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2007.02.22

ラブ語アワード2007 ―バレンタインデーカタログのラブ度調査・名古屋でどれだけ愛が叫ばれていたか―

 バレンタインデーから1週間が経ちました。チョコレートの贈答が上々に運び、ラブ状態の方々がいらっしゃるでしょう。一方、不首尾に終わった方もいらっしゃると思います。来年に期待してくださいませ。
 ただ、今年のチョコレートのトレンドは「自分へのご褒美」だったそうです。普段は、なかなか手が出せない高級チョコレートを、たまの贅沢とばかりに、百貨店のバレンタイン催事で買いこんで、自分でじっくりいただくのだそうです。バレンタイン催事では、普段はその店舗に出店されていないブランドのチョコレートも販売されるので、自分のために購入したくなるのも分かります。もちろん甘党の私も自分のために購入してきました。美味しかったです。
 しかし、現代日本のバレンタインデーの本来の目的は、想い人に自らの心の内を告げることにあると言って良いでしょう。同様の現象は、クリスマスの頃にも見られます。

 クリスマス【Christmas; Xmas】
 (Xは「キリスト」の意のギリシア語Xristosの頭字。masは祭日の意)キリストの降誕祭。12月25日に行う。もと太陽の新生を祝う「冬至の祭」がキリスト教化されたもの。ギリシア正教会では1月6日。聖誕祭。降誕祭。ノエル。[冬]

 バレンタイン‐デー【St. Valentine's day】
 (聖バレンタインは269年頃殉教死したローマの司祭)2月14日。聖バレンタインの記念日。この日に愛する人に(特に女性から男性に)贈り物をする。日本では1958年頃より流行。
 (岩波書店『広辞苑』第五版)

 『広辞苑』で定義しています。クリスマスは「愛」は関係ないのです。バレンタインデーには、きちんと「愛する人に(特に女性から男性に)贈り物をする)とあります。バレンタインデーこそ、「愛の日」であり、「ラブ」を声高らかに叫んでも良い日なのです。 先ほど、今年のバレンタインデーのチョコレートのトレンドは、自分へのご褒美だと書きましたが、主たる目的は、『広辞苑』にあるよう、想い人に自らの心中を伝えることにあると考えて良いでしょう。
 チョコレートを販売する側も、「自分へのご褒美」トレンドは了解しつつ、ラブを前面に押し出してきています。バレンタインデー前に百貨店で配布されていたチョコレートカタログに目を通して分かりました。あちらこちらに「ラブっぽさ」が散りばめられているのです。
 一昨年の冬に、百貨店のカタログを使って、クリスマスケーキの祝い言葉調査というのを行ってみました(昨年のクリスマスにも行う予定でしたが、時間がとれずにお蔵入りになりました。そのお蔵入りになった分は、今年末の調査に生かしたいと思います)。その調査の結果、祝い言葉が「メリークリスマス」という英語から、「ジョワイユーノエル」というフランス語に移り変わりつつあることが分かりました。
 このクリスマスケーキの祝い言葉調査方法を踏襲して、バレンタインデーのラブ語度調査を行ってみることにいたしました。これにより、カタログから発散される「ラブっぽさ」が、どこに端を発しているのかを、多少なりとも明らかにしたいと思います。


○調査方法
1.名古屋市内の主要百貨店5店舗(JR名古屋タカシマヤ、松坂屋、丸栄、三越、名鉄百貨店(五十音順、敬称略))のバレンタインデーチョコレートカタログ2007年版から、「ラブ語」を抽出、集計して、その傾向を見る。
2.「ラブ語」は、私(桜濱)が、「ラブっぽいな」と思った語を指し、主観的なものである。
3.カタログ内の「ラブ語」は、チョコレートの商品名、店舗名、チョコレートの能書きなど、文字として印刷されたもののみを抽出する。見本写真の中の文字は除外する。
4.日本語の「ラブ語」は、ひらがな、カタカナは別とする。外国語の「ラブ語」は大文字と小文字は区別しない。
5.日本語で活用のある語は、語幹が同じであれば、同一の語としてカウントする。(例.「優しい」「優しさ」は同じ「ラブ語」)
6.外国語の「ラブ語」に、日本語の読みが付されている場合、別カウントとして集計する。
7.ページ数は表紙、裏表紙とその見返しを含む。

