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2009.01.04

ふくふくきらきら麩まんじゅう(餡麩三喜羅:大口屋)

 熱田神宮に初詣に行きました。初詣かつ初熱田詣でです。
 甘く見ておりました。さすがは、三種の神器「草薙剣」を御神体とする大神宮。たいへんな人出でした。あたり一面の人波、人だかり。ゆるりゆるりと、丑年らしく牛歩の歩みで一時間半かけて本殿前にようようたどり着き、そこでも、人々に押し合いへし合いとなり、体がねじれ、傾きながら、二礼二拍一礼で、「あれも欲しいです。これも欲しいです。何もかも欲しいです、食べたいです」と百五円分の祈りを、たっぷりしました。
 その祈りを叶えるには、どのような行いを取ればよいのか神託を問うために、初詣の締めくくりとばかりに一生懸命に、ジャラジャラとおみくじ筒を振り、ひょろりと出たおみくじ棒に書かれた番号を巫女さんにお見せすると、薄く、細長いおみくじ紙を渡してくださいました。これで、「為せば成る、為さずとも成る何事も。万事よし。どんどん行け。All OK!!」と書かれているのを確認すれば、初詣ミッションは完了です。えびす顔でおみくじ紙に目を落としました。

 「末吉 私欲に囚われ、新規に急ぎ事を起こさんとすれば願望叶い難し。信心怠りなく静かに努めれば幸いあり。二兎追う者は一兎をも得ず」

 えびす顔は凍りつきました。つい先程、たっぷりと私欲に満ちた祈りに、いきなり駄目出しをされたのです。「こらっ!! いい気になるな。欲張るな。そんなん祈っても叶いはせん。大人しくすべし」というのです。他に書かれてあったこまごました運勢も、「まあ、だいたい駄目だね。真面目に暮らして、順風を気長に待ちなさい」ということのようです。
 おみくじのお言葉を胸にしっかり刻み付け、「甘いもの初め」に移ることにしました。いきなり食欲に走っているようですが、甘いものは別腹。よって、甘いものは「別神託」だと判断しましたので、いいのです。それに人は食べなければ生きていけないではありませんか。どうせ食べるならば甘くて美味しいものが良いではありませんか。そう判断しました。私欲では無いと判断しました。言い聞かせました。
 百貨店の地下に行くと、十日前とはすっかり様相が変わっています。赤・緑・白のクリスマスカラーはどこへやら。落ち着いたお正月色になっています。頭の中では『春の海』がつま弾かれています。
 クリスマスは、和菓子屋さんがどんなに頑張っていらっしゃっても、洋菓子に走ってしまいますが、お正月はなんと言っても「和」です。そして、和菓子屋さんも我が意を得たりとばかりに活気に満ちています。
 お正月向きの和菓子もいろいろと取り揃っています。縁起の良い絵柄の華やかな羊羹などがありましたが、今回、目に付いたのは、白いシンプルなお饅頭です。

餡麩三喜羅・外箱
 今年の甘いもの初め

 お饅頭はお饅頭でも、皮が生麩の麩まんじゅう「三喜羅」。見た目はシンプルですが、名前は縁起良く華やかです。「三つの喜び」に、「綺羅」が掛けてあるのです。

 生麩の主原料はたんぱく質のグルテンです。以前、私は生麩作りに挑戦したことがありました。強力粉で玉を作って、それをボウルの中でひたすら洗うのです。すると、炭水化物がだんだんと底に沈み、それに連れて、玉は粘り気が増していきます。続けること一時間。もっちりとしたグルテンが取り出せました。それを小さくちぎってお吸い物に入れました。味の無いかまぼこの出来そこないのような食べ物になっていました。ちっとも美味しくありません。後で分かったことですが、生麩はグルテンに適量の小麦粉と米粉を混ぜなければなりませんでした。中途半端な知識で痛い目に遭った経験の一つとして、頭に叩き込まれました。

 遠い記憶から、目の前の三喜羅に戻りましょう。白くつやつやした表面は、あのときの生麩もどきと軽くオーバーラップしましたが、そこはかとなく漂う風格が違っています。上品な、完全たる和菓子だとすぐに分かりました。

餡麩三喜羅
 饅頭というより白玉に近い雰囲気です

 ぷっくりとした白い体に、薄緑の葉をまとっている姿からは、清廉な印象を受けます。親指と人差し指、中指でつまむと、その力をそっと受け止める、ふくふくとした感触。わずか直径40mmであることを、少し憎らしく思いました。これを五十倍にして、体全体で飛び込んだらさぞかし気持ち良いだろうな、と思わせられる、優しいクッション性です。
 二度三度、指で弾力を楽しんでから、葉っぱをはがします。すると涼やかな香りで、目が、はっ、と覚めました。この葉は「サルトリイバラ」という植物の葉なのだそうです。以前は笹の葉を使用していたそうですが、三喜羅は全国で初めて麩菓子にサルトリイバラの葉を用いたとうことが説明書に書かれていました。このサルトリイバラは、実に香りが良いです。すっきり、身も心も洗われるような、清らかな香りです。

