« しっとり軽く「ショコラシュー」 | トップページ | 今日の「山」登りは「ペスカドール」&「高菜ピラフ」&「キウイパフェ」 »

2008.09.21

軽やかに舞え水面に映ゆ雲雀(巨峰のタルト、オレンジのチーズタルト、シブスト・ポム:サロン・ド・テ アルエットゥ)

 「アルエットゥ」さんは、八事にお店を構えていらっしゃったのですが、昨年6月、ビルの老朽化により、惜しまれつつ、閉店となりました。
 正直に申しまして、八事にある間は、ノーマークでした。お店の名前も聞いたことがあるような無いような…、無いかなぁ、と、いうくらいのノーマークっぷりでした。ですから、ノーマークというよりも、知りませんでした。
 私はノーマークでしたが、名古屋の美味しいもの好きな方々は、しっかりとチェックが入っており、八事にお店を構えていらっしゃるときから、固定ファンをがっちりと掴んでいたらしく、池下に場所を変え、再オープンをした時は、ファンの皆様を歓喜に導いたということです。
 残念ながら、私はノーマークだったので、それらは全て、伝聞です。
 パン&スイーツ特集と銘打った、KELLY(名古屋のタウン誌)をぱらぱらとめくっていると、見開き2ページで、アルエットゥさんが紹介されていました。私は、「新しいお店が池下にできたんだ。ここは美味しそうな雰囲気が誌面から思い切り発散されている!」と思いました。新しいものに弱い私は、もう、心は鋭角25°くらいに傾きました。
 しかし、よくよく考えてみると、八事時代は存在を知らず、移転オープンは昨年の12月、読んでいるKELLYは3月発売の4月号。ちっとも新しくありません。私が勝手に「新しい!」と盛り上がっているだけです。
 そんな勝手な盛り上がり方であっても、新しいお店に向かうのは楽しいものです。地図と定休日をチェックして、すっ飛んでいきました。

 最近、池下の充実っぷりは素晴らしいですね。セントラルガーデンの「フォルテシモ アッシュ」さん「メゾンカイザー」さんを中心として、ずっと前に本ブログでもご紹介した「パティスリー・ニノ」さん、先日記事にした「ベーグル心粋」さんができました。さらに美味しいコーヒーがいただける「ペギーコーヒー」さん、肉汁が魅力のハンバーグをいただける「文化洋食店」さんは、既におなじみでしょう。他にもまだまだあったような気がしますが、すぐにこれだけ思い浮かびます。あ、そうそう、ミスドもちゃんと池下駅のすぐ横にあります。

 場所は、池下駅から北に延びる2車線の道路を道なりに進むだけなので、迷うことはありません。…と、思いきや、迷いました。開店前に着いてしまっていたために、目印が分かりにくかったようです。改めて、地図を確認して、しばしの間、開店を待ちます。

アルエットゥ
 モダンだ。

 外装、内装ともに、白を基調として、清潔感のある、心地良さが満ちています。一見の私でも、すーっ、と入っていくことができました。入ってすぐがレジカウンターと、ケーキのショーケース。奥がカフェスペースになっています。この日はお持ち帰りと決めていたので、ショーケースの前に立つと、

 迷う。

 いつもの、優柔不断さが出てしまいました。ショーケースには10種類ほどの甘味が綺麗に陳列されていて、かわいらしくて、見ているだけで、楽しくなっていきます。どれもこれも、食べたい。我がおなかの方は、「10個くらいの甘味だったら、いつでも引き受けるよ」という返答がありましたが、そんなにお財布に負担を掛けるわけにもまいりません。じっくりと、ショーケースと対面する私。それを柔らかく待ってくださるスタッフさん。優しいです。「いいお店って、スタッフさんの雰囲気も良いのだよな。怪しげな甘党に対しても優しく対応してくださるのだよな。このようなお店って、外れは無いのだよな」と、いただく前から、その美味しさを確信しました。

 そして、悩みに悩みぬいて選んだ、今回の3品。

 まずは、シーズンの巨峰を使った「巨峰のタルト」です。オーソドックスながらも、瑞々しい巨峰がふんだんに使われていて、その洗練されたスタイルに魅かれます。

巨峰のタルト
 巨峰が輝いています

 その巨峰は、種を取って、ルビーの赤紫色を残しながら皮をむき、スライスにして、たっぷりと盛られています。その巨峰を、一口。ぽってりと水分を含んだ果実は、甘味が濃縮されているけれど、すっきりとした爽やかさが、しゅっ、と、スタイリッシュに現れます。同時に酸味も出るのですが、それは、あくまで甘味を引き立てる役で、のどにしみるような鋭さまではありません。これもまた、洗練された酸味と言えるでしょう。巨峰の持つ良さを綺麗に出している感があります。
 巨峰の下にはカスタードが敷かれています。最近のタルトは、ふわふわと軽いカスタードにしているところが多いように感じられますが、このタルトのカスタードは、軽さはあるものの、とろりとクリーミーさが多分に表現されています。しかし、粘り気や過ぎた重さといったものは無くて、存在感を持たせつつ、さっぱりと舌を流れます。また、玉子の香りも、ほのかに出していて、華やかな麗しさのあるカスタードだと思いました。

