今日の「山」登りは「おしるこスパ」リベンジ&「野菜トースト」
野球の世界一決定戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が行われています。2006年3月16日(日本時間)、2次リーグ・韓国対日本戦。日本は韓国に1−2で敗れました。この敗戦によって、決勝トーナメントはほぼ絶望となりました。
試合終了後、日本代表のイチロー選手は記者団に「この試合の感想は?」と訊かれ、激しい感情を抑え、搾り出すような声で答えたのです。
「僕の野球人生でもっとも屈辱的な日です」
しかし、運命はどのように動くか分かりません。
優勝候補だったアメリカがメキシコに2点を与えて敗戦し、失点率の差から日本がまさかの決勝トーナメント進出。
そして、日本は今回のWBCにおいては3度目となる今日の対戦で、韓国に6−0の大差を付けて決勝進出をものにしたのです。
屈辱を感じていたのは、イチロー選手だけではなかったはずです。選手の誰もが同じ想いだったはずです。ただ、イチロー選手以外はそれを口にしませんでした。いや、むしろ普通に考えるならば、逆でなければならないのです。他の選手が感情を露にし「屈辱的」と言い、イチロー選手は寡黙に、冷静に試合を振り返る…。
あの「イチロー選手」が「屈辱的」と言った。そのことは、チームメイトに計り知れない影響を与えたことは想像に難くありません。今日の試合は、なにかしら鬼気迫るものがありました。
「3度目の負けは絶対に許されない」と。
あの敗戦がなければ、イチロー選手のあの一言なければ、今日の日本チームの力強いプレイは観ることができなかったでしょう。
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私も昨年の8月、夏真っ盛りの只中で、一人ごちたのです。
「屈辱的だ…」
自分が信じられませんでした。このようなことがあってよいものなのか。いや、断じてそれはあってはならない。「それ」とは、
「喫茶マウンテンの『おしるこスパ』を残してしまった」
「山」で食事を残すことは、さらに屈辱的な言葉で言い換えられるのです。
「遭難」…。それは「登山者」にとって最も忌むべきことです。自らの意思で甘口に登っておきながら、それを中途で断念をする。それは恥以外のなにものでもないのです。しかも「甘党」を自認している私です。「屈辱」「羞恥」「自責」…、言い知れないほどの様々な念に圧しつぶされそうになりました。
「この屈辱は絶対に晴らさねばならない」
以降、「山」に登るたびに、メニューの「甘口」欄の「おしるこスパ」の文字に目をやり、
「いまに制してあげるわ」
と、臥薪嘗胆の思いでおりました。
そして、ついにその時が来たのです。
3月初め。初登山から1年が過ぎようとしている日でした。
「悔いを残したまま、2年目を迎えてはならない」
そして、初回に同行してくださった友人ささのってぃ氏に「山、登るよ」と再度同行をお願いいたしました。ささのってぃ氏にとっては、災難以外の何ものでもありません。しかし彼は快く同行に応じてくださいました。
「甘口などには登らないからね」
と、きっちり予防線を張って。
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19:30。店内は3,4組ほどの学生風登山パーティ。人数はそこそこ多いですが、待たねばならないほどではありません。
隅の席に就くと、店員さんがメニューを持ってきてくださいました。私は初めから決めていた「おしるこスパ」、ささのってぃ氏は「シーフードトマトピラフ」をオーダー。トマト嫌いの彼にとっては、チャレンジャーシップ溢れる、アグレッシブなオーダーです。
やはりスパの食器とは思えない
前回の遭難には、2つの要因がありました。
1.作戦を立てすぎた。
2.おしるこでは無い「何か」の味がした。
「『山登り』に作戦を立ててはならない」。それが前回の遭難で得た教訓です。「『山登りには無心」で挑まなければならなかったのです。
後者は、私の力ではどうしようもありませんでした。調理過程で何かが起こったとしか思えないからです。「おしるこ」に「めんたいこ」の味が加わっていたのです。詳しくは前回の「おしるこスパ」の登山記録をご覧くださいませ。
入山から20分後。7ヶ月前、私を苦しめた土鍋が運ばれてきました。相変わらず、何故だか泡立っています。スパとおしるこが私にはうかがい知ることのできない反応をした果てなのでしょう。正体不明の泡を含めての「おしるこスパ」なのです。
泡立つおしるこ
前回、めんたい味で私を苦しめてくれたおしるこの味はどうなっているでしょうか。まずは、おしるこをひとすすり。
…うん。大丈夫だ! 普通のおしるこの味だ!
