2022.11.10

新幹線で駅弁を食べるフレディの仮装

 英国のロックバンドQUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーさん(以下敬称略)の仮装をすることになったら、どのような場面の彼を選べばよいでしょうか。多くの人にフレディだと認識してもらうためには、二通りあると考えています。ひとつが「白鷺ルック」「ダイヤレオタード」などのような華麗なもの。もうひとつが「ヒゲ・タンクトップ・ジーンズ・白スニーカー」の組み合わせです。
 名古屋では、9月からQUEEN結成50周年記念展が開かれています。その公式Twitterでこのような告知がされました。[※1]

―――――――――“

#QUEEN展 名古屋会場
入場料【500円】になる⁉️
ハロウィン割引を実施します👻🎃

■日時:10月30日(日)限定
■条件:「フレディの仮装」でのご来場
■特典:入場料500円
※当日入場券を会場窓口で購入される方のみ対象

当日チケット窓口にてスタッフへ「フレディの仮装です」とお声掛けください🌟”
”―――――――――

 「フレディの仮装です」と受付にて申告すると、大幅値引きの500円で入場できる! 開催直後に一度観に行き、諸々の展示に圧倒され「もう一度、いや二度は行きたいな。閉会まで月一のペースくらいで」と思っていました。そこにこのお知らせです。逃すわけにはいきません。よし、フレディになろう。
 ただし、私が中途半端に近似させた仮装をしても、フレディになるのは困難です。なぜなら私と彼とではスタイルが違い過ぎるからです。また、力一杯の仮装を目指すとスタイルのほかにも金銭面の問題が浮き彫りになります。そこで、どの点を押さえればフレディと認められるだろうか、とまず考えました。
※1……QUEEN50周年展@名古屋 9/10(土)~11/17(木)開催(@QUEEN_exh)2022年10月21日19:00(JST)のツイート

華麗なレオタード
 2011年に東京タワーで行われた「QUEEN結成40周年記念 QUEEN FOREVER展」で展示されていたダイヤレオタード。華麗だ。

●フレディの仮装と認められるラインを探る
 華麗な衣装の前期フレディの仮装は前述の条件がともに適わないので諦めざるを得ません。よって、ヒゲ以降[※2]に絞りました。ヒゲの時期のフレディを考えます。仮にタンクトップとジーンズ、スニーカーを着用したとしましょう。フレディっぽさが増すはずです。ただ、そこにヒゲが無いと、画竜点睛を欠くようにも思えます。反対に、ヒゲを付けて、それ以外は自らの普段着だったとしたら……。「フレディと呼ぶにやぶさかでない」となるような気がします。フレディの仮装のミニマルはヒゲです。
 しかし、ただ単に付けヒゲをするだけでは物足りません。また、現下の状況において、屋内の展示会場ではマスクを外せません。マスクをしたまま付けヒゲをしてフレディの仮装をしなければならないのです。これは意外と難題じゃなかろうか。だから500円まで大幅に値引きしてくれるのかな。展示会運営の方々、考えましたね。
 マスク着用のうえ付けヒゲをして受付でフレディと認められるにはどうしたらよいか……。そうだ、あの仮装をしましょう。
 QUEENがライブツアーで日本を訪れたときの写真は多く残されています。その中に「新幹線での移動中に駅弁を食べるフレディ」の写真というものがあります。ご存じないかたは、それらしい単語を並べて検索してみてください。見つかるかもしれません。この写真は、1982年のツアーで大阪から名古屋へ移動中の新幹線車内で撮られたそうです。名古屋会場での仮装にふさわしいではありませんか。

マスク対応 フォーク付きヒゲ
 これだけであの新幹線車内風の仮装ができます。

 できました。「マスク対応 新幹線で駅弁を持ってフォークをくわえるフレディ・マーキュリー仮装セット」です。最低限の素材に見えますが、それなりに工夫はしました。完成までの道のりをご紹介します。
 セット内容は、付けヒゲ、駅弁のフォーク、リストバンドです。材料は税抜100円均一のお店と手芸店で調達したものと、もとからうちにあったものとを使いました。金銭を懸けていないぶん、手作業に力を入れます。
※2……1980年以降

●口ヒゲを作るのはけっこう工夫が要る
 ヒゲは手芸店のフェルト生地から切り出します。その元になるヒゲは、なるべくご本人に近くしたいな、と思いましたので、ヒゲの形状が分かりやすいQUEENのアルバム『HOT SPACE』[※3]のカバーアートワークを参考にしました。この絵はメンバー各人を二色の陰影で表現しています。フレディのヒゲはしっかりとしたヒゲ型で描かれていてありがたい。

ヒゲ型紙
 普通紙に印刷して切り出しました。

 ヒゲ型を普通紙に印刷して、それを型紙にします。しかし、相手は黒のフェルト生地なので、そのまま型紙を当てても切りにくいことはすぐに分かりました。そこで、ヒゲのサイズに合う大きさの白のクラフトテープをフェルト生地に貼り付けました。その上に型紙を当てて、油性ペンでなぞっていきます。ぐるりとヒゲを一周したら、クラフトテープごとフェルト生地を線に沿って切っていきます。切り終わって、クラフトテープをはがせば、ヒゲの出来上がり。

クラフトテープ粘着力低下操作
 クラフトテープをそのままフェルト生地に貼りつけると、粘着力が強すぎるため剥がすときに苦労します。あらかじめタオルなどに何回かぺったんぺったんして粘着力を下げます。

 これだけでも付けヒゲとして機能しますが、もう少し加工します。ヒゲの貼り付けには文具売り場にある一般的な両面テープを使うことにしました。文房具両面テープと謂えどもなかなかの粘着力なので、貼り剥がしを繰り返していると、フェルトがけば立ってきます。そこで、一回使ったあと両面テープをはがし、洗ってからまた使えるように、裏面(マスクに貼り付ける面)にあらかじめガーゼを接着しておいてフェルトへのダメージを軽減させることにしました。

クラフトテープに型紙を乗せる
 フェルト生地にクラフトテープを貼り、その上にヒゲ型を置きます。

クラフトテープに乗せたヒゲ型の縁をなぞる
 油性ペンで型に沿ってぐるりと写すと……

クラフトテープを貼ったフェルトに型を写す
 クラフトテープに型を取れました。

フェルト生地をヒゲ型に合わせて切り抜く
 クラフトテープごとフェルト生地を切り抜きます。

フェルト製付けヒゲの出来上がり
 クラフトテープをはがすとヒゲの出来上がり。

 ヒゲの形に切ったフェルトよりも、やや小さいサイズにガーゼを切り、その片面に接着剤を塗ります。この時、下敷きにはクッキングシート、押さえにピンセットがあると便利です。ガーゼの接着剤を塗った面とフェルトのヒゲを張り合わせて乾燥させます。これもまたクッキングシートがあると便利です。板、クッキングシート、接着したいもの、クッキングシート、板、重しの順でしばらくおいておくと、あちこちべたべたにならず、綺麗にくっつきますし、クッキングシートにへばり付きもしません。クッキングシートは万能ジーニアススペシャルシートと改名してほしいくらい工作で活躍します。
※3……QUEEN10枚目のスタジオアルバム https://www.universal-music.co.jp/queen/products/uicy-79549/ (日本版公式ページ)

フェルト保護用ガーゼ
 付けヒゲよりもやや小さめのガーゼに接着剤を塗ります。

フェルト製付けヒゲとガーゼの接着
 板、クッキングシート、ガーゼ付き付けヒゲ、クッキングシートの順に乗せたところ。この上にさらに板、重しを乗せてしばらく置くと綺麗に接着できます。

●紙製フォークをプラスチックに見えるようにする
 ヒゲを乾燥させているうちに、フォークの製作に移りましょう。お店の台所雑貨売り場にあるプラスチック製、あるいは木製のフォークでも安価軽量にできるはずです。しかし、その硬さのため、人の集まるところに持ち込むと怪我のもとになる可能性があります。楽しい催しが血まみれになるのは避けなければなりません。そのため、ぺらぺらではないけれども、手で軽く力を加えるとひしゃげる強度のボール紙で作ることにしました。ただ、ボール紙をフォークの様態に切っただけではフォークの形に切ったボール紙にしか見えないので、少し手を入れます。
 参考にしている新幹線車内のフォークを写真のみから正確に計測することは素人には到底無理なので、うちにある実物のフォークを写真に撮り、フォトレタッチソフトで加工したものを型に起こすことにしました。このフォークは金属で強度がある実用のものなので、くびれの部分が細いです。このような形だと駅弁に付いてきたフォークっぽさが出ないため、くびれを太くしました。三叉の部分もぱっと見で駅弁のフォークのようだと分かるように「おかずを刺しにくいだろうなあ」と思うくらいに幅を太めにします。あとは、参考写真を見ながら、やや角ばった柄の形に近づけました。

