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2008.06.12

今日の「山」登りは「森のバターライス」

 「森」と「林」には違いがあります。
 農林水産省の決め事によれば、人工的に木が育てられているところが「林」、自然にできたものが「森」となっています。また、規模の面から考えると、小規模・密度が低いものものが「林」、それ以外の場所で樹木が密集していると「森」となるようです。(Wikipedia「森林」の項目より)

 元来、森は不思議な場所と考えられております。人間の力が加わっていないので、自然霊がの居場所と考えられていたようです。
 これは洋の東西ともに根付いていたことのようで、グリム童話の『赤ずきん』では、おばあさんの家に行くまでに「森」という異空間を通過せねばなりませんでした。同じく『ヘンゼルとグレーテル』でも、兄弟が立ち入ったのは魔女の棲む奥深い森でした。

 今では、贋作事件の代表としてよく知られる「コティングリーの妖精」は、あのコナン・ドイルも騙されてしまった事件です。この出来事には、数枚の写真がからんでいるのですが、一部の写真を除いて、森の中で、少女の周りを蝶のような羽根を生やした妖精が戯れている様子が映っているのです。
 トリックは単純で、妖精の絵を描き、それを切り抜いて、ピンで地面に立てただけのものだったのですが、著名人がことごとく騙されました。これも「異空間としての森の力」が発揮されたからなのかもしれません。
 この贋作事件には後日譚があり、事件の44年後、妖精写真を撮った当時の少女「エルシー」は、「あの写真は、私といとこのフランシスの創造の産物」と公的に発言して、彼女たちが撮影した5枚のうち、4枚はトリック写真ということが明らかとなったのでした。
 そして、さらに、「最も多くの人々を最も長い間だましたトリック写真」として、ギネスブックに載ることになったのです。
 ここが最も、驚くべきところなのですが、4枚の妖精写真がトリックだと告白した後、残り1枚の「ローブを被った精霊」の写真だけは、エルシーもフランシスも「私たちは、この写真はトリックを使わずに撮ったもの」と言っているのです。森の中には、本当に妖精はいるのかもしれません…。

 東洋にも、森の神秘を語っているお話はたくさんあります。「桃花源記」もその一つと考えてもいいかもしれません。鬱蒼とした森を抜けていくのではなく、ある男が、谷川を遡っていくと、両岸に桃の木が咲き乱れる場所に迷い込みました。さらにその上流へと行くと、山に狭い洞窟があり、それを抜けると、美しい村があったという話しです。そこは俗世間と離れていて、まさに理想郷でした。男はそこで暫く過ごした後、村人から「ここのことは口外しないで下さい」と念を押されたにも関わらず、帰ったから、役人に申し出て、再び、桃花の林を目指すのですが、何故か辿り着けなかったということです。
 「桃」には、霊性があるとされています。中華まんで「桃饅頭」があるのもそれにあやかったことでしょうし、桃太郎が桃から生まれて超人的な力を発揮するのもこのような根拠があるのです。
 日本神話になりますと、イザナキノミコトが、黄泉国から、イザナミノミコトを連れ帰ろうとしたとき、「黄泉国の食べ物を既に口にしているので、簡単には帰ることができない。黄泉神と話し合ってみますが、その間、決してその様子を覗き見しないでください」と禁止事項を伝えられていたのですが、そこは、物語。

 見ないでください、と言われた場合は、必ず見ます。

 例に漏れず、イザナキノミコトが覗き見すると、イザナミノミコトは蛆がわき、全身が雷に覆われた凄まじい姿だったのです。
 慌てて、イザナキノミコトは、その場から走って逃げます。それを見た、イザナミノミコトは、逃がすまじ、と「ヨモツシコメ(黄泉醜女)」を追っ手に遣わします。イザナキノミコトは持っていたいろいろなものをヨモツシコメに投げつけて、時間稼ぎをしながら、逃げます。そして、最後に、「桃子三箇」を投げつけると、ヨモツシコメは諦めて、逃げ帰っていきます。この「桃の力」は、中国から伝わったものなのだと思います。

 森の不思議と言えば、説話にもたくさん登場します。有名なのは、『宇治拾遺物語』の巻一・第三話「鬼ニ瘤取ラルル事」でしょう。「昔話」でメジャーな例のあれです。
 瘤を持つおじいさんが、薪を取りに山深く入ると、大雨が降り始め、辺りも暗くなったため、木の虚に身を潜めて、雨が止むのを待っておりました。すると、辺りが騒がしくなります。木々の生い茂る山奥なのに不思議なことだ、と思って、おじいさんが虚から覗くと、鬼たちが宴会の準備をしていたんですね。あとは、おなじみの展開です。
 この説話も、山奥、木の虚が、翁を異空間に誘ったと考えられます。山や森の霊気が感じられませんか。

 前フリが、いつも以上に長くなりましたが、申し上げたかったことは、「森」には不思議な力があり、歴史を通じて幾度と無く、人間はそれに接して、その力を受けていたということです。いつも、人間は、誘われるようにして、森を訪れているような感じさえあります。

 そこで出会ったのが「森のバターライス」。
 私も、「森の不思議」に惹かれたのです。メルヒェンの世界に身を投じてみたくなったのです。「マウンテン」に「森」。舞台は整っています。果たして、どのような幻想が私を待ち受けているのでしょうか。

森のバターライス
 うっすらと満遍なく緑色

 オーダーから約15分後。緑っぽい炒めごはんが目の前に現出しました。緑です。濃い薄いはありますが、全体が緑です。まさに「森」。この「森」からフェアリーが登場するのかもしれません。わくわくしながら、スプーンを手に取りますと、まず目に飛び込んでくる食材は、3cm角ほどにカットされた「アボカド」です。

 アボカド…?

