小さくても強力。「ミニとうふドーナツ」
ことわざに「大は小を兼ねる」というのがあります。広辞苑には「大きいものは小さいものの代わりにも用いることができる」と載っています。このことわざだけを見ると大きいものがより良いように思われますが、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」なんていうことわざなんかもあって、大きくても小さくても良いものはいいんだなという気になってきます。
ミスタードーナツでは先月11日から「とうふドーナツ 金ごま・ココア」が発売され、なかなかの好評を博しているようです。その「とうふドーナツ」が小さくなり、「からだスマイルシリーズ 第2弾 ミニとうふドーナツ」として、今月8日に発売開始されました。とうふ・豆乳・おからなど体に優しい素材を使って、新しい味わいと食感を生み出した「とうふドーナツ」。その「とうふドーナツ」をベースに小さく姿を変えた「ミニとうふドーナツ」は、大きくても小さくてもおいしいものはおいしいんだな、と思わせるだけの力を果たして持っているのでしょうか?
「ミニとうふドーナツ」で目を引くのは、その大きさと共にディップにつけるという食べ方です。「ミニとうふドーナツ」本体は同じですが、ディップには「黒ごま」と「メープル」の2種類の味が用意されています。価格はどちらも¥189。
いつも新商品の発売初日は売れ行きは好調です。「ミニとうふドーナツ」も例に漏れずよく売れていました。私がショップに入った時は「メープル」が売り切れていて、「黒ごま」のみが売られていました。食べ比べをするつもりで来ていたので、「メープル」が補充されるまで、他の用事を済ませることに。15分後、再来店すると「メープル」が無事補充されていて、「黒ごま」と並んで陳列されていました。
トレイに乗せられた「ミニとうふドーナツ」のパッケージが2つ。一つのパックには「ミニとうふドーナツ」が5個。合わせて10個の小さな輪っか。ミスドではパッケージ入りのミニドーナツ「D−ポップ」が発売されていますが、「ミニとうふドーナツ」は形態的には「D−ポップ」の血を受け継いでいます。種類の違うドーナツの入ったカラフルな「D−ポップ」もにぎやかでかわいいでキがAドーナツらしいリングが澄まして並んでいる「ミニとうふドーナツ」も「あら、かわいらしいじゃない」と感じさせるたたずまいを持っています。
では、「ミニとうふドーナツ」を一つ、パッケージから取り出してみましょう。直径は約45mm(実測ですので、一つ一つ誤差はあります)、表面にはシュガーレイズドやエンゼルクリームと同じ、粒子の細かいシュガーがまんべんなくまぶされています。形は「とうふドーナツ」のように、玉が連なったようなモコモコした形はしておらず、チョコドーナツ系やホームカット等のような、まん丸リングになっています。が、これも一つ一つの形状にはばらつきがあり、きれいなリングになっているものもあれば、内円がつぶれてしまっているものもあります。この辺はおおらかな心を持って、これはリングなんだと見ることにしましょう。
取り出した一つの小さな「ミニとうふドーナツ」をそのまま口に運び、まずはディップ無しで味わってみます。指にシュガーのざらつきを感じながら、三分の一程度をかじりとります。食感は「とうふドーナツ」とほとんど変わりません。弾力のある生地表面に、しっとりふわり、少しもっちりとした粘り気のある内部生地。サイズが小さい分、内部の食感が少なく、表面食感が強く出ているように思われますが、気になるほどの違いはありません。
「とうふドーナツ」では「金ごま」「ココア」それぞれ全く異なった味を見せていました。「金ごま」は香ばしさとしっかりした甘さ、「ココア」はビターさと生地の抑えた甘さを持っています。「ミニとうふドーナツ」で初めに現れる味は表面のシュガーの甘さです。シュガーレイズドのように全身にシュガーをまとっており、強い甘さを主張します。「とうふドーナツ 金ごま」もグレーズがかけられていて、甘みの強いドーナツでしたが、胡麻のが緩衝材となっていたのか、「ミニとうふドーナツ」の方がより甘く感じられます。また「とうふドーナツ ココア」とは違って、生地にあるはずのほのかな抑えた甘さは、表面のシュガーの甘さのために、ほとんどかき消されてしまっています。「ディップ無しでもかなり甘くて、「とうふドーナツ」という名前から連想されるヘルシー感を期待して食べるとギャップに驚かされることになるでしょう。
2つあるディップ。最初は「黒ごま」を開けてみます。チョコレートクリームのような深い黒茶色のディップが詰まっています。開封されたディップのケースを匂ってみます。微かに立ち上る胡麻の香り。少しお行儀が悪いですが、ディップを小指につけてそのままの味を確かめます。小指をディップに沈めようとすると、ディップは軽い抵抗を示した後、指を飲み込みます。寒天が含まれたディップは、柔らかいゼリー、魚の煮こごりとマヨネーズの中間のような指ざわりです。指に乗っかったゆるいゼリー状のディップをぺろり。…一瞬、味が分かりません。あれ?と思った途端に、色と同じような深く、濃い味が鼻を突きます。この味は黒胡麻のコクと砂糖の甘さが入り混じった混沌としたものです。この複合の味は数秒後にはふわりと漂う黒胡麻の香りへと変化をします。「あぁ、やっと、黒ごまらしい味が出てきたぞ」と思っていると、数秒後には黒胡麻の香りを打ち破って、強い甘みが押し寄せて来るのです。忙しい味です。最後の甘さはかなりの威力を示し、長く舌の根あたりに居座ります。以上の経過を簡単なチャートで表すと、
?(よく分からない)→なんだか濃いねっとりとした味だな→あっ、黒ごまだ。→うーむ、甘いぞ。