フォーク型用フォークの撮影
 うちにあったフォークをもとにします。フォーク型を抜き出しやすいように、下に緑の色紙を置いて撮影します。

フォーク型紙の印刷
 塩梅を確かめやすいように、大きさを変えて6通りの型を印刷しました。

フォーク型紙の修正
 左から2つめの型にしました。あのフォークに近づけるために、手書きで修正します。

 結局のところ手作業なので、1ミリメートルに拘泥しても時間ばかりが掛かって、それに見合った完成品にならないでしょう。そのため、ある程度の「ぶれ」は許してもらい、切り出したあとに「どうもバランスが良くないなあ」と思うところだけをちょっとだけ削って済ませます。ただ、ボール紙の縁とフォークの溝の部分は後々の見栄えに影響しそうだったので、やすりで整えました。工作に限らず、ほんの少しの手間で大幅に良くなることがあります。

ボール紙にフォーク型を写す
 ボール紙にフォーク型を写し取ります。

ボール紙製フォークの加工1
 はさみで切って少しめくれた縁をやすりで削り、段差を取ります。

ボール紙製フォークの加工2
 フォークの叉の部分を棒やすりで削ると、ぐっと雰囲気が増してきます。ひと手間です。

 形になったボール紙フォークに塗装をします。幸いにして、うちには「バニラ」という色名の塗装スプレーがありました。これでプラスチックっぽさを上げることにします。色付きの塗装スプレーは直接紙に吹き付けると浸み込んで色の乗りが悪くなるようなので、クリアのスプレー(これもうちにありました)をさっと吹き付けて下地にします。クリアが乾いてから、バニラのスプレーを吹き、それも乾いたらプラスチックっぽいつやを出すために、もう一度クリアを吹き付けました。これら一連のスプレー吹き付けにも、下敷きにクッキングシートを使っています。塗料をはじくので、乾いた後、目的物と下敷きが張り付かず、容易に塗装したものを取り出せます。ボール紙フォークのもう一面にも同じ手順でスプレーを吹き付けたら完成。もともとうちで余っていたボール紙とは思えないプラスチックフォークっぽさではありませんか。

ボール紙製フォークの塗装1
 下地にクリアのスプレーを吹き付け。

ボール紙製フォークの塗装2
 運良くうちにあったプラスチックフォークっぽい色を吹き付け。

ボール紙製フォークの完成
 乾くと、下敷きに張り付くことなく、ぱりっと取り出せます。

ボール紙製フォークのプラスチックっぽさ
 プラスチックと見まごうばかりのつやを放つボール紙フォーク。

●ひじ用サポーターをリストバンドのサイズに縮める
 リストバンドは、あのリストバンドらしきものが売ってなかった(100円均一に近しいものはあったのですが、白一色のものがありませんでした)ので、ひじ用サポーターを流用しました。半分に折ればリストバンドに見えるはずです。

ひじ用サポーター(白)
 ひじ用だし、サポーターなので参考にした写真とけっこう違う。

ひじ用サポーターなので長い
 長いですし、

ひじ用サポーターなので縫い目も目立つ
 半分に折っても、縫っているところが目につきます。

 半分に折ってみると、重なった口の部分の縫い目がいささか気になりました。気になるところを気にならなくするためには二通りあります。他にも気になるところをたくさん作って紛らせる「木を森に隠す方式」か、気になるところを隠蔽するかです。今回は後者を採用して、縫い目を内側に折り込み、両面テープで留めることにしました。最初、縁の内側にぐるーっと一周両面テープを巻いて貼りつけたら手が入らなくなりました。伸縮部分を固めてしまったのだから当たり前だ、と自分の浅はかさ愚かさを嘆きつつ、貼りなおしました。筒の両端それぞれに二か所ずつ1センチメートル程度に切った両面テープを貼り、縁を折り込むことで縫い目がだいぶん気にならなくなりました。今度は伸縮性に問題はなく手を通せます。

サポーターの縁に両面テープを貼る
 サポーターの縁の内側に、1センチメートルくらいに切った両面テープを貼ります。

縁を隠してほぼリストバンド
 両端をくるりと内側に貼り付けて縫い目を隠し、半分に折るとほぼリストバンド。

●口ヒゲ、フォーク、リストバンドを組み合わせる
 ここまでくればヒゲの接着剤も乾いています。マスクと合わせてみましょう。ヒゲとフォークはマスキングテープで留めて、その上に両面テープを貼り付け、マスクにくっつけます。

付けヒゲの裏にボール紙フォークを貼り付ける
 ガーゼの上からマスキングテープを貼るので、はがす際にフェルトヒゲにダメージが及びにくくなっています。

付けヒゲの裏に両面テープを貼る
 マスキングテープに重ねるように両面テープを貼って、ヒゲフォークをマスクに取り付けられるようにします。

新幹線で駅弁を食べるフレディの仮装セットの完成
 完成。テーブルの上に置いているだけで、もう新幹線のフレディに見えます。

 「新幹線で駅弁を食べるフレディ・マーキュリーの仮装セット」です。そう言って差し支えないでしょう。私にしてはかなり綺麗に工作できています。よし、これで50周年記念展に乗り込もう。

●仮装してQUEEN展に乗り込んだ
会場前の立て看板
 会場の表であの有名な写真が出迎えてくれます。

 名古屋市の金山総合駅の南口を出ると、徒歩1分で会場に着きます。建物に入り、ジップロックに入れておいた仮装グッズをいそいそとマスクに貼ります。告知によるとこの格好で、「フレディの仮装です」と窓口で言えばいいはず……。
 「フレディの仮装の方はこちらに」
 なんとしたこと! チケット販売口の横に、しっかりとフレディの仮装をしたスタッフのかたが「フレディの仮装判定員」としていらっしゃいました。判定員さんに認められる必要があったのです。どうしよう。マスクからフォークをぶら下げたまま戸惑いを隠せません。しかし、ここまで来て引き返す手もないので、判定員さんに近づきました。
「こんにちは。フレディの仮装です。あの……、新幹線で駅弁を食べているフレディの仮装です」
 とあたふたとしながら、身振りを交えてお伝えすると、
「……なるほど! そこを突いてきましたか。大丈夫です。フレディです」
 無事、当日券窓口に誘われ、フレディでした、と発券の係の方にも申告して、支払いは500円でした。なんと心の広いスタッフの皆様。
 今回は、9月に観覧した際に写真が上手く撮れなかったところ(注意事項はありますが展示品の多くを撮影できるようになっています)を撮り直したり、「THE SHOW MUST 轟音」[※4]と題したシアタールームで西武球場で行われたライブ映像を再度堪能しました。何度見てもその迫力に圧倒されます。

失敗写真例
 9月の撮影失敗例。フレディが手を残して左半身を消してしまった。

 そしてついに名古屋コーナー。QUEEN展名古屋会場には特設コーナーが作られていて、名古屋に関連した写真や、QUEENの名古屋公演を報じる新聞記事などが展示されています。ここにあの写真もあるのです。

名古屋コーナー入り口
 名古屋会場特設コーナー。QUEEN名古屋訪問時の写真や雑誌・新聞記事などが展示されています。

新幹線で駅弁を食べるフレディの写真の前で、新幹線で駅弁を食べるフレディの仮装をする人間
 左上の写真の仮装です。

 これをしたかった。
 はじめは自撮りを考えていたのですが、近くで展示をご覧になっていたお客様にお願いしたところ、撮影に快く応じてくださいました。改めてこの場で御礼申し上げます。
 この後、ミュージアムショップをあれもいいなこれもいいなと眺めて、ハロウィーン仕様のQUEEN展をじゅうぶんに味わってから会場を出ました。出入口近くで付けヒゲからボール紙フォークを外していると、スタッフのおひとりが、すすすっ、と近づいて来られました。フレディ仮装判定員のかたです。
「今日は、イベントにご参加いただき、ありがとうございました。アイデアでしたね!」
 もったいないお言葉。私の姿を認めて、わざわざアイデアの部分について声を掛けて褒めてくださったことが何よりも嬉しかったです。仮装した甲斐があったなあ、としみじみ思いながら帰途につきました。
 この日は、スタッフの皆様もマスクにヒゲを付けていて、チャーミングでした。それぞれの展示を案内なさっているスタッフのかたも、ミュージアムショップのスタッフのかたも明るくてノリが良くて、ご親切だったのがとても心に残っています。
 会期は残り少なくなりましたが、最後まで、虎のように、ゴダイヴァ夫人のように、レーシングカーのように、ロケットのように、流星のように、華氏200度の熱気で突っ走ってほしいです。あと一回は行きたい。
※4……「The Show Must Go On」(邦題:ショウ・マスト・ゴー・オン)は1991年に発表された楽曲。フレディ存命時の最後(14枚目)のスタジオアルバムとなった『INNUENDO』のラストに収録されている