○JR名古屋タカシマヤ

ラブ語個数
アムール112
amour68
ハート22
18
ラブ8
クール7
7
大好き6
愛情4
大切4
優しい4
ロマンティック4
情熱3
love2
2
heart1
ウエディング1
結婚1
告白1
好き1
成婚1
ときめき1
パッショネート1
惚れ1
マリアージュ1
夢中1

 タカシマヤは国内最大の百貨店だけあり、催事のカタログには、毎回、力が入っています。今回の集計に用いたバレンタインデーカタログの中で最もページ数が多く(72ページ)、唯一平とじの豪華カタログでした。
 タカシマヤのバレンタイン催事の名前は「Amour du Chocolat! アムール・ド・ショコラ ~ショコラ大好き!~」というもので、この催事名だけで「Amour」(フランス語。「愛」「愛情」「恋愛」等の意)、それの日本語読み「アムール」、「大好き」と、3つものラブ語が含まれています。また、各ページのヘッダー部分には「Amour du Chocolat!」、商品の説明には特設販売所「アムール・ド・ショコラ」がそれぞれ記載されていて、「Amour」と「アムール」の登場回数が非常に多くなっています。この上位2つのラブ語がタカシマヤのカタログの特徴といえるでしょう。
 以下、「ハート」「愛」「ラブ」「クール」「心」と、スタンダードなラブ語が続きます。このうち、「クール」は英語の「cool」ではなく、フランス語の「coeur」(「心」「優しさ」「愛情」の意)です。ハート型チョコレートの商品名に多く使われていました。
 また、他の百貨店のカタログに比べて、結婚につながる言葉がよく出てきました。「ウエディング」「結婚」「成婚」「マリアージュ」(フランス語。「結婚」の意)などです。能書きに「ベルギー皇太子御成婚のウエディングケーキを担当」といった文面が含まれていたためです。
 タカシマヤのカタログは、全体的に能書きが多かったです。能書きが多いほど、説得力が増し、購買意欲がそそられました。

○松坂屋

ラブ語個数
ハート11
9
4
キューピッド3
2
ラブ2
quore1
ウエディング1
クール1
クオーレ1
告白1
サンチマン1
情熱1
大切1
ドキドキ1
パッショネート1
優しい1
ラブリー1

 最近、大丸との経営統合で話題となった松坂屋のラブ語です。タカシマヤカタログに頻出した「amour」と「アムール」は全く登場しません。上位は「ハート」(英語。「心」の意)「愛」「恋」と、直球のラブ語が占めています。その中で「キューピッド」が4位に食い込んでいるのは、タカシマヤのバレンタインのイメージキャラクターが「キューピー」のためでしょう。ちなみに「ホワイトデー」でも「キューピー」がイメージキャラクターになっています。
 上の表で目を引くラブ語は「サンチマン」でしょう。「サンチマン」は、フランス語の「sentiment」(「愛情」「気持ち」の意)で、綴りは英語の「センチメント」と同じですが、意味は「feeling」の方が近いようです。

○丸栄

ラブ語個数
ハート13
5
4
大切3
ラブ3
マリアージュ2
love1
愛情1
アムール1
クール1
クオーレ1
好き1
ドキッ1
はあと1

 丸栄のバレンタインカタログは、今回の調査に用いた中では、最もページ数が少ない(16ページ)ですが、ラブ語の数は比較的多くなっています。上位は、やはり「ハート」「心」「愛」と、前二者と同じような組み合わせになっています。
 注目すべきは、下位の「ドキッ」と「はあと」でしょうか。この2語はキーボードを打っているだけで、無性に恥ずかしくなってきます。特に「はあと」は、「ハート」と同じ音でありながら、「ひらがなの力」でラブ度が著しく高くなっているように思われます。
○三越

