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2006.11.08

「閉山」の日は「甘口メロンパン風スパ・ダブル」

 2006年11月5日、21時過ぎ。愛知県名古屋市昭和区のとある喫茶店には、未だ日中の喧騒の余韻が残っていました。
 その喫茶店の名前は「マウンテン」。30有余年、近隣に住まう学生さんたちを中心に、数多の腹ペコ人の胃袋を混沌の渦に巻き込んでいた喫茶店の歴史に、一つの区切りが打たれる瞬間が目前に迫っておりました。喫茶マウンテンはこの日をもって、店内の全面改装のために、約半年の予定で、長期閉山することとなっていたのです。
 聞くところによると、日中は、登山口に至るまでに1時間以上待ちだったようですが、私たちが登山を試みたときは、駐車場には余裕があり、行列もすっかり無くなり、山中に入るなり、席に着くことができました。
 今、「私たち」と書きました。
 私が初めて喫茶マウンテンを訪れたとき、数年来の友人であるささのってぃさんをお誘いしました。長期閉山前の最後の登山に相応しいお相手とみて、お誘いしたのです。ささのってぃさんはその意を酌んで下さったのか、快く応じて下さいました。ただし、

 「もちろん僕は『甘口』は登らないよ。コーヒーだけね」

との但し書き付きでした。
 夜9時過ぎです。私も「甘口スパ」を登る気などございませんでした。「山」の甘口メニューをあらかた味わっております。最後の大物は「和風パフェ」と見て、それの登山を予定しておりました。

 店員さんに渡されたメニューを見るまでも無く、

 「『ストロングコーヒー』と…」

と、オーダーしようとしたところ、思ってもみなかった言葉が店員さんから発せられたのでした。

 「すみません。『ストロング』は品切れになりました。『ストロング』以外でしたらあります」

 なんと、「ストロングコーヒー」と他のコーヒーは、別の液体から製造されているようなのです。一種類の液体の濃度を変えて提供している訳ではないようなのです。新発見でした。

 「それじゃ、『ソフトコーヒー』と、『和風パフェ』を…」
 「すみません。『和風パフェ』も品切れになっていまして…」

 さすが、閉山の日。「山」の中でも、強烈だと思われるお品は、早々と材料が無くなっていたようです。

 「トマトがもう無いんだってー」

 他のテーブルの登山者の方から、また別の在庫切れ情報が聞こえてきました。一日でマウンテンの数あるトマトメニューが、ことごとくオーダーされたようです。

 さて、私の注文をどうするべきか。トマトが無いので「イタリアントマトパフェ」は注文できません。あと、今まで口にしたことの無いパフェは「キウイパフェ」しかありません。普通のパフェですが、仕方ありません。

 「それでは、『キウイパフェ』をお願い…」
 「すみません。『キウイ』がもう無いんです…」

 「山」の「甘口」には欠かせないキウイ。無くなっていてしかるべきです。
 他のパフェはもういただいたことがあります。パフェを諦めました。
 こうなったら、「山」の代名詞とも言える「甘口スパ」に行くしかないでしょう。しかし、「甘口スパ」は全て単独登頂済みです。ダブルに挑みます。

 「『甘口スパ』は何が残っていますか?」
 「『抹茶小倉スパ』、『バナナスパ』、『メロンパン風スパ」でしたら出来ます」

 『甘口抹茶小倉スパ・ダブル』は単独登頂済みです。『甘口バナナスパ』のダブル…、私にはきつすぎます。残るは…、

 「『ソフトコーヒー』と『甘口メロンパン風スパ・ダブル』をお願いします」
 「はい! …『ソフトコーヒー・ワン』、『メロンスパダブル・ワンッ』!」

 とうとうオーダーが通されました…。「甘口メロンパン風スパ」の甘さはきつくはないのですが、お味が今ひとつ、私の好みに合わないところがあるのです。若干の不安を抱えつつ、到着を待ちます。

到着前
 フォーク2本。お二人様用

 ささのってぃさんオーダーの「ソフトコーヒー」用ミルクと、ミレーフライ、コーヒー用受け皿、そして2本のフォークが届きました。

 「フォークが2本来たけど、『メロンスパ』食べる?」
 「いやぁ、遠慮しとくよ」

 やんわりとささのってぃさんは、甘口を敬して遠ざけました。予想はしておりました。
 数分後、「ソフトコーヒー」が到着しました。「ソフト」と冠していますが、他の喫茶店のコーヒーと比すると濃いコーヒーです。しかし「山」のコーヒーに慣れたささのってぃさんにとっては、「うん、普通のコーヒーだね」。

 さらに数分後、思ったよりも早く、見覚えのある取っ手付きの大皿がやってきました。
甘口メロンパン風スパ・ダブル
 内径約24.5cm

 何度見てもその深さには圧倒されます。

甘口メロンパン風スパ・ダブル側面
 深さもなかなか

 横からの写真を撮っている間にも、黄緑色のスパの熱で、生クリームがどんどんと溶けていきます。急いでいただくことにしましょう。
 生クリームは、縦横、格子状に7本の線で搾り出されています。この格子目の模様が「メロンスパ」ではなくて、「メロンパン風スパ」の名前の由来の一つでしょう。生クリームをかき分けて、鮮やかな色のスパをすくい上げると、人工的な甘い香りがぶわっと辺りを包みます。
 生クリームとスパの間をよくよく見ると、粉チーズのようなものが降りかかっているのが見て取れました。しかし、スパを口にしても、チーズの味はちっとも感じられません。この不思議な粉がふんだんにかかっている部分を見つけ出し、味を確かめます。…うむ、これは「パン粉」ですね。しかも甘いパン粉です。おそらくメロンパンの粉ではないでしょうか。良い言い方をすれば、麺の甘味を引き立てています。

 「甘口メロンパン風スパ」は、メロンパンの要素を含んでいるだけではなく、実際に生メロンも入っています。このメロンのぶつ切りが曲者なのです。麺と一緒に炒められたメロンは、甘味を放棄して、青くささを表にあらわし、口中にその果汁をほとばしらせます。このメロンと感じ得ることが困難なメロンのぶつ切りは、大きめに6つ入っていました。

 店員さんが持ってきてくださった、もう一本のフォークを指さし、ささのってぃさんに、

 「せっかくフォークがもう一本もあることだし、久しぶりに甘口食べてみない?」
 「いいの。単独じゃなくなるよ」
 「まぁ、いいよ。記念登山だから」

 ささのってぃさんは、1本のスパをすくい上げ、口に運びます。

 「…うん。甘いね…」
 「メロンも一切れどうぞ」
 「…うん。ちょっとこれはやっぱりすごいね…。もういいや…」

 1本の麺と一切れのメロンで、人をこんなに落ち込ませることができるのです。

 6合目を過ぎた頃、私もそろそろきつくなってきました。お腹の容量はまだまだいけるのですが、味に変化がないことが「甘口メロンパン風スパ」の陥穽とするところでしょう。「イチゴスパ」や「キウイスパ」は、盛られたフルーツの種類が豊富で、味に変化を持たせることができます。「抹茶小倉スパ」は、苦味のあるスパと、甘いあんこの比率を変えて口に入れる事で、甘味に強弱をつけることができます。ところが「メロンパン風スパ」は、初めから終わりまで、溶けたホイップと、メロンパン風甘味料がまじわった味が続くのです。飽きます。

 「ごめん。飽きてきた。ミレーフライ、少しもらうよ」

 ささのってぃさんのオーダーした「ソフトコーヒー」のおまけについてきたミレーフライをいただいて、その塩味で口中に変化をもたせました。
 「飽き」との闘いも残すところあと少しです。

甘口メロンパン風スパ・ダブル 残り一口
 頂上が見えました

 あと、一口です。最後です。いただきます。

甘口メロンパン風スパ・ダブル 登頂成功
 吐く息が甘くなりました

 (ほぼ)単独登頂できました。しかし、この「甘口メロンパン風スパ・ダブル」の二度目に挑む気はいまのところありません。たらふくというよりも、疲れました。

 閉店まであと10分。山中にはまだ2,3組の登山者グループが、閉山を惜しむ言葉を交わしていました。
 私はお会計を済ませて、加納マスターに、

 「ごちそうさまでした。また春におうかがいします」
 「おぅ、ありがとうっ! バーイ!」

 かっこいい。「バーイ」という別れの言葉をこんなに自然に出せる方がいらっしゃるなんて。やはり山神さまは言葉からして違います。
 霊峰のリニューアルを心より楽しみにしております。

山のともし火
 しばしのお別れです

――――――――――

 まだブログの記事にしていない登山メモのストックがいくつかありますので、閉山中はそれらのレポートを書いていく予定です。


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