等身大フレディ像の一部
 こんな角度の写真を撮影できる展示もあります。

◎展示会情報
 QUEEN50周年展-DON’T STOP ME NOW-
 会期:2022年9月10日(土曜) - 2022年11月17日(木曜)
 開場時間:各日10:00 - 18:00(入場は閉館30分前まで)
 会場:金山南ビル 3階 美術館棟(旧ボストン美術館) 愛知県名古屋市中区金山町1-1-1 (Googleマップ) 金山総合駅南口を出て右側。徒歩1分。

◎参考書籍等
 『クイーン詩集 完全版』(山本安見 訳/石角隆行 解説・シンコーミュージックエンタテイメント・2019/02/14・ISBN-9784401647286) 公式ページ https://www.shinko-music.co.jp/item/pid0647289/
 『QUEEN 50周年展 -DON’T STOP ME NOW-』公式サイト https://www.queen-exhibition.jp/
 『QUEEN50周年展』公式Twitter https://twitter.com/QUEEN_exh

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2011.07.15

B'zの楽曲名でできる限り長くしりとりをして、最後に「C'mon!!!!」

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2006.06.30

今日の「山」登りは「えびピラフスペシャル」&「ココアフロート」

 「スペシャル」。それは特別。
 前々回の記事で、夏みかんが「特別のみかん」の雰囲気を持っていると書きました。「普通のもの」には無い、特別なファクターを見出すことができるのです。

 「喫茶マウンテン」のお品は全てがスペシャルのように見えますが、そのスペシャル揃いの中で、さらに「スペシャル」を冠する「山」があるのです。それが…、

えびピラフスペシャル
 どこがスペシャルなのかを探します

 「えびピラフスペシャル」です。「スペシャル」の中の「スペシャル」ピラフ。
 えびが入っているのだろうということは、当初から予想できたのですが、「スペシャル」部分が何を表しているのか、どう頭をひねっても、全く予想ができませんでした。
 
 そして驚くべきことは、実物を見ても、何がスペシャルなのかが分からないのです。ピラフにえびが入っているのは確認できました。そしてその他に、あさり、グリンピース、玉ねぎの姿があります。
 魚介類仲間として、えびとあさりが手を組んでいるのがスペシャルなのでしょうか。魚介類だけではなく、緑鮮やかなグリンピース、しゃっきりした歯ざわりの玉ねぎのみじん切りが入っているのがスペシャルのでしょうか。
 いや、グリンピース、玉ねぎが入っている他のピラフもあります。では、えび+あさりを指しているのでしょうか。それをスペシャルと呼んでいいのでしょうか。疑問を脳内に駆け巡らせつつ、ピラフをスプーンでひとすくい。

 えびとあさりはシーフードミックスのもののようです。海の香りとやや強めの塩気を感じます。ピラフの味はオーソドックスなコンソメ味、ごはん一粒一粒が油をまとい、ぱらりとしたちょうど良い炒め具合とおります。
 上に「とっちゃり」とかけられたホワイトソースが塩気を和らげて、全体をまろやかな味に仕上げているのは、計算されたものでしょうか。
 福神漬けが添えられていますが、これは他のピラフにも添えられているので、これがスペシャルの由来ということはないでしょう。

 もくもくと完食したものの結局、何がスペシャルなのかは分からずじまいでした。味はいたって普通なのですが、謎が謎を呼ぶお品です。

 食後はココアフロート。

ココアフロート
 「チョコレートフロート」もあります

 いつものことながら、絶妙な技でグラスにアイスが盛られておりました。いつものことながらフローティングはしていません。
 フロートカテゴリーには、「チョコレートフロート」もあります。「チョコレート」と「ココア」、どのような違いがあるのでしょうか…? これまた謎メニューといえるでしょう。
 以前、「チョコレートフロート」のレポートを載せたことがあります。その「チョコレートフロート」と見比べてみてください。

 そうです。盛られたアイスクリームが違うのです。「チョコレートフロート」は、バニラとチョコレートの「ハーフ&ハーフ」、「ココアフロート」はバニラアイスのみなのです。 
 ココアは若干色が薄く、味はカップ自販機のものと似ているような気がします。味も「ちょっと薄いかな」と思いましたが、飲み食べ続けるうちに、溶けたバニラアイスがココアと混じり、ちょうど良い甘さになりました。これも計算されたものなのでしょうか。

 どうやら「えびピラフスペシャル」の「スペシャル」は、ホワイトソースがかけられているからという説が有力のようです。
 他のお品にもホワイトソースがかけられているのに…、何故? 「えびピラフスペシャル」は、いつまでも謎メニューなのです。

 そして、私が制していないフロートは「オレンジフロート」のみとなりました。オレンジジュースのフロートはあまり聞きません。いや、他では全く聞いたことがありません。目にしたことがありません。危険な香りを感じております。


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2006.05.26

今日の「山」登りは「きのこチキンクリーム」&「小倉トースト」

 もうこの時期になると、「春山」初登山と思われるお客様は、かなり少なくなってきたようですが、それでもまだまだまだまだ、いつもの「山」と比べると、かなり賑やか、歓声と喚声のハイブリッドがあちこちから上がっておりました。今回目にした中で最も遠方のナンバープレートは「山口」でした。頭が下がります。

 そんな中、空腹を満たすために山を登るのは、なんだか少し気が引けますので、こそこそと普通メニュー(と思われるもの)をオーダーしました。

 まずは「きのこチキンクリーム」。これはピラフなのですが、この名だけでは本体が何であるのか、よく分かりません。が、このような場合は、ほとんどが「スパ」か「ピラフ」の二者択一となります。あまり気にするほどのことではありません。2,3回登れば慣れます。

きのこチキンクリーム
 ホワイトソースで本体の9割が隠れています

 本体が何であるかは二者択一となりますが、「何が使われているか」は非常によく分かる名前です。きのことチキンが使われていて、クリームがかけられていることは容易に想像がつきました。これは慣れるまでもないでしょう。

 ベースはやや固めに炊かれた米のコンソメ味のピラフ。米の一粒一粒がテカテカと全身に油の衣をまとっております。その輝きが目にまぶしいです。
 上にかけられたホワイトソースはいつも通りのお姿。塩気は軽く、あんまりくどくないなと思うようになったのは、私の体が昔より大人になったからでしょうか。

きのことチキン
 まいたけ、しめじ、タマネギ、鶏肉を確認

 商品名に使われている「きのこ」は、まいたけとしめじ、「チキン」は鶏のむね肉が担当しておりました。それらがタマネギのみじん切りを伴って、お米と手を取り合っていました。
 油やや大目のお米、脂の少ないむね肉、舞うほど美味しいまいたけに、「香りまつたけ」に対して、「味しめじ」という賛美の言葉で称えられるキノコ界の実力者。それらの組み合わせは絶妙な味のバランスを以って、味蕾を刺激し、コリコリというきのこ特有のはごたえをもたらし、強い香りが鼻腔を通りぬけます。他の具材の味がやや抑え目になっているぶん、きのこが生きています。

むね肉拡大
 脂分の少ないむね肉を使用。巧妙な味の計算が見受けられます

 クリーム、肉、きのこ、米。それぞれが独特の食感と味を持っているため、飽きることなく食べ進めることができました。これはオススメです。

 小腹が満たされた後、体が欲するものは、睡眠か甘味です。山中で眠ることは死を意味します。絶対に眠れません。甘味しか選択の余地が無いのです。
 東海林さだおさんがエッセイで「パンとあんこの組み合わせは、あんぱんしかない」と書いたところ、多くのお叱りのお手紙が届いたそうです。主に名古屋方面から。「『小倉トースト』を知らんのか!」と。
 私はそのお話で初めて「小倉トースト」というものの存在を知りました。そして非常に興味を持ちました。「名古屋にいったら『小倉トースト』を食べねばなるまい」。そのように思ってはおりましたが、「名古屋に行く機会なんて一生無いんだろうなぁ…」と永らく嘆息するだけの日々を過ごしておりました。それが偶然に偶然を重ね、名古屋に「行く機会」どころか、「住む機会」を得ることができました。人生とは斯くも奇なものなのです。
 名古屋に移り住んですぐに、目に付いた喫茶店で「小倉トースト」をいただきました。甘い。美味しい。長年の念願が叶った瞬間でした。
 そこで満足してしまったのでしょうか、それ以来、「小倉トースト」を口にしないまま2年以上の月日が経ちました。
 もちろん「山」のメニューに「小倉トースト」があるのは分かっておりました。しかし、「いくらなんでも、『小倉トースト』にあんこと食パンとマーガリンの組み合わせ以外はないだろうな」と後回し後回しになり、「もし、それ以外の組み合わせのものだったら、よほどすごいものに違いない」と、軽い怖れも抱き、後回し後回しになっておりました。
 そして今回、別腹に入れるための適度な甘味として、ようやく「山」の「小倉トースト」に手を出す気になりました。ちょっとばかりすごいものがやってきても、許容できるくらいの状態の腹でした。どんとこいです。

小倉トースト
 ちょっと厚いかな?

 これが「山」の小倉トーストです。パン、あんこ、マーガリンの鉄壁のトライアングルは崩れておりませんでした。正統派です。

小倉トースト拡大
 いや、かなり厚いです

 ただ、でかいだけです。
 普通は、端っこに行くほど内容量が減るものですが、この「小倉トースト」は、辺に行くほど、あんこ量が減衰してはおりますが、それでも、他のお店の通常量よりも厚いあんこの壁を有しております。さすがです。
 両面がしっかりと狐色焼かれた、四つ切食パンを三角形に4分割、それぞれ厚さは55mm、そのうちあんこの幅は30mm(最大部)、これまた、東海林さだおさんが書いていらっしゃることですが、内側に塗られたマーガリンが、あんこの水分がパン内に侵入することを防いでいるとともに、塩気によって、あんこの甘さを引き立てる役割を果たしています。先人の知恵は素晴らしいですね。

小倉トースト・内側
 右のあんこを引き立てる、左のマーガリンの素晴らしい働き

 あんこは他のお品にも使われているものと同じ、ねっとりとしたつぶあんで、しっかりとした甘さ。パンは耳付きでした。
 意外性はあまりありませんが、これもオススメです。昼下がり、軽く甘いものをつまみたいときにぴったりでしょう。


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2006.04.28

今日の「山」登りは「アボガド&えびクリーム」&「アメリカンコーヒー」

 「甘い言葉には罠がある」

 この春、名古屋市千種区、昭和区あたりの学校に入学された学生さんの一部は、この言葉を身をもって感じたのではないでしょうか。

 「甘い言葉には甘さを以って」

 正確には、このような言葉になるでしょうか。

 「新歓するから来なよ。いやいや、酒は無しだよ。普通の食事会みたいなものだから。いやいや、会費はいらないよ。僕たちのおごりさ」

 甘口スパ。私は美味しいと思うのですが。

 愕然とする新入生の方々がいらっしゃる中、私たちは、普通に食事と喫茶をするのです。

 お供してくださったのは、いつもの通り、ささのってぃ氏。コーヒー好きの彼のオーダーは「アメリカンコーヒー」。この勢いで喫茶をすれば、近いうちにマウンテンのコーヒー部門をコンプリートしてくれそうです。

アメリカンコーヒー
 濃いアメリカンコーヒー

 「アメリカンコーヒー」とは言うものの、他の喫茶店の普通のブレンドコーヒーと比すると、若干濃い目のようです。メニューでは、

 ストロングコーヒー … 300
 ソフトコーヒー … 300
 アメリカンコーヒー … 350
 ミルクコーヒー … 350
 ウインナーコーヒー … 350
    ・
    ・
    ・

と、なっていますので、「山」には「アメリカンコーヒー」よりも低い「コーヒー山」は存在しないと思われます。

 私の注文した「アボガド&えびクリーム」は、本体の名前は書かれていませんが、スパゲッティーです。それさえ分かっていれば、どのような山かは、容易に想像が付きます。アボガド(アボ『カ』ドが正式名称ですが、あえてママで書きます)、えび、クリームが入っているのでしょう。

アボガド&えびクリーム
 黄緑がかっている


 やはり、想像通りのものでした。上記の食材に、タマネギ、ニンニクが力を貸しています。そして、

アボガド&えびクリーム・アップ
 肩まで浸かってます

 油も力を貸しています。澱んでいます。

 ベースはコンソメ味、それにホワイトソースが混ぜ込まれていますね。やや塩気が強いのは、ホワイトソースのものなのか、えびから出たものなのか。それに、やや青くささを感じます。これはアボガドのものでしょう。
 その主役・アボガドは、

ごろごろアボガド
 大きいと得した気分になりますね

 「ごろごろ」と出てきます。実にダイナミックなカットですね。

アボガド・アップ
 何という切り方でしょうか?

 ねっとりとした舌触りのアボガドは、柔らかく茹でられたスパにまとわり付いたホワイトクリームと同化して、どこまでがアボガドで、どこからがクリームで、いつまでがスパなのか、境界が曖昧になっています。これは、無理に分別はせずに、「アボガドクリームスパ」という一つの存在と考えたほうがいいのかもしれません。それに、えびやタマネギやニンニクが加わっているとしましょう。

 「ごりっ」

 歯が、火の通っていないニンニクに遭遇しました。強い刺激と香りが口腔を包みます。精力が尽きそうです。いや、付きそうです。

 15分ほどで、登頂に成功しました。

黄緑の油池
 相変わらずの池っぷり

 ささのってぃ氏が、私の皿を見て言いました。

 「オイルマネーを手にしたね」

 でも、大富豪の気分には、それほどなれませんでした。

 アボガドの舌触りと香りが苦手でなければ、それほど困難な山ではないでしょう。

 おっとと、追記です。「サラミのナポリタン」(スパゲッティー)がメニューから消されていました。2005年8月改訂版(最新版)で新規加入したものなのに、もう消されるなんて…。


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2006.03.20

今日の「山」登りは「おしるこスパ」リベンジ&「野菜トースト」

 野球の世界一決定戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が行われています。2006年3月16日(日本時間)、2次リーグ・韓国対日本戦。日本は韓国に1−2で敗れました。この敗戦によって、決勝トーナメントはほぼ絶望となりました。
 試合終了後、日本代表のイチロー選手は記者団に「この試合の感想は?」と訊かれ、激しい感情を抑え、搾り出すような声で答えたのです。

 「僕の野球人生でもっとも屈辱的な日です」

 しかし、運命はどのように動くか分かりません。
 優勝候補だったアメリカがメキシコに2点を与えて敗戦し、失点率の差から日本がまさかの決勝トーナメント進出。
 そして、日本は今回のWBCにおいては3度目となる今日の対戦で、韓国に6−0の大差を付けて決勝進出をものにしたのです。

 屈辱を感じていたのは、イチロー選手だけではなかったはずです。選手の誰もが同じ想いだったはずです。ただ、イチロー選手以外はそれを口にしませんでした。いや、むしろ普通に考えるならば、逆でなければならないのです。他の選手が感情を露にし「屈辱的」と言い、イチロー選手は寡黙に、冷静に試合を振り返る…。
 あの「イチロー選手」が「屈辱的」と言った。そのことは、チームメイトに計り知れない影響を与えたことは想像に難くありません。今日の試合は、なにかしら鬼気迫るものがありました。

 「3度目の負けは絶対に許されない」と。

 あの敗戦がなければ、イチロー選手のあの一言なければ、今日の日本チームの力強いプレイは観ることができなかったでしょう。

――――――――――

 私も昨年の8月、夏真っ盛りの只中で、一人ごちたのです。

 「屈辱的だ…」

 自分が信じられませんでした。このようなことがあってよいものなのか。いや、断じてそれはあってはならない。「それ」とは、

 「喫茶マウンテンの『おしるこスパ』を残してしまった」

 「山」で食事を残すことは、さらに屈辱的な言葉で言い換えられるのです。

 「『おしるこスパ』で遭難した

 「遭難」…。それは「登山者」にとって最も忌むべきことです。自らの意思で甘口に登っておきながら、それを中途で断念をする。それは恥以外のなにものでもないのです。しかも「甘党」を自認している私です。「屈辱」「羞恥」「自責」…、言い知れないほどの様々な念に圧しつぶされそうになりました。

