オペラ座の茶人(オペラ・ジャポネ、キャラメル・ポム:パティスリーミッシェル)
チョコレートケーキの定番「オペラ」は、ダロワイヨさんという方が、フランスはパリにある劇場「オペラ座」をイメージして造ったケーキだと友人に教わりました。
確かに、カキカキッと鋭角的で、全体が深いブラウンの落ち着いた色彩で、その色彩ゆえに目立つ、中心にそっと置かれた小さな金箔を持ったあのケーキは、「オペラ座」の雰囲気を持っています。私は「オペラ座」に行ったことはありません。でも、なんとなく「パリだ。『オペラ座』だ」と思わせてくれる独特の雰囲気を持ったケーキです。
その「オペラ」に「ジャポネ(日本の)」という形容詞を付けたらどうなってしまうのでしょう。日本にも「オペラ」はあります。でも「オペラ座」はありません。日本において「オペラ座」に相当するものは何でしょうか。劇場という点では、能楽堂や歌舞伎座が当てはまるようでもありますし、金色つながりという点では、金閣寺が当てはまりそうです。しかし、いずれも「『オペラ座』とはなにかが違う…」と思ってしまいます。
この「なにかが違う」という違和感を埋めたケーキに出会いました。名古屋市千種区のカフェレストラン「パティスリーミッシェル」さんで、「一年を通して人気のある、オススメのケーキはどれですか?」という質問に、店員さんが指し示して下さったケーキの一つが「オペラ・ジャポネ」でした。
店内は広く、席数も多いです
イートインで、ケーキ+コーヒーもしくは紅茶のオーダーで800円という、お得なケーキセットがあったので、そちらをお願いします。
エクセレーントッ!
なんと、ケーキセットでは、このように、シャーベットに季節のフルーツが添えられた、たいそう素敵なデコレーションを付けていただけるのです。あぁ、テイクアウトじゃなくて本当に良かったです。
フランボワーズのシャーベットとバニラアイスが半々。さっぱりした酸味とミルキーなコク。対照的な冷気を味わえるというのは、実に嬉しいです。
フルーツも、オレンジ、バナナ、キウイ、グレープフルーツとバラエティに富んでいて、どれもぴっしりと新鮮。バナナはじっくりと甘く、グレープフルーツはきりっと酸っぱくて、やや苦い。手を抜かない果物選びが為されています。
ぴっしり新鮮なのです
それらのフルーツに、加減を見つつ、チョコレートソースとストロベリーソースを絡めます。その二つのソースは、見た目の美しさもありますが、味のバリエーションを広げる効果もあるのです。素晴らしいです。
デコレーションの賛美はここまでにして、そろそろ主役のケーキに移ることにいたしましょう。
濃緑のオペラです
「オペラ・ジャポネ」は、チョコレートと抹茶をミックスしたオペラです。普通は金箔が乗せられているところには、チョコレートスティックと何かの実が。チョコレートはなめらかな甘さのミルクチョコレート。これは予定通りのお味です。
そしてこの小さい何かの実は? …わっ! ツンッと来ました。そして酸っぱい。どうやら梅酒漬けの小梅のようです。見た目からは分かりませんでした。結構強いお酒の香りです。これだけで酔ってしまいそうなくらいです。自転車に乗って帰られるかちょっと心配になるくらいの香りの強さでした。
濃緑のクリームは上に書いたように、抹茶を使ったものです。先程まで酔いそうになっていた心を、しっとりと落ち着かせてくれるような、苦味の無い、薫り高い抹茶のクリームです。
ビスキュイ生地はじんわりと潤っていて、抹茶クリームと組み合わさると力を発揮する強い甘さを持ったものでした。オペラですから、もちろんチョコレートのねっとりとした甘さがしっかりと出ています。
抹茶の薫りは感じられるものの、全体的には甘さが優先されています。しかし抹茶が弱いわけではありません。甘さを引き立て、後味でふっと姿を見せて、またふっと消えていくのです。まさにジャポネ。幽玄なるお味です。
ここまで充実したケーキセットを選んで、本当に良かったです。えいっ! もう一つ、行きましょう。
ふんわりしているのが一目瞭然
こちらは「キャラメル・ポム」というケーキです。フランス語表記では"Chiboust aux pomme"となっていました。リンゴのシブーストです。
上のゼラチン状の部分はキャラメリゼされていて、カリッとした芳ばしい香りが立ち上ってきます。上部分はシブースト。ふわりと感じたかと思うが早いか、甘い泡が、すっと口どけしていきます。甘味の中に交じり入った、ほんの少しの苦味が、ふわりの食感から生まれる優しい甘味をぼかすことなく、くっと締めてくれています。絶妙です。