ということになります。
では、濃い味の黒ごまディップに「ミニとうふドーナツ」をつけて食べてみましょう。ゼリー状のディップは見た目よりも強く浸さないと、「ミニとうふドーナツ」に移りません。リングにすくい取った黒いディップ。ようやく「ミニとうふドーナツ」らしさを味わう時です。…かぷり。
甘いぞ。
甘いですよ、これは。甘いのが好きな私でも、この甘さは腰を据えなおすくらいの力です。ディップで食べると、シュガーの甘さと相乗効果をなすのでしょうか。単体でディップをなめたとき以上に、舌には甘さが最後で尾を引くように残ります。舌で感じた甘さはドーナツを飲み込むときには、のどでもその存在を主張し、なかなか消えることはありません。ディップをつけずに食べた時、「とうふドーナツ」らしさはあまり感じられませんでしたが、ディップをつけるとその傾向はますます強まり、生地の食感は「とうふドーナツ」ですが、味の面では「『とうふドーナツ』の生地」らしいほのかな大豆の甘さは全くといっていいほど感じられなくなります。
黒ごまディップをつけて2個3個…。食べ進めるうちに胡麻の風味は慣れてくるのか、印象がどんどん薄れていくものの、甘さは消えることはありません。むしろ胡麻風味が感じられなくなる分、ますます甘さが強まっていくように感じます。
一方のメープルのディップを開けてみましょう。するとすぐにメープルシロップの香りが鼻をくすぐります。「黒ごま」と同じように指にとって味わってみます。味もメープルシロップそのものですね。でもそれだけでは終わりません。ディップを飲み込むと軽い清涼感が残ります。これはディップに含まれるオレンジのものでしょう。こちらは「黒ごま」とは違う方向性を持って作られたのか、甘みはいくらか抑えられています。
「ミニとうふドーナツ」+メープルディップで食べると、初めにオレンジが香ったかと思うと、とたんにシュガーの甘さと相俟り、メープルシロップの香りが高く立ちます。メープルシロップの香りはそのままディップを口にするよりも強く現れます。
こちらも食べ進めるうちに甘さが声を大にして主張を始めます。シュガーの甘さが口に残り、メープルシロップの少しむせるような甘さが口中に渦を巻きます。「ミニ」と冠してはおりますが、なかなかのボリュームを感じることとなるでしょう。舌の根に長く残る甘さは「黒ごま」と同じ印象を抱かせます。またディップで食べるとオレンジの香りが際立ちます。シュガーが主役のメープルシロップを香り・甘みをやや打ち消しているのかもしれません。
10個の「ミニとうふドーナツ」を食べ終わって、ほっと一息。「あー、甘かったなー」というのが第一印象です。前回の「とうふドーナツ 金ごま」もなかなか甘かったですが、今回はそれをひょいと上回る甘さです。シュガー+ディップでは少し甘すぎたのではないでしょうか。私はシュガー無しの方が良かったのではないかと思います。ディップ無しで「とうふドーナツ」自体のほのかな甘さ、ディップをつけて「黒ごま」や「メープル」が香る甘いドーナツ。甘さ一辺倒ではなく味のコントラストが付けられるほうが、より楽しめたでしょうに。
「ミニとうふドーナツ」2種類はどちらかといえば、私はさわやかな甘さのある「メープル」の方を選びますが、「とうふドーナツ」として味わうならば前回の「金ごま」「ココア」の方がおすすめできます。安いですし。逆に「とうふドーナツ」の甘さが物足りなかった方は、「ミニとうふドーナツ」を好ましく思われるでしょう。
味以外の点で、一つ気になったところを。ディップが付けにくいです。食べていくうちにいつの間にか指の先にディップが付いてしまい、べとつきます。長方形のディップのケースはもう少し浅いほうがディップが付けやすく、手にも付きにくいでしょう。また形も円形の方がケースの角にディップが残ることなく掬うことができるのですが。小型のフォークが付いていてもよかったかもしれません。
ショップを出るときショーケースからは、また「メープル」が無くなっていました。やはり出だしは上々のようです。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>syouさん
コメントありがとうございます。
今回の「ミニとうふドーナツ」は、確かにディップが前面に押し出されていましたね。ミスドでディップというのは目新しい感じがしますが、ディップにつけて食べるというのはマックのナゲットやマックディッパーを思い起こさせたり…。
メープルシロップの香りはなかなかよかったです。できればポン・デ・抹茶みたいに「とうふドーナツ」の中にはさんだタイプで食べてみたかったです。
投稿: 桜濱 | 2005.02.10 23:48
こんばんは。
詳しいレビューどうもありがとうございました。
サイズまで測ってらっしゃるとは驚きです。
確かにミニとうふドーナツは甘いですね。
僕はこちらの方が好きですけど、桜濱さんは前回のとうふドーナツを一押しされていただけに、今回のはちょっと…という感じでしょう。
前回のとうふドーナツが「生地で勝負」と言うことであれば、「ディップという発想で勝負」ということでしょうか。
実際店内のポスターでは生地がどうこうというよりも「つけて食べるが新しい」と宣伝されていますし。
ただそれを売り物にするのならなおさら、この食べにくさは改善して欲しいですね。
桜濱さんのケースを「浅く円形に」というご指摘ですが、もっともだと思います。なぜテスト検証(新商品は発売前に必ずテスト販売がなされます)の時点でこれに気づかなかったのか疑問です。
投稿: syou | 2005.02.10 02:38