巨峰のタルト・側面
 やや重量感のあるカスタード

 土台のタルト生地は、ほろりとほどける食感。さらにその下のパイ生地はカリカリパリパリのクランキーな食感。この二つの食感で、複合的な歯ざわりを作ることで、上のクリームと巨峰を受け止めて、その柔らかさとふんわりさを際立たせてくれます。
 また、タルト生地は、かなり甘めになっており、また洋酒のの香りもの加わっているために、生地だけでは、かなりインパクトが強くなっていますが、巨峰やクリームと一緒にいただくことで、そのインパクトが緩和され、バランスを取り、土台の強い甘さが、巨峰の酸味と調和し、主役としての役割を上手く演じています。これらの絶妙なバランスの良さがこのお品の眼目と言えるでしょう。

 「オレンジのチーズタルト」は、一見すると、至って普通のチーズタルト。ですが、内に秘めたお味と香りは鮮烈です。
 もともと、酸味のあるチーズの味に、オレンジの酸味がプラスされています。この二つの酸味は、別々の系統ですが、お互いの持ち味を消すことなく、それぞれの鋭さを見せています。

オレンジのチーズタルト
 すがすがしさと重厚感の融合

 これだけ酸味が強いと、さっぱり、すっきりといただけそうなものですが、チーズペーストがこってりとしていて、結構な重量感を持っています。そのため、少しずつフォークで切りとりながら、キュッ、とした爽やかな刺激を味わうのが良いかと思います。そのため、やや小ぶりかなと初めは思いましたが、質量はあり、一つ食べ終える頃には、そのどっしりとしたお味と、食感で、十分にたらふくになれるでしょう。
 あと、トッピングのホイップクリームの軽さと、ピンクグレープフルーツのたっぷりの水分は、味に変化を持たせるのに、非常に有効に働いています。

 もし、目を閉じて、「なにも仰らずに、このお品を食べてみてください」と渡されて、一口いただいたとしたら、私の頭の中は、明治以来の文明開化が始まったことでしょう。それくらいの、インパクトを残してくれたのが、「シブスト・ポム」です。
 リンゴのシブーストは、多くのお店で出されているお品ですが、アルエットゥさんのシブーストは、「うわっ! 美味いっ! 凄いっ!」と、脳内麻薬の分泌が正常値をはるかに越える活性化を見せました。今までに私がいただいたシブーストの1,2位を争うと判断しました。
 何処がそんなに興奮をさせる要素なのか、と申しますと、とにかく「ふわふわ、ふるふる」と軽いのです。この舌の上で舞うこの感覚は、目が覚める思いでした。
 ちょっと落ち着いて、上から順番に見ていきます。丸い本体の天辺は、パリパリにキャラメリゼされていて、苦味がえぐみ無く、鮮やかに濃い香りと甘さが凝縮されています。その下が、パリパリの天辺とは対照的なふわふわふるふるの本体です。こちらは、本当に質量があるのか? と疑問に思うくらいの軽さ、それなのに、しっかりとした甘味をもっています。限界までの軽さを追求したのではないかと思わされました。

シブスト・ポム
 羽毛のように軽いシブースト

 シブーストの下には、キャラメリゼしたリンゴが、クッキー土台の上に細かく散りばめられています。こちらも天辺と同じくらい、しっかりと焦がされていて、ほろ苦になっています。もともとのリンゴの甘味とほろ苦の組み合わせで、濃い味わいとなっています。 クッキー生地は、サクサクの食感、甘味は控えめ。それでも、そのすぐ上のリンゴが十二分に甘いので、これくらい抑えた甘みでも全く違和感はありません。
 全体を通して、濃密な甘みと芳ばしい苦味を中心とした味わいで、大人の味わいの一品と言えるでしょう。全体をいっぺんに味わうと、まず、シブーストのメレンゲが解ける軽さに陶酔し、それが消えるのと同時に甘みが広がります。サクサクとクッキーを食べおわると、甘みがすーっと立ち去り、苦味の刺激が華麗にたち現れます。メレンゲの限界を追求したシブーストの存在、甘みと苦味のコントラストは、絶品です。

 こんなお品があるお店を知らなかったことが悔やまれます。八事にあったことが分かれば、自分でもしょっちゅう求めて行っていたでしょうし、問われれば、「こちらはオススメ。良い!」と口伝えにもしていたでしょう。情報網はつねに広げておかねばならない、と実感させられました。


◎店舗・商品データ
・商品データ
 商品名:巨峰のタルト
 価格:¥500

 商品名:オレンジのチーズタルト
 価格:¥420

 商品名:シブスト・ポム
 価格:¥480


・店舗データ
 店舗名:Salon de Thé ALOUETTE(サロン・ド・テ アルエットゥ)
 住所:名古屋市千種区高見1-26-4 タカミ光ビル 1D
 営業時間:12:00-19:00
 定休日:木、第1水
 公式サイト:http://salon-alouette.net/
 アクセス:名古屋市営地下鉄「池下駅」西側、「池下北交差点」を北へ。直進して約430mの左手。「サークルK」と道を挟んで向かい側。


人気blogランキング クリックしてくださると、もっとたらふくになれます。

|

« しっとり軽く「ショコラシュー」 | トップページ | 今日の「山」登りは「ペスカドール」&「高菜ピラフ」&「キウイパフェ」 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 軽やかに舞え水面に映ゆ雲雀(巨峰のタルト、オレンジのチーズタルト、シブスト・ポム:サロン・ド・テ アルエットゥ):

« しっとり軽く「ショコラシュー」 | トップページ | 今日の「山」登りは「ペスカドール」&「高菜ピラフ」&「キウイパフェ」 »