シブーストの下はカスタードクリームが支えていました。このカスタードクリームは、ねっとりとした重みのあるお味です。上のシブーストが軽い分、この重い甘さが、また良い働きをしています。単にふわふわで終わらせないところがにくいではありませんか。
「ポム」の名を冠している通り、リンゴのスライスが、カスタードの周りを囲っています。甘く煮られたこのリンゴ。しかし、新鮮な生のリンゴをいただいているような感触なのです。水分は多く、甘さは抑え目、シャリシャリっとした歯ざわりという、第3の食感をもたらしてくれています。
「キャラメル」も「ポム」も出てきましたが、まだまだこのケーキは終わっていません。リンゴの下にはサバランのようにしっとりと生地があるのです。ここまで到達すると、洋酒のクラッとくる香りと、じわっと濃い甘味が登場するのです。
土台のタルトは、さっくりとしたクッキータイプ。またまた違う食感が。「どれだけ手をかければいいのですか」とパティシエさんを問い詰めたくなるくらい、ふんだんな味わいがありました。
このケーキは、ここまで書いてきたように、上から順番に分解していく楽しさを持っていると思います。一部分をちょっと削っては「うん美味しい!」、また削っては「うん甘い!」と徐々に徐々にたらふくになっていくケーキなのです。でも、上から下までざっくりとすくい取って、いっぺんに食べてみても、もちろん美味しかったです。
食べることを、遊んでいるかのように感じさせてくれる素敵で楽しいケーキでした。
◎店舗・商品データ
・商品データ
商品名:オペラ・ジャポネ(Opela japonais)
価格:¥400
商品名:キャラメル・ポム(Chiboust aux pomme)
価格:¥400
商品名:ケーキデザートセット(ケーキ1点とコーヒーもしくは紅茶のセット)
価格:¥800
・店舗データ
店舗名:パティスリーミッシェル
住所:〒464-0843 名古屋市千種区丸山町3-83 メナージュ丸山1階
営業時間:9:00-20:30(L.O.20:00)
定休日:水
アクセス:名古屋市営地下鉄・吹上駅から名古屋高速に沿って東に約1250m。「日進通4」交差点を左折。日進通に沿って西に約50mの右手。
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コメント
>みんたさん
ショーケースから取り出して、ケーキプレートにぽいっと乗せてそのまま出すお店も多い中、こちらはきちんと、いやきちんと過ぎるくらいきちんとデコってくださいました。どこから写真と撮って良いのか悩むくらい、綺麗でしたよ。
この「オペラ・ジャポネ」は、簡単に言ってしまえば抹茶チョコレートの味なのですが、丁寧な作りのため、しみじみと味わうことができました。
トッピングのチョコは、お箸に見えなくも無いですね(笑) 松葉のイメージでしょうか。
シブーストは定番商品なりつつあるのか、どこのケーキ屋さんでも、名前と形を変えて登場していますね。シブースト好きとしては、良い傾向だと思っております。単純に嬉しいです。
マウンテンの閉山のニュースは衝撃が走りました。あと3週間、出来る限り通わねばならないと思っております。記念に「なべスパ」に挑戦してみようかなとも。
投稿: 桜濱 | 2006.10.12 23:49
おお、これはイートインの醍醐味ですね、何て美しいのでしょう。
オペラは地味な見かけとは裏腹に手の込んだお菓子で、小さくても複雑な味で食べた気がするので一時よく食べました。最近はこれを出している地元店(小さい町なのに自宅から歩ける範囲に専門店5件もあるのです!)のものが濃厚すぎて年のせいかやや敬遠してしまっているのですが、このジャポネは見た目で惹かれます。きっとお味もすばらしいだろう、と。
トッピングが出番を待つ舞扇に一瞬見えました。よく見るとお箸に見えてしまうのが庶民の悲しさです…。
幻のシブースト、もっと昔の日本風というか田舎風ですがこの系統です。同じ名前のお店は検索してもそれらしいのが出てこないので幻のままになりそうですが、他所のお店ではどうかという楽しみがありますよね。名古屋にこれがあると思うと嬉しいです。
山がしばらく閉鎖されるとか、大きな楽しみがひとつおあずけですが、涼しくなってきたしちょっとだけでも名古屋に行きたいなあとおもっております。これでまた目標ができたかもしれません。
投稿: みんた | 2006.10.11 15:25