今日の「山」登りは「グラタン風アボガド」
もちろん、それはそれは目を疑いました。
台風が来ようと、津波が襲おうと、稲妻が落ちかかろうと、外の全てが崩れ去ろうと、そこだけは絶対に無くなることがないと思っていたものが、無くなるというのですから。
2006年10月09日付「喫茶マウンテン公式Blog」の記事で、それはアナウンスされました。
「『休業予定のお知らせ』
この度喫茶マウンテンは,耐震対策のための店舗を建て替えをおこなう事になりました。
そのため、2006年11月5日をもって、しばらく営業を停止致します。
11月6日からは休業となりますのでご注意下さい」
なんということでしょう。なにがあっても揺るぐことがないと思っておりましたのに、「閉山」するというのです。しかも「耐震対策」の為で。
おそらく、ベテラン「登山者」の中には「雪崩が起きる可能性のある『山』でも、通い続けるぞ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。登山歴わずかに1年半の私でも、「雪崩が起きるかも…。でも、通いたい…。休業だなんて…」と思いました。
諸般の事情で「三十数年間大丈夫だった『山』だ。これからも大丈夫だ。耐震工事なんて必要ない」というわけにもいかないでしょう。涙をのんで、この事実を受け入れなければなりません。「閉山」までの間、出来うる限り、たらふくになることといたしましょう。
閉じるだなんて…
この事件を知らされたからには、「山」らしい何かをオーダーせねばならないでしょう。
あくまで「風」です
「グラタン風アボガド」です。これには「『山』らしい要素」がいくつか含まれています。
まずは、その名前。この名前の通りにお品の内容を想像すると、本体は「アボガド」にとなるでしょう。しかし、本体は違います。このお品は「スパゲッティー・その他」カテゴリーに含まれています。「それでは、ちゅるちゅると麺をすすることになるのか」というと、そうでもないのです。詳しくは後述いたします。
「風」。マウンテンには「風」が付くお品がいくつかあります。「和風スパ」「和風ピラフ」。ここまでは容易に受け入れることができます。「和風サーモンピラフ」。まだ受け入れられます。「和風ぞうすい」。だんだんと怪しくなってきました。もともと「ぞうすい」は「和風」のはずです。「チャーハン風ショートパスタ」。はい、分からなくなってしまいました。そして「グラタン風アボガド」です。「山」における「『風』の定義」は、一般よりかなり間口が広いようです。
ちなみに、店員さんから厨房には「グラタン、ワン」でオーダーが通りました。「山」には他に「グラタン」の文字が付くお品が無いので、それで通じるのです。
「アボガド」。既に何度か書いておりますが、「アボガド」ではなく、「アボカド」が正しい呼び名です。しかし、何度もメニューが入れ替わっても、「アボガド」メニューが「アボカド」に変わることはありませんでした。
「山」には「アボガド」という別物があるのです。
そのように思う他ありません。
それではそろそろ、実食に移りましょう。
やってきたお皿は、他のスパゲッティーのものとは違う深さがありました。標高65mmです(実測値)。お皿の内側の直径は205mm(実測値)です。いつものことですが、数値で書き表すと、その迫力は伝わりにくいものです。実際に両手の親指と人差し指で、約20cmの円を作ってみてください。その円をテーブルの上、約6.5cmのところに持っていってみてください。その円の中に、漫漫とホワイトソースが湛えられているのです。
縁が盛り上がっている
普通、「山」では、提供されているお品も「山」と呼ばれていますが、この「グラタン風アボガド」は「山」とは呼ばずに、「湖」と表現した方がいいのかもしれません。深い深い湖です。
到着するなり鼻を衝くのはチーズの独特の匂いです。決して「臭い」とは書きません。あくまで「匂い」です。
いつものホワイトソースの上には、粉チーズが降りかかっています。ホワイトソースに混じっているのは、これまたいつもの玉ねぎです。