 「この屈辱は絶対に晴らさねばならない」

 以降、「山」に登るたびに、メニューの「甘口」欄の「おしるこスパ」の文字に目をやり、

 「いまに制してあげるわ」

と、臥薪嘗胆の思いでおりました。

 そして、ついにその時が来たのです。
 3月初め。初登山から1年が過ぎようとしている日でした。

 「悔いを残したまま、2年目を迎えてはならない」

 そして、初回に同行してくださった友人ささのってぃ氏に「山、登るよ」と再度同行をお願いいたしました。ささのってぃ氏にとっては、災難以外の何ものでもありません。しかし彼は快く同行に応じてくださいました。

 「甘口などには登らないからね」

と、きっちり予防線を張って。

――――――――――

 19:30。店内は3,4組ほどの学生風登山パーティ。人数はそこそこ多いですが、待たねばならないほどではありません。
 隅の席に就くと、店員さんがメニューを持ってきてくださいました。私は初めから決めていた「おしるこスパ」、ささのってぃ氏は「シーフードトマトピラフ」をオーダー。トマト嫌いの彼にとっては、チャレンジャーシップ溢れる、アグレッシブなオーダーです。

これで食べろ
 やはりスパの食器とは思えない

 前回の遭難には、2つの要因がありました。
 1.作戦を立てすぎた。
 2.おしるこでは無い「何か」の味がした。

 「『山登り』に作戦を立ててはならない」。それが前回の遭難で得た教訓です。「『山登りには無心」で挑まなければならなかったのです。
 後者は、私の力ではどうしようもありませんでした。調理過程で何かが起こったとしか思えないからです。「おしるこ」に「めんたいこ」の味が加わっていたのです。詳しくは前回の「おしるこスパ」の登山記録をご覧くださいませ。

 入山から20分後。7ヶ月前、私を苦しめた土鍋が運ばれてきました。相変わらず、何故だか泡立っています。スパとおしるこが私にはうかがい知ることのできない反応をした果てなのでしょう。正体不明の泡を含めての「おしるこスパ」なのです。

泡立つおしるこ
 泡立つおしるこ

 前回、めんたい味で私を苦しめてくれたおしるこの味はどうなっているでしょうか。まずは、おしるこをひとすすり。

 …うん。大丈夫だ! 普通のおしるこの味だ!

 いけそうです。これならばいけそうです。さて、無心で食べ続けますよ。

おしるこスパ全容
 おしるこスパ・全容

 「おしるこスパ」の形態は、前回となにも変わっていません。小型の土鍋におしるこが張られ、下から、太麺のスパ・切り餅3個・あんこ玉の3層構造となっています。あんこ玉は直径55mm、冷たいまま放り込まれたため、表面はぬるく、芯は冷えた状態になっています。このあんこ玉は食べ進めるにつれてしるこに溶けていくこととなります。

あんこ玉計測
 5センチのあんこ玉

 切り餅は70mm×35mm×15mm。表面は焼いていないため、運ばれたときからかなり溶けてしまっています。とろけた餅はじつによく伸びますが、ねっとりねっとりと噛み続けなければならず、あごは疲れ、満腹中枢への刺激は強いです。さらには餅の淡白な甘さとあいまって、これはかなりの苦労を与えてくれます。

もち+スパ
 もち(+自然とくっついてくるスパ)

 おしるこスパの辛さは2点。汁気が多いこと。そして、炭水化物の甘さが続くことです。さすがに8合目まで登ったところで飽きが来ました。「味を変えねばいけないことになる」と判断した私は、追加注文をいたしました。

おしるこスパ・8合目
 おしるこスパ・8合目

 「野菜トースト、お願いします」

野菜トースト
 でかいけど普通です

 「山」のトーストは四つ切食パンが使用されていてボリュームたっぷりです。両面に絶妙なキツネ色の焼き目が付けられ、間にはマヨネーズをベースにトマト、タマネギ、キュウリのスライスが挟み込まれています。この内容物から想像されるとおりの、至って普通の味付けでした。口休めにはもってこいです。

中身も普通
 野菜嫌いでなければ、あっさり登れます

 追加注文した野菜トーストは実に効果的で、残り2合をすいすいと食べ進めることができました。

 そして、夏の屈辱を晴らす瞬間が来たのです。

おしるこスパ・単独登頂成功
 屈辱を雪ぐ

 登頂までは約20分。やはり甘口スパの中では食べにくい部類に入るでしょう。「ダブル」量を考えると気が遠くなりそうです。

 ささのってぃ氏は早々と「シーフードトマトピラフ」を平らげていました。
 シーフードトマトピラフはトマトソースが混ぜられたピラフがベースとなり、シーフードミックスが混ぜ込まれています。原型のトマトが苦手なささのってぃ氏も「これなら大丈夫」とあっさりと完食です。

シーフードトマトピラフ
 おしるこスパと、あまりに異なる。

 これで、唯一心に引っかかっていた「山」のトラウマが、完全に解消されました。
 すっきりしたこの心をもって、2年目もガシガシ食べ続けることにいたしますよ!


野菜トースト・登頂成功
 もちろん「野菜トースト」も登頂いたしましたよ


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2006.02.03

今日の「山」登りは「マカライスハンバーグ」&「エメラルドカクテル」

 通常、年度末と言えば、3月末です。しかし、大学機関においては今が年度末。実際の事務手続きでは3月末ということになるのでしょうが、学生にとっては今が年度末となります。
 年度末。これから長い春休みが始まるのです。「これから楽しい春休み〜。宿題もない春休み〜」と小学生の皆様は思われることでしょう。しかし、大学生にまでなってしまうとそうはいきません。長〜い、春休みの前には、長〜いレポートを書くようにという命が下るのです。

 疲れました。まだ終わっていませんが、疲れました。芯が抜けたようになっています。ここいらで一つ、どしんと体の内部にエネルギーを与えたいです。何か力の沸くような…。遥かなる大地のような…。母なる山のような…。山のような…。山…。

「山」看板
 「マ」が隠れてしまっているし

 久しぶりに「山」登りです。でも、山にたどり着いた時点で、もうへとへとになりました。写真の中心もずれてしまっています。

 今日は、急に思いついた「ふと『山』登り」なので、何をオーダーするのか、なにも決めていません。店員さんから渡されたメニューを眺めます。何か力のつくようなモノをっと…。

 あっ、なんということをっ!

ケされたヤツら
 スパからの抹消

 スパゲッティーカテゴリーから、二つの品がメニューから抹消されていました。以前メモを取っておいたものと見比べたところ、トマトソースの「サボテンスパ」、その他の「納豆サボテン玉子とじ」が消されたことが判明しました。

 嗚呼!なんということでしょう!! 「山」から「サボテン」が消されるなんて!

 これは、季節の問題なのか、味の問題なのか、入手経路の問題なのか…。どの可能性もありえます。
 「納豆サボテン玉子とじ」は近いうちに登ろうと思っていただけに、残念でなりません。何とか復活するよう、皆様お祈りいたしましょう。

 削除メニューを気にしながらも、どしんと一撃強烈なものを腹に叩き込みたいという思いを抑えることができません。強烈な一撃ということから、肉方面に向かうことが決議されました。さて、肉っぽいもの。肉っぽいもの…と。

 ハンバーグ

 子供から大人まで人気の高いこのメニュー。もちろん「山」でもいただくことができます。以前いただいたモノでは「大人のお子様ランチ」に使われておりました。ただ、「てこね」とか「牛ミンチと豚ミンチの配合を厳選した」とか「パン粉は特別になじみのパン屋から譲り受けている」という風合いは、あまり感じることができませんでした。むしろ、「温めてから、袋から出す際に火傷に気をつけました」という感じのものです。それはそれで、たまに食べるとやたらと美味しく思われるものです。
 それで、ハンバーグ入りでお腹に一発叩き込めそうなモノとの基準で選んだのは、