いけそうです。これならばいけそうです。さて、無心で食べ続けますよ。
おしるこスパ・全容
「おしるこスパ」の形態は、前回となにも変わっていません。小型の土鍋におしるこが張られ、下から、太麺のスパ・切り餅3個・あんこ玉の3層構造となっています。あんこ玉は直径55mm、冷たいまま放り込まれたため、表面はぬるく、芯は冷えた状態になっています。このあんこ玉は食べ進めるにつれてしるこに溶けていくこととなります。
5センチのあんこ玉
切り餅は70mm×35mm×15mm。表面は焼いていないため、運ばれたときからかなり溶けてしまっています。とろけた餅はじつによく伸びますが、ねっとりねっとりと噛み続けなければならず、あごは疲れ、満腹中枢への刺激は強いです。さらには餅の淡白な甘さとあいまって、これはかなりの苦労を与えてくれます。
もち(+自然とくっついてくるスパ)
おしるこスパの辛さは2点。汁気が多いこと。そして、炭水化物の甘さが続くことです。さすがに8合目まで登ったところで飽きが来ました。「味を変えねばいけないことになる」と判断した私は、追加注文をいたしました。
おしるこスパ・8合目
「野菜トースト、お願いします」
でかいけど普通です
「山」のトーストは四つ切食パンが使用されていてボリュームたっぷりです。両面に絶妙なキツネ色の焼き目が付けられ、間にはマヨネーズをベースにトマト、タマネギ、キュウリのスライスが挟み込まれています。この内容物から想像されるとおりの、至って普通の味付けでした。口休めにはもってこいです。
野菜嫌いでなければ、あっさり登れます
追加注文した野菜トーストは実に効果的で、残り2合をすいすいと食べ進めることができました。
そして、夏の屈辱を晴らす瞬間が来たのです。
屈辱を雪ぐ
登頂までは約20分。やはり甘口スパの中では食べにくい部類に入るでしょう。「ダブル」量を考えると気が遠くなりそうです。
ささのってぃ氏は早々と「シーフードトマトピラフ」を平らげていました。
シーフードトマトピラフはトマトソースが混ぜられたピラフがベースとなり、シーフードミックスが混ぜ込まれています。原型のトマトが苦手なささのってぃ氏も「これなら大丈夫」とあっさりと完食です。
おしるこスパと、あまりに異なる。
これで、唯一心に引っかかっていた「山」のトラウマが、完全に解消されました。
すっきりしたこの心をもって、2年目もガシガシ食べ続けることにいたしますよ!
もちろん「野菜トースト」も登頂いたしましたよ
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コメント
>オブライエンさん
記事を拝見いたしました。
いよいよ、マウンテンに近づいているような…。
でも、美味しそうです。「ピザ」となっているがため、手を出しづらくなっていると思います。完全な和菓子と思い込んでいただくのがよいでしょうね。
投稿: 桜濱 | 2006.06.10 00:43
追記・この前おしるこピザを投稿させていただきました。なお現在は抹茶おしるこピザになっているそうです。
http://blog.so-net.ne.jp/yfmaki/2006-05-22
投稿: オブライエン | 2006.06.09 10:48
>オブライエンさん
「おしるこピザ」があるのは、呉服町の地下、本屋の隣のお店でしょうか。行ったことはあるのですが、「おしるこピザ」には気づきませんでした。次に来静する際は、ぜひともいただかねばなりません。良いネタをどうもありがとうございます。
「おしるこスパ」は「甘口バナナスパ」ほどではありませんが、かなり強力な「逃げ道の無い甘さ」を持っています。ひたすら続く炭水化物の攻めが厳しいですわ。
「おしるこスパ」のしるこはこしあんですが、乗っかっているあんこ玉はつぶあんなので、両方楽しめますよ。あまりありがたくありませんが(笑)
投稿: 桜濱 | 2006.05.26 00:52
おしるこスパ、なんだかかなり甘そうですねー。ちなみにわたしはおしることいったら断然粒あんはですね。静岡にはおしるこピザというのがあります。一度チャレンジされてはいかがでしょうか?
投稿: オブライエン | 2006.05.25 15:32
>さとしさん
最初の登山が「鍋スパ」とは! なかなかの冒険家でいらっしゃいますね(笑)
あの鍋は、間違って買いすぎたという話です。その失敗をものともせず、「鍋スパ」なんてものを作り出すというのは、加納マスター以外にいらっしゃらないと思われます。
私はサボテン未経験なので、早いところ食べたいです。早く夏になって、ビニールハウスの中で伸び伸びと育ってほしいものです。
投稿: 桜濱 | 2006.04.03 02:00
私は一度だけ鍋スパを食べに行きました。 最初はこれは一家でシチューとかを作るときの鍋だろ???と思いました。(笑) わたしの箸休めはサボテンピラフです。 そして、ついに鍋スパを食べたら、鍋の中の汁には味はない。最悪でした。でも、食わねば!!!登頂せねば!!!
投稿: さとし | 2006.04.01 21:57
>リムさん
あっ、しまった。私のチャーミングさが失われてしまいましたか(笑)でも、ず~っと心残りだったのです。わだかまりだったのです。リベンジをお許しくださいませ。
来月の某日、「加納マスターにオーダーおまかせオフ会」なるものが行われるようです。その際、新作が登場するかもしれません。「小倉丼」を上回るくらいインパクト大の甘口が登場して欲しいですわ。
>藤田チエさん
ただでさえ太麺なのに、汁を吸って細いうどんのようになっていました。
おしるこにスパを投じているだけなので、味はご想像通りのものだと思います。このスパが辛いのは、味の変化の無さと量の多さですね。見栄えは地味なのに強力。記事を書くには、少々やっかいなパターンです。
新作が写真映えするものならば、すぐさま登りに行きますよー。
>みんたさん
お食事前に、当方のブログをご覧いただくなんて…。チャレンジャーですね(笑)
前回もいいところまでいったんですけどねぇ。あと一歩が踏み出せませんでした。暑かったですし。無謀でした。みくびっていました。申し訳ございません。
実物からは、ビジュアル通りの、どんよりと澱んだ雰囲気が放たれていて、迫力ありますよ。それに比べると「野菜トースト」なんて、ディズニーランドです。
メニューは入れ替わりが激しいですが、減る気配があまりありません。それなのに新たなる壁が…。楽しみですねぇ(笑)
今年は、みんたさんも是非一度は登山を!「マカライス」なんて仰らずに、「イチゴ」とか「抹茶」を是非是非!!
投稿: 桜濱 | 2006.03.23 03:15
食事前に読んでしまって、すでにおなかいっぱいですが…(た~け^^;)
とにかく再チャレンジ成功おめでとうございます。
おしるこスパ…いつどなたに見せていただいてもコイツに向かっていける気がしないです。それに比べると、野菜トーストやピラフは「ぜひ食べてみたい」と思わせます。
変幻自在な山のメニュー(それでけメニュー豊富なのですね)にまた壁が!の情報も見逃せません。わたしも今年は1回くらい登山したいものです、たとえマカライスに逃げても(苦笑)
投稿: みんた | 2006.03.22 20:12
スパに見えませんね。
普通に小豆色した鍋焼きうどんかと。
私は餅と汁だけなら手伝うことができるのですがね。
お疲れ様でした。
でもほっとしているのも今のうちですね。
マスターが考えているであろう新たなる山、気になります。
投稿: 藤田チエ | 2006.03.21 14:13
「あの甘口王も、おしるこにだけはやられている」
それが返ってチャームポイントだったのに(笑)、
リベンジを果たしてしまったんですね(笑)
お疲れ様でした。
聞くところによると、最近のマスターは新商品開発意欲に燃えているとのこと、
再び我々の前に新たな壁が立ちはだかるのも、ずっと先のことではないかもしれませんね。
投稿: リム | 2006.03.20 23:21