NOUVEAU」、イタリア語の「NUOVO」と形が似ているので、元が同じなのだろうな、と想像します。おそらく、ラテン語からなのでしょう。経験上、このような場合、ラテン語、と言っておけば、60%くらいの確率で正解となるようです。60点は、優良可の可なので良しとします。
 パンをスライスして、かりっかりにオーブンで焼かれたラスクの食感は、人々を引きつけて已みません。たとえ食後に、テーブル、膝の上、衣服に、乾いたパン粉が散らばるという事態が待ち受けようとも、それはラスクへの手を引き留めるにはあまりに弱すぎる力です。
 ノボラスキュは、カステラをラスクにしてしまいました。さらには、ミルクチョコレートまで染みこませています。
 普通のラスク、フランスパンをオーブンカリカリ焼成後はその形と食感がおおよそ分かります。
 カステラをラスク? あのふわふわしっとりをカリカリ焼成? いいのですか、そのようなことをして。
 危惧しました。
 円筒形の箱のふたを、卒業証書入れと同じ要領で開けます。あの春の日、教室に響いたのと同じ音がします。
 がさがさと円筒をを振ると、Qの字が目立つシックなデザインのスティックが数本出てきました。

ノボラスキュ・個包装
 ラスクでした

 一本を取り出し、針金入りの封をくるくると解くと、甘さたっぷりのチョコレートの香りが、ふう、と鼻先をかすめます。
 長さ9cm、幅2cm、厚さ1.3cm。ごつごつだけど、きっちりと面を保っています。一般的なラスクは厚さ1cmほどの楕円形ですが、ノボラスキュはカステラ形状の縮小化という手段により、由来を保持しています。
 指にはチョコレートの重さが伝わります。しかし、全体は、その触感に相応しない軽さです。親指と人差し指ではさんだダークブラウンの一本は、円筒の箱や、個包装、本体のたたずまいに反して、親しみやすさを覚えます。ついつい、ふるふる、と振ってしまいます。チョコレートの粉が少し散りました。

ノボラスキュ・本体
 満遍なくしっかりチョコレートでコーティングされています。

 もてあそぶのはほどほどにして、がじっ、と。すると、こくっ、と折れます。
 途端、ミルクチョコレートのなめらかさと香ばしい風合いが伝わります。開封時と同じ、しっかりとした甘さが印象的です。
 こくっ、と折れた一片を、奥歯で、ごつり、と砕き、「なるほど、これがノボラスキュの歯ごたえなのか」と頷き、思い切りがりがりごつごつを楽しもう、と思った矢先に、さくさく、ほろほろと崩れていきました。最後にわずかな、とろり、と、しっとり。
 あまりの、展開の早さに呆然とします。今度はしっかりと展開を確かめようと心を強くしっかりと立て直し、残った一片を、ごつり、とかみ砕きます。
 表面は、カステラ生地がミルクチョコレートを吸って固まり、ごつり寄りのかりかり食感です。この抵抗感がある間に、まろやかに甘く、ちょっと苦く。それらが強く広がります。この後です。チョコレートの表面は、ころころと崩れゆき、中のカステラが姿を見せます。

ノボラスキュ・断面
 中は、細かい空気を含み、優しい色合い

 実に当たり前の、パンのラスクとカステラのラスクは、口当たりが大きく違うなあ、という嘆息。
 カステラのしっとりがさらに焼成されると、きめの細かいあの生地そのままが、さらさら、ほろほろ、となります。そのほどけ具合に、玉子とお砂糖のあのまろやかさ、甘さが加わっていて、懐かしくて嬉しくて。
 チョコレートと、ほろほろのカステラが、混じり、それぞれが丸みのある香りと甘みを残しつつ、ゆらゆらとたゆたい、とろけてゆきます。
 ラスクの姿を取りながら、「ラスキュ」として生まれたカステラは、まさに「NOVO」を伝える黒船そのものです。ラスクの軽やかさを持ってはいますが、玉子やお砂糖、カカオがふんだんに使われているようで、しっかりどっしりと一本でたらふくに近くなります。だけど、後を引き、あともう一つ、と取り出して、がりがりとしてしまうのは、やっぱりラスクです。
 円筒箱を小脇に抱えて、一人、もくもくといただく、のはやはり寂しいので(でも、この円筒箱はついつい小脇に抱えたくなる大きさです)、仲間内で一本ずつ配って、「美味しいね」と談笑とお茶をお供にどうぞ。