 「マカライスハンバーグ、お願いします」

 良く分かったのは、「ハンバーグが入っているらしい」ということだけです。それ以外が見当が付きません。察しの早い方は、他に入っているものが、何かがお分かりになられたはずです。しかし、私は気付きませんでした。「『摩訶不思議』なものが入っているのかも。ワクワクするな」と待ち構えたのです。脳の働きが鈍っていると、余計なワクワク感を味わえるのが、お得ですよ。

 15分後、やってきた「摩訶不思議」な「ライス+ハンバーグ」は、

マカライスハンバーグ
 「マカ」は不思議じゃなかった

 あぁ、そうか…。マカロニのマカなのね。推して知るべきことでした。ワクワク感は山のかなたを越えていきました。

 「マカライスハンバーグ」の基本は、既成のミックスベジタブル(コーン、ニンジン、グリーンピース)とたまねぎのみじん切りが入った塩気がやや強めのコンソメ味ピラフ。たまねぎはややしゃりしゃり感を残して炒められています。
 そうそう、たまねぎと言えば、今回は珍しく「芯」部分が入っていませんでした。芯入りに慣れつつあっただけに、なんだか物足りなかったですわ。

 「マカ」担当の「マカロニ」には、貝殻の形のコンキリエと、ねじられ、溝が入れられているチェレンターニが使われています。その形ゆえに、ソースがよく絡みますよ。このショートパスタは茹でられた後に、ごはんと一緒に炒められております。

 上に載せられた3つのハンバーグは、直径約55mm、厚さ約15mmのミニサイズ。これは「大人のお子様ランチ」に使われているものと同じでしょう。冷凍食品、もしくは真空パック式のモノの食感で、練り物っぽく、肉がみっしりと寄せ集ったような食感です。

 さらにその上には、赤茶色のトマトソースが半掛けされています。これにはわずかながらもひき肉が入っているようで、ハンバーグとはまた違う肉っぽさに感涙です。
 ただ、このソース、やけに味が濃密です。ピラフの味の濃さを上回るほどの力強さ。この味は肉汁のものでしょうか。初めのこの強烈な一撃(これぞ今回求めていたものです)があり、そのあとを追いかけてトマトの香りがたち現れます。それゆえ口に入れた瞬間はトマトソースなのかなんなのか分からなかったくらいです。

スプーン版マカライスハンバーグ
 スプーンの上での「マカライスハンバーグ」状態

 これは「救いメニュー」どころか「旨いメニュー」に入れてもいいくらいでしょう。ただ、コショウがかなり効いていて、次第に舌がぴりぴりしてきます。でも、それも許容範囲内。辛口に入るほどではありません。それを見越してか、福神漬けが添えられています。なんといい口休めでしょう。サービスが行き届いています。

 完食後、消えたメニューに思いをはせながら、店内をぼんやりと見ておりますと、ある変化に気付きました。
 マウンテンにはメニュー外メニューとでも言えるものがあります。おそらく、試作段階にあるものなのでしょうが、普通のメニュー表に載っていないモノが、店内の張り紙やポップに書かれています。
 そのポップが変わっていたのです!それがこちら。

エメラルドカクテル・ポップ
 縁に細かく「エメラルドエメラルド…」と書かれてある

 カクテル【cocktail アメリカ】
 (1)ウィスキー・ブランデー・ジン・ウォッカ・リキュールなどの洋酒をベースとし、シロップ・果汁・炭酸飲料・香料・氷片などを混合した混成酒。アメリカから始まった。混合酒。コクテール。
 (2)いろいろなものを混ぜあわせたもの。「フルーツ・―」「―光線」
 (岩波書店『広辞苑 第五版』より)

 「エメラルドカクテル」…。緑色だろうなということしか想像が付きません。ドリンクメニューらしいということは分かりますが、「(ノンアルコール)」と書いてあることで、(1)には該当しません。それなら(2)の意味のモノなのでしょうか…。

 「いろいろなものを混ぜあわせたもの。」

 …意を決して、お水のお代わりを持ってきてくださった店員さんに注文します。

 「エメラルドカクテルを追加でお願いします」
 「エメラルドカクテル…ですか?…はい、分かりました」

 なんだか、不審感が伝わってきました。私はポップの幻をみていたのでしょうか。すると、オーダーを受けた店員さんの声が、厨房の方から聞こえてきました。

 「新しいのできたんですね」

 店員さんもご存じなかったの!? すごい新しすぎるほど新しい品ではないですか。注文して良かったです。

 数分後、「エメラルドカクテル」の到着です。「シャカシャカ」という音は一切聞こえてきませんでした。(2)の可能性が高くなってきました。

エメラルドカクテル
 緑色は当たっていた

 上と下で色が違っています。なんだか綺麗。ミスドで期間限定販売されいた「フルーツティ」のようです。あれは美味しかったなー。期待が高まります。
 それでは、まず、上の色の薄い部分から行ってみましょう。

 うっ!

 イメージと違うっ!

 これ「ニッキ」の味がする!「ニッキ水」だ、コレ!
 それじゃ、下の色の濃い部分は?

 うっ!

 あま〜いっ!そして、薬の味がするっ!しかもニッキのそこはかとない香りもにじんでしまっていますよ。
 これの飲み方は、最初に思いっきり「ガシャガシャガシャガシャッ!!」と勢いよくかき混ぜて、味の均一を図るとともに、氷で味を薄めるのが正しいようです。「カクテル」はセルフサービスだったのですね。
 しっかりと混ぜ合わされた「エメラルドカクテル」は、ニッキのきつさが薄れ、甘味もほどほど、いくらか飲みやすくなります。「いくらか」ですが。
 ミレーフライが救いになります。

 お会計を済ませようと、レジに向かうと、

黒酢ジュース
 話題の黒酢ジュース 350円

 「のみやすくてからだに(・∀・)イイ!!」って、書いています。「マウンテン」がお客さん「体の良さ」を気に掛けてくださるようになったみたいです。

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2006.01.10

今年の「山」登り初めは「甘口抹茶小倉スパ・ダブル」など

 1月7日は七草です。七種類の若草をお粥に入れて、味の濃いおせち料理や、宴の酒で疲れた胃腸に安らぎを与える日です。

 その七草の日に、あるオフ会が開かれました。「登山会」という名の。

 「奇食の館」のリムさん主催の「登山会」ももう3回目。今回の趣旨は冬季限定(正確には夏季を除いた季節限定)の「甘口いちごスパ」をみんなで頂こうというものです。

 私は当日、都合により15分ほど遅刻して入山しました。既に参加者の皆様は、注文の品を決めていらっしゃいました。ほとんどの方が趣旨通りの「甘口いちごスパ」です。

マウンテンのお正月
 鏡餅の左にある子供は何?

 さて、ここが悩みどころです。先月末、登り納めと、黒帯記念に「甘口いちごスパ・ダブル」いただいていたため、連続して同じスパを食べるのはためらわれました。
 よし、それなら…、

 「甘口抹茶小倉スパ。ダブルでお願いします」

 「甘口いちごスパ」のピンクと「甘口抹茶小倉スパ」の緑のコントラストでテーブルを鮮やかに彩り、また、通常量とダブルの比較をしたかったためです。

 「甘口いちごスパ」×8、「おしるこスパ」×1、「甘口バナナスパ」×1、「甘口抹茶小倉スパ・ダブル」×1と、各々が甘口スパを一品ずつ頼むという、チャレンジ精神溢れすぎているオーダーとなりました。さすが「奇食の館」愛読者の皆さん、何が必要かよく分かっていらっしゃいます。

 厨房にオーダーを通す店員さん。

 「〜〜〜、抹茶・ダブル、ワン。

 なぜか、私の注文だけをやたらと大きな声で通されたのです。拡がる失笑。恥ずかしい。

 オーダーから約15分後、次々とピンクの山が運ばれてきました。いままで見たこと無い光景のできあがりです。

甘口いちごスパ×4
 こんな絵、初めて見た

 さすが皆さん、何が必要か良く分かっていらっしゃいます。
 全部で8皿の「甘口いちごスパ」は豪華絢爛。初春にふさわしい艶やかさです。

 そして、最初の「甘口いちごスパ」が運ばれてから、さらに10分後、見覚えのある「取っ手付き大皿」が現れました。

甘口抹茶小倉スパ・ダブル
 飾りが多いよ

 おーっ、通常量の「甘口抹茶小倉スパ」よりも飾りつけが豪華ではありませんか! 以前いただいた「甘口抹茶小倉スパ」のトッピングは、「小倉あん、生クリーム、缶詰の黄桃とチェリー」でしたが、「ダブル」ではさらに「キウイ、いちご、パイン」が加わっています。「山」のフルーツが総動員されています。
 それら豪華なトッピングの下には、懐かしくも毒々しい緑のスパが、どしりと腰を下ろしています。七草粥の緑色とは大違いです。

 胃腸を休める日に、それとは逆ベクトルのものが目の前に置かれています。…「ショック療法」と考えることにいたしました。…ん? いや、違うぞっ!

