人々が帰り着く場所を讃う(季節のフルーツタルト、桃のタルト:キルフェボン)
新しいケーキ屋さんができたよ、と聞けば、そちらへ奔り、安くて美味しいランチのお店があるよ、と雑誌に載っていれば、あちらへ走っています。新情報が耳に入れば、一度は行ってみたくて、うずうずとします。そして、実際にその評判のものをいただいてみて、抱いていた思いに適っていたり、そうでなかったり…。そういう諸々の出会いがあることが、食べ歩きの醍醐味なのかもしれません。
でも、「今日は『間違いないもの』を食べたいな」と思うときがあります。この「間違いないもの」というのは、その味を知っていて、いつでも全く同じ味を口にすることができる、ということではありません。以前いただいたことがあるお品であっても、口にするたびに新たな感動を与えてくれるものが「間違いないもの」だと考えています。
「間違いないお店」は、多くの方々にとっても「間違いないお店」になっているようです。私の心の中にあるいくつかの「間違いないお店」は、いつでもお客様で賑わっています。このことから考えても、「間違いないお店」は、「帰っていける場所」と言い換えることができるでしょう。心のふるさと、それが「間違いないお店」なのです。
「間違いないお店」は「帰っていける場所」であり、それすなわち「人気店」ということです。「人気店」の一番人気のお品の素晴らしさは、わざわざ私がご紹介しなくても、周知のことだと思います。だからといって、知らんぷりして、放擲するのも心持ちがしっくりときません。
私は考えました。「素晴らしいものを、皆とともに、素直に、素晴らしいと声を挙げることが、『間違いないもの』への敬意であり、報恩になるのではないか」と。
今回の記事は、私が「間違いないもの」へ捧げる賛美歌です。
…これからご紹介するものが、好き過ぎて、訳の分からない大ごとになってしまいました。ここから、少し心を落ち着けます。上の文を要約すれば、大好きだと言いたい、ということです。
「キルフェボン」の『季節のフルーツタルト』と言えば、「全国の美味しいスイーツランキング」とか、「私がオススメするケーキランキング」といった、テレビ番組の常連です。100位くらいから紹介していくものだと、なかなか登場しません。大抵は、トップ10に入っています。1位になることも少なくありません。それくらいの実力者。数え切れない人々を甘美な世界に誘っているお品。
そのような最上級美食を、私なぞがご紹介しても良いのだろうか、という疑問が頭をもたげますが、そこは自分を納得させ、皆様のお許しをいただきたいと思います。
煌煌しき君
『季節のフルーツタルト』ですから、季節ごとに、使われている果物が違います。今は、レギュラーの果物の他に、イチジクが顔を見せてくれました。その他の果物は、
キウイ、ブルーベリー、パイナップル、バナナ、イチゴ、グレープフルーツ、マンゴー
でした。お店に置かれていたリーフレットによると、10種類の果物が用いられているとありますが、私が今回いただいたピースに乗っていたのは、8種類。あと、2つが気になるところですが、これも、毎回変化が楽しめることだと思うことにしましょう。だからこそ、「間違いないもの」なのです。
輝かしき君
ふんだんに盛られた果物は、一つ一つが、甘く、酸っぱく、瑞々しい。その果物らしい濃い味を包含しており、奥歯で、キュッ、と噛み締めると、それが弾け出し、口いっぱいに香りが広がります。余程厳選された果物なのでしょう。もう、一口で、陶然となります。このタルトから果物を全部取り出して、25mプールにいっぱいに張って、甘い香りに包まれて、泳ぎながら食べ尽くしたい気になってきます。
麗しき君
果物をたおやかに受け止めているのが、カスタードクリームです。このクリームは、果物の味を最大限に引き出す役割を受け持っているようです。自信の甘味は抑え、口をさらりと流れるようななめらかな舌ざわり、バニラビーンズと玉子の甘い香りが、ふんわりと柔らかい気持ちにしてくれます。心落ち着くとは、このことなのでしょう。
パイ生地は、パリパリ感よりも、さっくり感が強く出ています。クッキーのような小気味良い歯ざわり、焼けた小麦粉の芳ばしさと、くどさを感じさせないほのかなバターの香りは、やはり、主役たる果物を引き立てています。
雅やかなる君
果物、カスタードクリーム、パイ生地、それぞれが持ち味を十二分に発揮しつつ、お互いの良さを打ち消さないギリギリのレベルに保っています。これぞ妙技。これ以上ない配分。天よ、我と、彼の『季節のフルーツタルト』とを同じ世に住まわせ給うことに畏敬の念を禁じえない!