 アボカド【avocado】
 クスノキ科の高木、また、その果実。熱帯アメリカ原産で樹高6~25メートル。果実は緑褐色、西洋梨に似た形で、脂肪に富み、「森のバター」と呼ばれる。ワニナシ(英語名アリゲーター・ペアの直訳)。
 (岩波書店『広辞苑 第五版』より引用)

 前フリをだらだらと書かなくても、タイトルをご覧になられただけで、お気づきになっていらっしゃたと思います。

 「森の」バターライス

ではなく、

 「森のバター」ライス

です。この分かりやすいネーミングを出すのを躊躇ったために、前フリが長くなってしまいました。引き伸ばしに引き伸ばしたせいで、ここまでで、普段の記事くらいの分量を使いきっています。お料理をいただく前に、もう、たらふくです。

 では、改めまして「森のバターライス」の感想といきましょう。以前、一度だけこのお品をオーダーしたときがあったのですが、そのときは、「申し訳ございません。アボカドが品切れでして…」といただくことができませんでした。今回は、早い時間にアタックしたので、品切れを回避できました。
 アボカドは先ほど書きましたように、かなり大きめにざっくりと切り分けられて、ごはんと一緒に炒められています。その作用により、ごはん、他の具材がアボカド色に染まって、森っぽい色になったのでしょう。
 アボカドは出し惜しみをせずに、ごはんの間から、ゴロリゴロリと出てきます。見たところ、1個まるごと使っているようです。
 サブ具材は、小海老、スライスマッシュルーム、玉ねぎのみじん切り、付け合せの福神漬けです。マウンテンではお馴染みの仲間たちです。

森のバターライス・アップ1
 こんな感じで「ごろん」と入っています。

 さて、問題は、炒められたアボカドが同じく油をまとったごはんと合うかどうかです。ただでさえ、アボカドは「脂肪に富み」と言われているくらいです。すごくくどいものになっているのではないのか…。そんな不安を抱えながら、スプーンで一口。

 おや! 思っていたよりもくどくないです。むしろ、アボカドの味が薄いので、さっくさっくと食べ進めることができます。実際のカロリーは高いのでしょうが、そこは目を瞑りましょう。ベースのお味は、塩コショウ。
 熱が通ったアボカドは、とろりと柔らかく、食感においては、存在感が薄いのです。口に入っても、「あれ、これ、アボカドなのかな?」と疑問を抱いているうちに、とろけて無くなってしまいます。
 よく、アボカドはわさび醤油でお刺身として食べられます。これは、アボカドのお味がぼんやりとしているために、はっきりとした味付けをすることで、食感と味の相乗効果で、美味とした知恵だと思います。この「森のバターライス」も同じような感じで、ごはんの味付けと共にアボカドをいただくことで、新感覚でアボカドの食感を楽しむことができました。
 アボカド1個に対して、ごはん1.5~2の割合でスプーンですくうと、ちょうどいいバランスのような気がします。
 そうやって、「アボカドどこだ、アボカドどこだ?」とお皿の上を探っていて、アボカドの大きい塊に会うと嬉しくなります。そして、1:1.5で口に入れて、「やっぱり、アボカドぼんやりしているなぁ」というふんわりとした感想を抱くのです。

 ごはんはごはんのふんわりした食感、アボカドはとろりとした柔弱な食感。70%ほど食べ進めたところで、この柔らかさに偏りのあるお料理に、ふと飽きが来ます。そんな時に活躍するのが、ぷりぷりの小海老と、カリッカリの福神漬けです。特に福神漬けは、味も濃いので、口の感覚を変えるのにぴったりです。

森のバターライス
 感触と味を変えるのに効果的な福神漬けと小海老

 アボカドの新食感と、味の変化を楽しみながら、難なく完食いたしました。なんだか楽しいお料理でした。…あ、もしかして、これが「森効果」なのかもしれません! 森、すごいです。

 「森のバターライス」は、私にとっては、「安全メニュー」「オススメメニュー」です。しかし、私がアボカド好きだからかもしれません。アボカドが苦手な方は、独特の青臭さが気になる可能性もあります。うーん、オススメいたしたのですが、お客様の嗜好に大きく左右されるかもしれません。アボカドが苦手な方は、パーティの同行者が「森のバターライス」をオーダーされたときに、一口だけいただいてみるとよいと思いますよ。


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