 「チェリー、いちご、黄桃、キウイ、パイン、小倉あん、生クリーム」!

 なんとしたことでしょう。スパの上には7種類のものが乗っているではありませんか。これは「ショック療法」などではなく、「マウンテン風・七草」と見るべきだったのです。

 それにしても、でかい。前回の「甘口いちごスパ・ダブル」よりも、迫力があります。暗色系だからでしょうか。地に足がしっかりとついているような様子です。

他の甘口スパとの比較
 遠近法ではないです

 さて、久々の「甘口抹茶小倉スパ」です。しっかりじっくり味わいましょう。
 このスパは、小倉あんの対策に誤りがあると、非常に登りにくくなります。あんをスパに絡めてしまうと、逃げ道が無くなる甘さとなるのです。あんことスパを別々に食べると「いくらか」楽に登り進めることができます。
 生クリームをまとったスパは、抹茶飲料(抹茶オレや抹茶豆乳)のようなクリーミーさ。甘さの中にほんの少しの渋みと苦味。やっぱり美味しいです。さすが看板商品ですね。
 5合目ほどまで登ったところで、体の変化に気付きました。異常に暑いのです。汗が二筋三筋、背中を流れ落ちる。

 来たっ。「糖」が来たぞっ。

 血糖値の急激な上昇のせいでしょう。暑くてたまりません。セーターを一枚脱いで、腕まくり。「ふっ」と一息ついて、残りの山を登り続けます。

 そして、登山開始から17分後。

甘口抹茶小倉スパ・ダブル単独登頂成功
 さすがにおなかいっぱい

 単独登頂成功しました。今回は油が少なく、また舌休めのフルーツの種類が多かったため、当初予想していたよりは登りやすかったです。ただ、大量の小倉あん攻めには、やや手こずりました。掘っても掘っても、小倉あんの壁が無くならないんですもの。

 そして、参加者の皆様、それぞれ完食です。さすが皆さん、何が必要かよく分かっていらっしゃいます。

 この様子を見て、リムさんは一品追加注文されました。「マンゴスペシャル(辛口)」。
 数分後届いた太陽のごとき、目にまばゆい氷山を、私も一口いただきました。

 「コレ甘いですよ。ぜんぜん辛くな……いっ!」

 痛い。舌が痛い。咽頭が痛い。喉頭が痛い。あちこち痛いっ。わざわざ「(辛口)」と注記するだけの威力を見せてくれました。甘い香りには罠が潜んでいたのです。もう食べたくありません。私は甘口専門で行くことにいたしますわ。

 その「マンゴスペシャル(辛口)」も勇士たちに制せられ、下山の時となりました。
 マウンテンは一括会計のルールがあるために、代表のリムさんに、それぞれが食べた分だけの料金をお渡しし、糖で暑くなった体にとって、心地良い冷気に充ちている入山口で解散となりました。

 リムさん他数人が、今日の感想を話し合いながら、最寄のいりなか駅までのゆるい下り坂を歩いていると、マウンテンの店員さんでもある、参加者のお一人の携帯電話が鳴り響いたのです。

 「はい、はい、…えっ!」

 笑激の結末はコチラで。まさかあんなオチを用意していたとは。さすがリムさん。


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2005.12.31

今年の「山」登り納めは「甘口いちごスパ」&「甘口いちごスパ」

 先日もお知らせ致しましたが、25日に、めでたくもデイリーポータルZ「コネタ道場」で黒帯を頂くことができました。この嬉しさだけで、ごはん3杯は食べられそうです。
 でも、ただごはんを食べるだけでは、味気ありません。「もっと、派手にパーッと、お祝い食事をしなければ」と思い、料理店に向かいました。

 その料理店の名前は「喫茶マウンテン」。

 喫茶と名乗っていらっしゃいますが、私が見る限り、そんな領域を超えています。こちらでお茶だけを飲んでいる方など拝見したことがございません。まごうことなき「料理店」です。注文できる品数が300近くあるなんて、これぞ、まさしき「注文の多い料理店」。

 12月29日。この日はマウンテンの年内最終営業日。誰そ彼時の午後5時半。

 「さぞかし混んでいるのでしょうね」と思いきや、駐車場は車2台、自転車は無し。当然、入山口の行列も無しです。近隣の大学は冬休みとなり、帰省している人が多いからでしょうか。するりと山に入ることができました。

 山中には、カップルが2組のみ。ゆるりとした曲が流れるだけです。よく見かける絶叫・悶絶、フラッシュピカピカといった光景は今日はありません。とても静かで穏やかな雰囲気に満ちております。

 山中の雰囲気がどのようなものであろうと、加納マスターはいつもと全く変わらぬご様子。
 2組のお客様には料理が全て届けられているようで、調理はお休み中。店員さんと二言三言、雑談を交わされていらっしゃいました。

 店員さんがお水とメニューを持って来てくださいます。

 しかし、私はメニューを渡してくださる店員さんを制して、マウンテンを知ったときから持ち続けた、夢のオーダーをいたしました。

 「甘口いちごスパ。ダブルでお願いいたします」

 「ダブル」。全てが倍になるオーダー方式。量も値段もです。普通は大盛りになると、単品二つよりも安くなるものなのですが、「山」では、そのような常識が通用しないことにはもう慣れっこでございます。

 オーダーを受けた店員さんは甘口スパのダブルが初めてらしく、イチゴの数量などのレクチャーを受けていらっしゃいました。その間、マスターの雑談が続きます。

 「おまえ、免許持っとるのか? 俺は免許にゃーで。160キロオーバーで免許無くなってなー。旗振って俺のこと応援しとるかと思ったら、違っとった。わはははっ」

 …もちろん、冗談でしょう。

 ダブルなので、かなりの待ち時間を覚悟しておりましたが、10分そこいらで「赤い山」が完成した様子。

 「これ食べれば、絶対、来年いいことあるぞ」

 マスターのこの確信に満ち溢れた、力強いお言葉と共に運ばれてきたものが…、

甘口いちごスパ・ダブル
 前のと比べてみてください

 フライパン、いや土鍋のような型の、ダブル特製の皿と思しきものに盛られた赤と緑のファンタジー。

 なんと鮮やか。なんと豪華。…美しい!

 ケーキのおかげで黒帯をいただけた記念にふさわしいビジュアルです。
 内径約25cm、高さ6cmの厚手のお皿に、トッピングとして、イチゴが5個にキウイが11枚、生クリームどっさり。標高(テーブルから、一番高い位置に盛られたイチゴまで)約10cmという、すばらしい大盛りっぷりです。頭の中で『威風堂々』が流れ始めます。

ダブル皿の取っ手
 この部分をどう使えと?

 それでは、入山いたしましょう。まずは、目をさすような鮮やかさを放つスパを一すくい。

サンプル風に
 いちごスパの料理サンプルは合羽橋でも置いてないでしょうね

 いただきます。…うん、うん。この甘さ。久しぶりですわ。ほぼ半年振りの「甘口いちごスパ」登りです。甘さ控えない生クリームとイチゴシロップらしきものが練りこまれているであろうスパを絡めると、えもいわれぬ芳醇な甘さが広がります。
 スパをするする、たまにイチゴをぱくり。このイチゴがまた良いのです。イチゴ味スパは主に甘さ担当、本物イチゴは酸味担当。きちんと役割分担がされているのです。
 あつあつのスパに乗せられたキウイは、イチゴとはまた方向性の違う酸味と甘みを提供してくれるのです。あまりでしゃばり過ぎないシャッキリとした歯ごたえも、アクセントとして絶妙。

 やっぱり、「甘口いちごスパ」最高ですわっ!