サルトリイバラ
 丸いサルトリイバラの葉。香りが強いですが、嫌味はありません

 ふっくらしっとりとした三喜羅を持ち上げて、まずは、半分だけいただきます。さっ、と、サルトリイバラの香りがかすめてから、こしあんが伝わってきます。皮より先に中の餡の味が伝わるのです。麩の間を抜けるようにして、するりとなめらかな甘みが現れます。そして、現れた時と同じように、すっ、と、淡い雪のように消えていきます。実に上品な甘さです。甘さの重みやクセが全くありません。儚く美しい甘さです。
 餡の甘みが薄れた頃に、麩の食感が強く出てきます。皮の食感は、指で感触を楽しんだ時とはやや趣きが異なりました。ふわふわと柔らかいのかと思っていたのですが、案外と、強い弾力があります。もちもちもちもちと噛み続けても、その弾力は長く残ります。餡が先に姿を消すので、後々までもっちりぷっくりとした食感を味わえます。

餡麩三喜羅・断面
 なめらかで流麗とした餡

 皮の厚さは約5mm。餡の分量が多いですし、薄い皮でも食べ応えがあるのですが、もたれるような印象はありません。サルトリイバラの香りがすっきりとしており、生麩の皮に甘みがほとんどなく、もっちりとした食感でも、キレが良くてさっくりとしているからでしょう。一個食べ終わったら、すぐに次の一個へと食が進みます。いくらでも食べられるので、たらふくになかなかなれないことが、嬉しくもあり、悔しくもあります。
 お皿に乗った二つの三喜羅をいただいて終わりにしよう、と思っていたのですが、気が付いたら、六個入りの箱が空になっていました。三喜羅×6で十八喜羅もいただいたことになりますが、物足りないです。しっかりとした甘みと味わいを持っているのに、いくらでもいただけます。甘味の理想形でしょう。

 お正月から良いものいただきました。ありがとうございました。…けど、もっと食べたい。止められない。私はコートをはおって、バッグを持って、二箱目の三喜羅を買いに出かけようとしました。しかし、はっ、と思い、取り止めました。おみくじのお言葉が思い出されたからです。

 「私欲に囚われるな」


◎店舗・商品データ
・商品データ
 商品名:餡麩三喜羅(あんぷさんきら) 6個入り
 価格:¥756

・店舗データ
 店舗名:大口屋 三越名古屋栄店
 住所:名古屋市中区栄3-5-1 三越名古屋栄店・地下1階
 営業時間:三越名古屋栄店に準じる。
 定休日:三越名古屋栄店に準じる。
 公式サイト:http://www.ooguchiya.co.jp/
 アクセス:名古屋市営地下鉄・栄駅から、サカエチカ5番・6番出入口直結。


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コメント

>みんたさん
生麩は美味しいですよね。好きゆえに、自作して失敗したのですが…。普通の乾燥したお麩も好きです。お味噌汁によく入れます。
岐阜・愛知は生麩のお菓子が多いようですね。他にもお店があるようでしたが、今回は美味しい、そして定番という評判の大口屋さんを選んでみました。
「山帰来」のことは同梱の説明書に書かれていました。多分、これが名前の一番の由来なのだと思います。三喜羅はサルトリイバラ無しでは成り立たないお菓子だろうな、と感じました。

大須は、それなりによく行っているので、物珍しくないなあ、と思いまして、熱田にしました。適度に人にもまれた方が初詣らしいですしね。「末吉」で今回の記事が書けたので、まあまあ良しでしょう。

投稿: 桜濱 | 2009.01.13 00:45

いいですね~、麩まんじゅう大好きです。京都や名古屋の駅弁では入っているものがあって、楽しみのひとつでした。
今回のこれは、珍しい葉でくるんであるのがいいですよね。サルトリイバラは山帰来、名前にはそれもかけてありそうです。乾燥した実などをクリスマス飾りにしているのは見ますが、なまの葉がいい香りとは知りませんでした。東海はすてきだなあ…

熱田さんはご祭神も由来もあんまり一般庶民むけとは言えないように思うので(明治神宮はもっと…)桜濱さんのお願いのため詣でるなら大須の観音様がよかったんじゃないかなあ、とお話をきいて以来考えてましたよ。おかげで楽しい記事を読ませていただけたのですけど。

投稿: みんた | 2009.01.12 12:29

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