ホワイトソースと玉ねぎには、「グラタン風」らしく、焦げ目が付いています。しかし、これが「山」の不思議。焦げ目があるのに、オーブンで焼いてはいないようなのです。何故それが分かるのかといいますと、注文をしたのが14:56。到着したのが15:03。7分でこれが出来上がるわけがありません。それに加えて、決定的なのが「お皿の縁がちっとも熱くない」ことです。オーブンで焼いているならば、お皿全体が熱くなっているはずです。それがちっとも熱くないのです。なのに焦げ目が付いているのです。不思議です。しかし、これ以上は追求いたしません。なぜならば、ここは「山」ですから。
「グラタン風アボガド」は「スパゲッティー」カテゴリーに入っていますが、「その他」に分類されています。それは、これにスパゲッティーが用いられていないからでしょう。代わりに用いられているのは、ショートパスタです。巻貝のような「コンキリエ」と、ねじれた筒状の「エリーケ」というパスタのようですが、こんな難しい単語は使いたくありません。「マカロニ」でいいでしょう。「山」ですもの。大きな心で食べ進みましょう。
「スパ」の「その他」の理由は「スパ」じゃないから
口当たりは、とにかくねっとり。ホワイトソースととろけるチーズが、柔らかめに茹でられたマカロニに絡んで、熱を含んで気が緩んだアボガドが加わるのです。最初は、アボガドの青い匂いが気に掛かるかもしれません。でも、4口5口ほど食べるとそんなことは気にならなくなります。重くねっとりした食感が味を圧倒するのです。
なんとかしてグラタンっぽい画を用意しました
その味も、しっかりとかみ締めていくと、アボガドとホワイトソースのダブルクリーミーを、塩コショウが手際よくまとめ上げるのが分かります。それがするりするりと口を流れて行くのです。
私はこのお品は美味しいと思います。ただ、アボガドの存在のために、好き嫌いは分かれるとは思いますが。
ずっしりと重く白いものを口に運んでいると、山中の有線から、弦楽器曲で『アメージンググレイス』が流れ始めました。
穏やかな時。重い口当たり。たまに聞こえる悲鳴。
山の全てがそこにありました。
「喫茶マウンテン」は来年4月に、再開する予定となっているそうです。「山」のこの雰囲気をそのままに、耐震強度が増すことを祈っております。
春は新たなる旅立ちのとき
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コメント
>みんたさん
いつもと違うあのお皿が出てきた時点で、若干腰が引けました。ふんだんに油が使われているのでしょうが、ホワイトソースととろけるチーズとアボガドのもったりとした食感のせいで、全く気になりませんでした。恐ろしいことです。
意外と普通メニューを紹介しているサイトは少ないですね。「普通メニュー」とはいうものの、あまり普通ではないのですが(笑)
来月に入ると、登山者の数が激増するでしょうから、なんとか今月中にも。埃と年季が積もった昭和の「山」を登れるのも、あと少しですので。
>むいむいさん
それは、残念ですね。私も連日登りたいのはやまやまなのですが、現在、やや切羽詰った状態ですので、ままなりません。明日は登りたいです。
来春の山開きの際には、それにふさわしい「甘口いちごスパ・ダブル」をぜひ召し上がってください。
モリコロパークには、世界中の美味しいものが集まってほしいです。…それだと「リトルワールド」と同じになるでしょうか。
投稿: 桜濱 | 2006.10.19 00:36
桜濱さん、こんばんは。
マウンテン休業のお知らせには私も驚きました‥。
一度現在の店舗に行ってみたかったです。
が、11月上旬までは都合が付かなさそうなので
来春の山開きを楽しみにする事に致します。
その頃にはモリコロパークも全面オープンするそうですし'-'
投稿: むいむい | 2006.10.17 21:45
なんというボリューム、さすがは山です。喫茶店でグラタンといえば、愛らしい優しいと言いたい様な耐熱皿に半分くらいのボリュームで、こんがり焼いたかわりに張り付いたようになっている食べ物ですのに。食べてみたい、でも油のタッグが容易に想像できるので躊躇ってしまうでしょうね。
今回もほかではお目にかかれないメニューの特別さのみならず美味しさをよく伝えていただいて、楽しく読みました。(山メニュー紹介記事は沢山あるようですけど、驚いたり拒否反応をおこしたものも見られますから)
ますます、今月中に名古屋へ駆けつけたい気持ちになりましたよ。昭和の景物が好きな息子も再登山を望んでいるので、すいている日を選ぶことは難しそうなのですが…。
投稿: みんた | 2006.10.17 14:23