と、思いながらスパをすくい上げると、麺と一緒に炒められて、煮えきって溶けかかっているイチゴの半身が絡んできました。トッピングのイチゴはへたがきちんと取られているのですが、炒めイチゴの方はへたはそのままで、半分にカットされています。

 うん、うん、そうそう。これが食べにくいのよねー。

と、難点までが懐かしく愛おしく感じられます。この炒めイチゴは4個分入っておりました。

 息つく間もなく、するりするり、かじかじ、ぱくぱく。その間に他のお客さんは、皆様下山されました。
 私はさらに、もくもくと食べ進めていると、油まみれの底が見えてきました。湖のように、皿全体に広がるこの油面には、己の影が映っております。

 その影を見つめながら、この一年をしみじみと振り返ります。
 もともと、ミスド東ハトなどの甘いものの感想とコネタ記事でほそぼそと始めたブログが、お正月あたりから、ようやく軌道に乗り始めました。
 今年は大好きなミスドの福箱から始まり、デイリーポータルZ「コネタ道場」への投稿へと。コネタとミスドを織り交ぜながら、細々と記事を書き続けていた春弥生、運命的な邂逅が。そうです、ここ「喫茶マウンテン」です。

 一発でとりこになりました。

 なんという発想力。なんという挑戦心。なんというサービス精神。

 マウンテンは好き嫌いがはっきりと分かれるお店でしょう。「こんなゲテモノを売りにしているなんて、怪しからん店だ」と思われる方もいらっしゃると思います。

 しかし、私はそうは思いません。全ては上の3つに集約されています。他で食べられないものを食べてほしい。加納マスターのその思いが熱く伝わってくるのです。量が多いのも、おなかを空かせた、若い学生さんにおなか一杯になってほしいがため。「残させるために作っている」わけではないと確信しております。

 繰り返し「山」に通う「登山者」達の多くは、マスターのその精神に惹かれるところが大きいのでしょう。
 もちろん、私もその一人です。甘いものが大好き。食べるのが好き。それだけで「山」に登っているとは思えないのです。居並ぶ謎のサボテン、薄暗い独特の雰囲気を持つ「山中」、マスターのお人柄等々…。「山」にまつわる全ての要素に惹きつけられるのです。
 私は、来年も、再来年も、またその次の年も、ずっとずっと登り続けたいです。使い古された言葉ではありますが、「そこに『山』があるから」。

甘口いちごスパ・登頂成功
 ふいーっ、満腹、満腹

 16分間の至福の時をぬけて、下山の時となりました。マスターがお声をかけてくださいました。

 「ごちそうさまでした」
 「おー、兄ちゃん、甘いもの好きか?」
 「はいっ、甘いもの大好きですー」
 「そうか。そうだと思ったー。兄ちゃん『甘い顔』しとるからなぁ」

 『甘い顔』? 乾燥肌で少々粉っぽくなり、粉砂糖が付いているように見えるからでしょうか。…いやいや、『甘いマスク』の意味で取ることにしましょう。

 「どうも、ありがとうございますー。今年はお世話になりました。来年もお伺いしますので、よろしくお願いいたします」
 「こちらこそ、どうもありがとうございます。来年は4日から営業なんで。じゃ、良いお年をっ」

 おなかは甘さでいっぱい。心の中は、幸せと、嬉しさと、楽しさでいっぱい。がらんとした駐車場を自転車でゆっくりと走り抜けたのでした。

 最高の黒帯祝いができましたわ。

――――――――――

 この記事を以て、本年最後の更新といたします。この一年、約6万人もの方々に御覧いただきました。本当にありがとうございました。とっても励みになりました。感謝、感謝です。なにとぞ来年もよろしくお願いいたします。

 それでは、みなさま、良いお年をお迎えくださいますよう、お祈り申し上げますっ!


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2005.12.24

今日の「山」登りは「小倉丼」

 ふと、でした。

 ふと、思い立ったのでした。

 「寒くなったし、甘くて温かいものを食べたいな」と、ふと。

 甘くて、温かくて、美味しいものは、それこそ山ほどあります。山ほど…。「山」にあるのか。そう「山」にあるではありませんか。

 以前、私は「おしるこスパ」で初敗北を喫しました。あれは屈辱でした。甘党が甘いものを残すなんて。あれから対策はいくども立てました。もう負ける気がしません。
 さぁ、「おしるこスパ」をいただきますよ。

 平日の18時。お客は2組。一組はカップル、もう一組は男子学生らしき4人パーティ。ありがちな「山」の風景です。

 さて、もうメニューをお借りするつもりもありませんが、とりあえず受け取ると…、

 ふと、でした。

 ふと、目に付いたのでした。

 「???」の欄が。

 この夏登場した「???」カテゴリー。今まで「大人のお子様ランチ」「たらい氷」の2つの山の登頂を成功させました。しかし、最も早く正体が判明した「???丼」こと「小倉丼」だけは登るのを控えておりました。

 何ゆえかと申しますと、見たのです、壮絶な現場を。
 「奇食の館」リムさん主催の第一回登山会でした。リムさんは、まだそのころは正式メニュー入りしていなかった「小倉丼」を召し上がったのです。

 言葉少なげに、あんこをほおばり、何かを耐えていらっしゃる様子でした。

 歴戦の猛者であるリムさんの、あのようなお姿を見て「小倉丼」にたいそうな恐怖感を抱いていたのです。

 でも、ふと思い立ったのです。今日は「小倉丼」で行こうかしらんと。なにかに惹きつけられるようでした。

 注文から15分後、「小倉丼」の到着です。


 マウンテンの高級食・小倉丼、1000円

 「小倉丼」は既にいろんなメディアで、マウンテンを代表するメニューとして紹介されています。しかし、深いえんじ色の山盛り粒あんと、それを取り囲む缶詰パイン4つ。頂上にはあんことは到底合いそうに無い、パセリが乗っかっています。

 天辺から視線を下げて行き、水平目線で見た小倉丼。


 ホリゾンタル・小倉丼

 上部のあんこの下に何が埋められているのだろうと、想像力がかきたてられるビジュアルです。

 おなかが空きました。さっさと食べることにしましょう。まずは内容の確認をしてから。山盛りあんこをかき分けると…、


 かき分けてみた

 粒あんの下には赤いご飯と、胡桃二玉分、2cm角くらいの煮えたキウイが数個。半玉分くらいでしょうか。


 すこしアップで

 まずはあんこからいただきます。…ふむ、冷えたというか、冷たい粒あんですね。もっとほかほかしているのかと思っていただけに、しょっぱなから驚かされました。お味はいたって普通のあんこ味です。


 お赤飯に見えるけど…

 次は問題の赤いご飯。こうしてみると、お赤飯に黒胡麻が掛かっているようにみえますが、実際は「甘口イチゴスパ」と同じイチゴ香料がふわりとただよう、あったかいご飯に、キウイの種が混じったものです。
 ごはんは固めに炊かれていますね。油にまみれているようなことはなく、おはしですくうと、ぱらっして、ほろほろと崩れます。案外食べやすいかも。
 あんことご飯を同時に食べて、「いちご大福」のような感覚でいただくと、あんこの強い甘みのために、ご飯の違和感はあまり感じられませんでした。これは美味しいですわ。

 とにかくあんこが多いので、あんを大目に、ごはん少な目のコンビネーションで食べていると、突然、強烈な酸味が舌を刺します。…キウイでした。煮えたキウイはこんなにすっぱくなるのですね。いままで甘さ中心に食べていただけに、この突然の酸味の主張にはひるんでしまいました。

 「ぅー、このキウイのすっぱさは合わないかも」と思っていたところに、「コリッ」とした歯ごたえの後に、軽い苦味が現れました。くるみです。
 このくるみも、あんにもイチゴごはんにも合いません。苦味よりも食感が厳しいです。ガリガリと口を何度も動かして咀嚼しなければならないので、満腹中枢が刺激されて、おなかがどんどん膨れてきます。くるみ、あなどっていましたわ。

 パインは救い。予想の付く甘みと酸味は口休めにもってこいです。

 キウイとくるみに悩まされながら、イチゴ大福ごはんをもぐもぐっ…と。


 完食できました

 はい、ごちそうさまでした。16分30秒で登頂成功です。メモを取っていなければ、10分は切れたかもしれません。

 「小倉丼」、思っていたほどの強敵ではありませんでしたが、キウイとくるみのために、2度目を登る気にはあまりなれませんでした。

 量は適正でしょう。マウンテンならこれくらいなくては。
 あんこはどれくらい使っているんでしょうね。以前、テレビで調理風景を見ましたが、どかどかと盛っていました。はかりにのせてみたいですわ。

 あー…、はかりを持ってもう一度登らなければならないのでしょうか。ちょっとばかり、いやです。


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