これが、私の『季節のフルーツタルト』への賛美歌です。もっと、言葉を尽くしたい気持ちがあるのですが、私の文の力が付いていくことができません。
もちろん、「キルフェボン」は『季節のフルーツタルト』だけではございません。他のレギュラーメニュー、そして、季節ごと、地域ごとの限定のお品も特筆すべきものです。
ケーキが華麗に居並ぶショーケースを見ておりますと、はちきれんばかりの潤いに満ちたタルトが目に入りました。
甘みと瑞々しさが相乗効果をもって同居しています
『桃のタルト』です。このお品は、6月~8月の間の夏季限定です。さらに、私の目を惹いたのは、「名古屋店限定」の文字。『豊田猿投の桃のタルト』という名前になっていました。これは、素材がある限りで販売終了となるとのことでした。なので、8月末を待たずに販売が終わる可能性もあるということです。実に良いタイミングの出会いです。
まさに桃色、ほのかに赤みざした果実は、本当に食べても良いのかと疑ってしまうような危うい魅力を持っています。5cmほどにカットされた桃の一切れをフォークで口に運びます。
クリームかと見紛う。
完熟の桃は、とろりと口に広がり、すがすがしい甘みを放ちます。夏、夕立の後のような涼やかですっきりとした気分が呼び起こされました。これほどまでに混じり気の無い桃にはそうそう出会えるものではありません。
桃の下はシロップの染み込んだ、しっとり、さらりとしたスポンジを介して、カスタードクリームが横たわっています。このカスタードクリームは、『季節のフルーツタルト』よりも甘みが強めになっているような感じがしました。『季節のフルーツタルト』のカスタードクリームが、軽やかで若々しい甘さだとしたら、この『桃のタルト』のカスタードクリームは、妖艶で、華麗な甘さだと言えるかもしれません。桃も、カスタードクリームも甘みが強いのですが、全く違う種類の甘さであり、その融合により、さらにもう一つの甘みが生み出されています。複雑な甘みと、ボリュームは、まさに甘党向きで、1ピースで充分にたらふくになれます。
赤すぐりのワンポイント
そして、一粒の赤すぐりが、ピリッ、とした鋭い酸味を破裂させ、幾多の甘みの中で、効果的なアクセントとなっています。
たっぷりしてます
パイ生地は、これもやはり、パリパリと、さっくりの両方の食感を、巧妙なバランスで、成り立たせており、桃、カスタード、スポンジの柔らかい口当たりと合わさることで、独特の存在感を見せつつ、主役たる桃の存在を高みへと押し上げています。
『季節のフルーツタルト』も『桃のタルト』も、これで満足しないわけにはいかない、という実力を存分に発揮してくれました。満足の極みです。もうこれ以上は、申し訳なくて、とてもとてもいただくわけにはいかないと思うのです。
しかしながら、しばらくすると、また、この味、この香り、この口当たりが恋しくなるのです。ふっ、と頭に思い浮かぶのです。そうです。帰るべき故郷のように。
これが「間違いないもの」なのです。
イートインの方は、松坂屋店内からお入りください
◎店舗・商品データ
・商品データ
商品名:季節のフルーツタルト
価格:672円
商品名:豊田猿投の桃のタルト
価格:651円
・店舗データ
店舗名:キルフェボン 名古屋店
住所:名古屋市中区栄3-16-1 松坂屋本店・南館1階
営業時間:10:00-20:00
定休日:不定休
公式サイト:http://www.quil-fait-bon.com/
アクセス:名古屋市営地下鉄・名城線・矢場町駅5番出入口直結。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント