想い出起こす「揚げパンドーナツ」
小中学校の頃、給食の献立表を見るだけで、気分が無性に高揚するメニューが、いくつかありました。「ムース」という名の牛乳プリンだったり、ひな祭りの時のちらし寿司だったり、カリカリでねっとりの甘いかぼちゃコロッケだったり(ちなみに、私はかぼちゃ嫌いだったのですが、このコロッケのお陰でかぼちゃが好きになりました)。
中でも目を輝かせたのは、「揚げパン」でした。普段は素っ気無いコッペパンが、油をくぐり、全身にたっぷりとお砂糖をまとったら、極上の菓子パンになるのです。手指が油やお砂糖で、「ザラッ、ベトッ」となるのも全く構わずに、大口を開けてかぶりつくと、じゅっ、と、油が染み出て、じゃらりとしたお砂糖が舌をたっぷりと甘くしてくれます。他のパンには、あの悦楽はありませんでした。頭一つ抜け出た実力の給食パンだといまだに思っています。
その懐かしい味が、この秋、ミスタードーナツに登場しました。その名もそのまま「揚げパンドーナツ」。この名前を最初に見たとき、「ん?」と思いました。小麦粉を練ったものを油にくぐらせるのが、ドーナツだと思っていました。しかし、この名前からは、「揚げパン」と「ドーナツ」に線引きが為されているのです。揚げパンはドーナツの一種だと思っていただけに、軽いショックを受けました。でも、ミスドさんの立場もよく分かります。単に「揚げパン」として出してしまっては、ドーナツ店としての面目が立たなくなります。「揚げパン」ではあるものの、あくまで「ドーナツ」という姿勢を崩すわけにはいかなかったのでしょう。その結果、「揚げパンドーナツ」という、提供者としての姿勢と、商品の実質を伴わせた名称になったのだと考えることにしました。
「揚げパンドーナツ」は、「カスタード&ホイップ」と「あずき&ホイップ」の二種類です。どちらも揚げパン本体が中途までカットされ、その間にそれぞれのフィリングが装填されています。このフィリングが給食の揚げパンとの違いを明らかにし、「ドーナツ」としての立場をはっきりさせているようです。
象が踏んでも壊れない筆箱っぽい四角さです
どちらもきっちりとした棒状になっていて、長さ140mm、幅40mm、高さ28mm、と、記憶にある揚げパンよりもやや小ぶりな印象です。外側は粒子の粗めのパウダーシュガー、さっくりと揚がった表面と、ふわりとした内側は、紛れもなく、揚げパンの要素です。
では、それぞれのフィリングを見ていきましょう。まず、「カスタード&ホイップ」は、とろりとしたカスタードクリームと、ホイップクリームが平行して詰められています。両方のクリーム量を比較すると、ややカスタードが少なめになっているようです。なので、さぞ、洋風の菓子パンになっているのかと思いきや、表面のお砂糖の甘みが強く、さらに生地のパワーに押されて、クリームの食感が分かりにくいように感じました。クリーム量が少なめのように見えます。価格との兼ね合いもあるでしょうが、フィリングのインパクトを強めにすれば、個性がはっきりしたのではないでしょうか。
ちょっとホイップが少ない?
「あずき&ホイップ」は、名古屋圏の方々には、見覚えのある姿です。「小倉ドッグ」の揚げパンバージョンです。名古屋圏外の方でも、ミスド版「あんドーナツ」と言えば、味の予想が付きやすいと思います。味わってみても、「ある、ある」という懐かしさを醸し出しています。
こっちはホイップが多い?
あんはつぶあんで、強めの甘みになっています。それでありながら、ふわりとしたホイップクリームの存在も消されておらず、上手い具合にバランスが取れています。パンとの比率も見事です。常々「ミスドにもあんドーナツがあればなぁ…」と思っていた私は、大満足です。
小学校を風邪などで休んだ日、級友が給食のパンを持ってきてくれる慣習がありました。今となっては、お休みした子の分の余った一つのパンは、育ち盛りの子どもたちの一人に食べてもらい、たらふくの午後を過ごしてくれれば良かったのかな、とも思いますが、当時の私には、友人が訪ねてくれること、パンをお見舞い代わりに持ってきてくれることは、嬉しいような、気恥ずかしいような、やっぱり嬉しいような、ほろ甘い気持ちにしてくれました。持ってきてくれたそのパンが揚げパンだったら、ほろ甘さから、「ほろ」が取れて、格が上がったようにも感じられました。
今でも、その慣わしは残っているのでしょうか。このような、学校、先生、友人とのささいなコミュニケーションが、柔らかな心を育ててくれて、後々まで、胸の奥に残る、なににも代えがたい、心地好い想い出になるような気がします。
◎商品データ
商品名:揚げパンドーナツ カスタード&ホイップ
価格:¥115
商品名:揚げパンドーナツ あずき&ホイップ
価格:¥115
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント