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2006.10.05

千一夜の願いが叶うとき(ミル エ ユンヌ ヌイ:オーボンビュータン)

 私は小さい頃から、ケーキや回転焼きなど、甘いものが好きでしたが、甘味への思い入れが急激な右肩上がりとなったのは、この3年ほどの間です。
 その3年ほど前、甘味初心者のときから、よく見聞する単語がありました。それらは、商品名だったり、有名なケーキ・お菓子職人の方やお店の名前といった、固有名詞がほとんどです。
 それらの固有名詞のひとつに「オーボンビュータン」がありました。やや長めで、音律の良いその単語は、一度聞いただけで、耳に残るものでした。間もなくして「オーボンビュータン」は、洋菓子界では、有名店中の有名店の名前だと分かったのです。
 そうと分かれば、一度は「オーボンビュータン」さんのお菓子をいただいてみたいものです。その想いがわいて以来、百貨店の催事などで、何度か「オーボンビュータン」さんのお菓子が出展されていたようですが、縁が生まれず、ケーキをいただくまでに至りませんでした。
 しかし、JR名古屋タカシマヤで「2006 パティスリー&ブーランジェリーコレクション」が催されること、そこに「オーボンビュータン」さんが出品されることを知り、「今度こそは!」と意を決して、あこがれのお菓子を目指したのです。

 今回の催事では、「オーボンビュータン」さんの生ケーキは、「初日を除いて15時半からの販売。お一人様合計五個まで。お一人様一種類につき二個まで」と、限定に次ぐ限定のお品となっていました。売り切れ覚悟で向かわねばなりません。

 息を切らして、他のお店のケーキを購入して「オーボンビュータン」さんの販売ブースに向かいました。予定よりも時間がとられ、到着したときは15時半を結構回っておりました。しかし、セピア色のブース内には、まだケーキが残っています。「口福の神様」が降りてきてくださったようです。

 「あぁ、これがあの『オーボンビュータン』のケーキかぁ…」と嘆息しながら、品定めです。我慢できずに、既に他のケーキをかなりの数買っていたために、「オーボンビュータン」さんのケーキを買うのは1個が限界となっていました。両手にケーキ袋をぶら下げて、ショーケースを凝視すること、数分。

ミル エ ユンヌ ヌイ
 二つの洋菓子の融合です

 選んだのは「ミル エ ユンヌ ヌイ」です。私は甘味を購入するとき、見た目に惹かれることが多々あります。それと同じくらい、名前の響きに惹かれます。「ミル エ ユンヌ ヌイ」は、後者の選択方法でした。
 明らかに日本語とは距離をとった響きです。美味しい甘味をいただくと、別世界に導かれたような気になるものです。ケーキは非日常の空間にいざなってくれるのです。「オーボンビュータン」に「ミル エ ユンヌ ヌイ」。どちらもその力を持っている響きをもっているように感じられたのです。

 「ミル エ ユンヌ ヌイ」は上下2層に分かれています。シルクハットのように、上に乗った円柱は、シブーストクリーム、そして、下の蜜柑のような形のドーム部分はサバランになっています。「一度で二度美味しい」のは、とても素敵なことです。それだけで、心はたらふくになっていきます。
 上のシブーストは、表面のかっちりとしたカラメルの甘味がやってきます。その内側には、かなり強めの洋酒の味。ショーケースのポップによれば、このお酒はラム酒のようです。一口食べると「ぷはーっ」となるくらいの香りの強さです。
 ふわりとしたシブーストの中には、カスタードが隠れていました。このクリームは、しっかりとした甘味と、すっきりした酸味。この軽い酸味が実に効果的。フルーティなやわらかな甘さを引き立ててくれます。
 下のサバランも、また洋酒がよく効いています。甘くて、ちょっとどきりとする洋酒の香りが付けられたシロップが、全体に均等にしみわたっています。フォークでサバランを削りとると、「じゅっ」とした手触りと共に、妖しいまでの艶めきを持った生地が現れます。洋酒の香りに中てられたのでしょうか、まさに非日常の世界がたち現れたかのような、不思議な感覚となりました。

 ポップには、カタカナで「ミル エ ユンヌ ヌイ」としか書かれていませんでしたが、おそらく"mille et une nuit"なのでしょう。「千一夜」の意味を持つケーキだったのです。本当に夢物語のような世界に誘われるケーキでした。
 そして、1001日は約2年7ヶ月。私が甘味への思い入れを強くし始めてからの時間とほぼ同じです。これまた不思議な縁のような気がしてなりません。


◎店舗・商品データ
・商品データ
 商品名:ミル エ ユンヌ ヌイ
 価格:¥451
 店頭ポップ:ラム酒の香りとシブストクリーム

・店舗データ
 店舗名:AU BON VIEUX TEMPS(オーボンビュータン) 尾山台店
 住所:東京都世田谷区等々力2-1-14
 営業時間:9:00-18:30
 定休日:水
 アクセス:東急大井町線・尾山台駅西側の道を南に約350mの右手。「尾山台交差点」北側すぐ。


※JR名古屋タカシマヤ催事 「2006 パティスリー & ブーランジェリー コレクション」
 JR名古屋駅隣接、JR名古屋タカシマヤ10階 '06.09.20-'06.09.25


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コメント

>みんたさん
「ミル・エ・ユンヌ・ヌイ」を手にしたのは、ケーキの海を散々渡り歩いたあとでしたので、細かい判断が出来なくなっていました。買うときは名前の意味まで考えずに、その音の響きだけで判断をしました。あとシブーストが好きだということを加えて。
私のうちの近くにもシブーストが美味しいという評判のお店があります。確かに美味しいです。でもちょっと小さい…。「もっと食べたいのにー」という気になってしまうので、なかなか買いにいけません。
「ミル・エ・ユンヌ・ヌイ」は、シブースト部分よりもサバラン部分の方が強く印象に残りました。サバランは下の方にシロップが溜まってしまっていることがままありますが、このサバランは上下均等に甘くて洋酒の香りしっかりのシロップが染み渡っていたのです。感動しましたよ。
それにしても、みんたさんの「幻のシブースト」。今は、どちらで活躍しているのでしょう。ご紹介文を拝見して、お目にかかりたくて仕方ありません。

投稿: 桜濱 | 2006.10.06 13:38

まあ楽しい!懐かしい美味しいケーキ2種類の融合なのですね。イメージが広がるすてきな名前がついていて、名店はすごいなあ~と思えます。
2種類のしっとりふんわり…夢の世界かも。
実はわたしの住んでいる町には、かつてシブストが名物のケーキ屋さんがあったのです。13年ばかり前に引っ越してきたとき、近所に住んでいる同僚に強く勧められた品でした。お店のオリジナルな解釈が加えられていたように思います。メレンゲの中にはさっぱりと甘く煮たリンゴの小片が入っておりました。これともう1種、ほかでは味わえないたいへんな美味と思っていたものがあって、しばらくその店に通いましたが、別のケーキ屋さんに替わってしまい今に至っています。
今は幻のあのケーキ、古風な地味な見た目でしたが、桜濱さんに味わっていただいて感想をきいてみたい、そんな気が一番するものでした。
…そんなことまで思い出しながら読んでしまう今回の記事でしたよ。千一夜願っても叶わぬことではありますが…。

投稿: みんた | 2006.10.05 23:35

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