ラブ語個数
ハート10
4
大切4
クール3
クオーレ2
情熱2
優しい2
ardeur1
love1
アルデュール1
ドキッ1
ときめき1
パッショネート1
ラバーズ1

 三越のカタログは、「Class Sweet」と銘打っていて、高級感あふれるものですが、ラブ語はそれほど伸びませんでした。ラブ語を用いずに、商品説明を淡々としている印象があります。
 「アルデュール(ARDEUR)」は、名古屋栄三越バレンタイン初登場のお店の名前です。フランス語で、「熱情」の意味を持っています。
 丸栄のカタログに出てきた「はあと」と同じく、「ときめき」もかなり頬が赤らむラブ語です。これも「ひらがなの力」でしょう。「ひらがな語のラブっぽさ比例上昇の法則」を唱えられる可能性があります。但し、今回の調査では、「可愛い」は「愛」を含んでおり、「愛」にカウントしましたが、「かわいい」はラブ以外でも用いられる場面が多い語と考え、ラブ語から除外しました。

○名鉄百貨店

ラブ語個数
ハート5
4
クール2
quore1
1
アマート1
クオーレ1
大切1
出会い1
パッショネート1
マリアージュ1
優しい1
ラヴ1
ラバーズ1
ラブ1

 名鉄百貨店は、ページ数はそれほど少ないわけではないのですが、三越よりもさらにラブ語が少なくなっています。商品写真の面積を大きくとり、能書きが少ないためでしょう。
 他の百貨店でも見られる「quore(クオーレ)」は、イタリアのチョコレート店「BABBI」の商品名です。「cuore」が英語の「heart」の意味になりますが、「quore」という単語は見つけることができませんでした。「q」「c」が同じ音になるために、言葉を掛けていると判断して、「quore(クオーレ)」もラブ語としました。
 「パッショネート」も他の百貨店で見られるラブ語です。こちらはベルギーの「デルレイ」の商品の名前です。英語の「passionate」(情熱的な)でしょう。
 名鉄百貨店だけに見られた「アマート」はイタリア語で、英語の「loved」の意味です。
 何故か、「ラヴ」と「ラブ」が使い分けられているのが特徴でしょうか。

○各百貨店のラブ度
 各百貨店のバレンタインデーカタログはページ数に差があります。そこで、以上の集計結果から、1ページにおけるラブ語の個数を算出し、それを、そのカタログの「ラブ度」とします。ページ数が少ないカタログでも、ラブ語が多く使われていれば、「高ラブ度」と言えるわけです。

百貨店名ページ数ラブ語合計数ラブ度(個数/ページ)
タカシマヤ722823.92
松坂屋48430.90
丸栄16382.38
三越36340.94
名鉄百貨店36230.64

 タカシマヤが抜きん出ているのは、百貨店ごとの集計のところで見たように、ヘッダー部分に「amour」が使われている、催事場名「アムール・ド・ショコラ」が商品ごとに記されているためです。タカシマヤのカタログから「amour」と「アムール」を除くと、ラブ語合計数は「102」で、ラブ度は「1.42」となります。それでも、1ページ当りのラブ語が1を越えているために、ラブ度は高いと言えるでしょう。
 健闘しているのは、丸栄で、ページ数が少ない割には、ラブ度は「2.38」と高い値となっています。丸栄のカタログが最もラブ度が高いカタログとできます。
 最もラブ度の低い名鉄百貨店は、言葉よりも写真に力を入れているようで、能書きも少ないものでした。写真のインパクトは強いですが、ラブ語の有無も、かなり重要であると思われます。来年のカタログに期待しましょう。

 この記事は、調査続行中です。中間報告としてアップしました。写真や、総合結果などは、おって掲載する予定です。


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