 ◎店舗・商品データ
 ・商品データ
  商品名:NOVO RASQ(ノボラスキュ)7本入
  価格:\1365

 ・店舗データ
  購入店
  店舗名:名古屋三越栄店 催事「スイーツコレクション2012」
  住所:名古屋市中区栄3-5-1 7階
  営業時間:10:00-20:00
  定休日:期間中無休
  アクセス:名古屋市営地下鉄・栄駅からサカエチカ直結。16番出入口すぐ。
  公式サイト:http://nagoya.mitsukoshi.co.jp/
  ※「スイーツコレクション2012」は、2012年2月14日まで。最終日は18時閉場。

  製造・販売元
  店舗名:黒船 自由が丘本店
  住所:東京都目黒区自由が丘1-24-11
  営業時間:10:00-19:00
  定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
  アクセス:東京急行電鉄・自由が丘駅・正面口から東急東横線に沿って北へ約250m。自由通りとの交差点を左折(西へ)して約30mの右手(北側)。
  公式サイト:http://www.quolofune.com/

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2012.02.07

幻の雪降る石畳(パヴェ・ド・ジュネーブ:ステットラー)

 九州で生まれ育った、と言うと、
「それなら、冬も暖かいんでしょ。いいなあ」
 とお答えをいただくことがあります。しかし、日本各地の例に漏れず、夏は暑く、冬は寒く設定されており、四季を堪能できるようになっております。
 でも、雪が何十センチメートルも積もることはありません。まして、家屋の一階が埋まるほどの積雪も、一寸先は真っ白というほどの吹雪にも見舞われることはありません。ただ、「寒いなあ、寒いなあ。灯油はまだ残ってる?」と背を丸め、コタツに両手を潜らせながら、今晩は水炊きでたらふくになりたいなあ、などと、のんびりぼんやり頭を働かせる程度の寒さです。
 そんな、位の低い寒さを甘受している人々の上に、雪を降らせたらどうなるでしょう。それはそれは大騒ぎ。粉雪にもなれないほどの、微塵の雪しか降ってきませんので、交通機関の乱れ、休校などとは縁の遠い、雪とのじゃれ合いです。
 窓外に白い舞いが見えると、狂喜乱舞、欣喜雀躍、コタツの上に乗っかったリモコンを取るのもおっくうだったのに、電熱器であぶっていたその手を素早く抜きだし、窓を開け、飛び出し、手のひらを天に向けます。雪の粒は、右に左に逸れて、なかなか手の上に落ちてくれません。それで、手を動かして、右に左に雪の粒を捕らえようとしますが、軽いそれらは、右に左にくるくるとすり抜け、やはり手の上には来てくれません。もどかしく思いながら、手のひらをひらひらとさせていると、ぽつり、と雨とは違う水気を感じます。慌ててその一点を見ると、白みの強い半透明の粒が、わずかな冷たさと、小さな痛みを与えます。
「あ、雪だ」
 と、頭が判別する頃には、それは水の半球に変わっています。最初に覚えた冷たさと痛みが弱く残り、それが小さな水の球の前世が雪であったことの物語です。
 緩やかな寒さの冬を過ごす人にとっては、雪はこのような有りや無しや、目には見えても触れることの適わない朧気な存在です。
 スイスという国名を耳にすると、一万尺のアルプスと清澄な雪原が思い浮かびます。しかし、スイスの方々からしたらこのように声をかけられるのと同じことでしょう。
「スイス? あっ、それなら夏は涼しいんでしょ。いいなあ」
 スイスの気候情報を見ると、山間部は雪がしっかり積もるくらいの平均気温で、地中海側の平地はしっかり汗っかきになるくらいの平均気温のようです。
 それが分かっても、スイスと雪のイメージを離すことは難しいです。しんしんと降る雪が街を覆っていく、ような気がします。その雪は、核に塵は無く、純水のみで構成されている、ような気がします。

パヴェ・ド・ジュネーブ 外箱
 小ぶりで大人しい雰囲気

 ステットラー社は、スイス・ジュネーブのチョコレート店です。ジュネーブはスイス南部の標高の低い都市らしいので、夏はそれなりに暑く、冬は冬だと分かるくらいに寒い、のだと思います。雪は降る、はずです。以降、降る、を前提として書いていきます。
 このパヴェ・ド・ジュネーブは、日本語訳すれば「ジュネーブの石畳」、もっと日本語訳すれば「寿府の石畳」です。その名の通り、きっちり四角に切り取られています。一辺20mmの立方体。親指と人差し指で20mmの幅を作ってみてください。大きさの確認はよろしいでしょうか。
 箱に行儀良く並んだパヴェの一つを取り上げます。指に、静かな冷たさと堅牢さが伝わります。

パヴェ・ド・ジュネーブ 6個入
 手作りらしいシンプルさ

 20mmは、判断に迷う大きさです。半分だけかじるのが良いのか、まるまる口に放り込むのが良いのか。一旦、上下の前歯で、かしり、と挟みます。くっ、と力を入れて噛もう、としましたが、それをするには、やや小さく思われ、歯の力を緩め、ふっ、と息を吸うように、一個、まるごとを口に入れます。
 舌の上に座るパヴェ。取り上げたときと変わらず、冷たさと堅さが続いています。少し変だな、と思いました。普通だったら、熱でとろけていきそうなものなのに、それがありません。少し経っても、やや熱を含むものの、元からの堅さを保ち続けています。とろけないので、チョコレートの香りも甘さもそれほど感じられません。
 おかしいな、このままでは埒があかないな、と思われ、再び前歯の方へと転がしました。かしっ、と挟んで、くっ、と力を入れます。すると、
「ぽくっ」
 と口に響きました。煉瓦が割れるように、パヴェが割れます。
 すると、甘みが来ます。チョコレートの香りが立ちます。ああ、やっぱり、チョコレートだったんだ、とここでようやく確信が持てます。
 その確信が頭に浮かんだ瞬息、溶けていきました。いや、溶ける、ということばが合っているようにも思えません。消える、とも違います。あえて言うならば、清流のように、流れ去っていきました。チョコレートそのものは、春の雪解け水のように、離れていきます。後に残るのは、堅い中に在った香りと甘み。割れたときの残響が香りとなって、口の中でいつまでも廻ります。これほどまでに印象深く残るのに、一切の重量がありません。最初の石畳の堅牢さが嘘のようです。

パヴェ・ド・ジュネーブ アップ
 生クリームが入っていません。それゆえの軽さ

 甘いことが分かります。カカオの香ばしさと微々たる苦みが分かります。それがしばらく続きます。在ったことが分かります。けれども、その味と香りを追うことが難しいのです。手を伸ばせば届きそうなのですが、あと少しのところで、捉えきれない、たどり着けないもどかしさです。
 もどかしさ、は、悪い意味に思われるかもしれません。それでもそう言いたくなります。つい今し方の風味が分かるのに、それはほんの一瞬の事で、味わう、という間もなく、さらり、と流れていき、それでも幻になりきれず、ここにある、という、不思議な感覚です。
 最小限に、残すべきものが残るように作られています。
 流れゆく水、でも、吹き去る風、でも、どちらでも構いません。そのようなことがあった、という静かで冷たい熱さを覚えるチョコレートです。
 パヴェ・ド・ジュネーブは、厳しくない冬を迎える地で、たまに降る小さな雪が、手のひらに微細な痛みを残して消えるように振る舞います。雪から変わる水滴のように、小さな立方体には、甘い影をいつまでも残してくれるような強さが封じ込められています。

ステットラー カード
 「チョコレートの情熱」ということばが具現化されています


 ◎店舗・商品データ
 ・商品データ
  商品名:Pavés de Genève(パヴェ・ド・ジュネーブ)6個入
  価格:\1785

 ・店舗データ
  購入店
  店舗名:名鉄百貨店・本店催事「サロン・デュ・ショコラ」
  住所:名古屋市中村区名駅1-2-1 7階
  営業時間:10:00-20:00
  定休日:期間中無休
  アクセス:名古屋鉄道・名古屋本線名鉄名古屋駅直結
  公式サイト:http://www.e-meitetsu.com/mds/index.html
  ※サロン・デュ・ショコラは、2012年2月14日まで。最終日は18時閉場。

  製造・販売元
  店舗名:Stettler(ステットラー)
  公式サイト:http://www.chocolaterie-stettler.ch/index.htm
  ※2012年2月現在、日本には、直営店・常設店はありません。

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