大阪の甘さと、印度の刺激
しばらく、更新が途絶えていましたが、やや速度が回復しそうです。忙しかったために体力の回復の方は、もうちょっとかかるかもしれません。
なにか、力の付くものを食べねば。
おっと、違いますよ。
いつもだとこのような流れのまくらだと、「『山』に行ってきました」となるのですが、今回は違います。別の「甘み」が私の手元にあるのです。
コレ。
大阪新名物 たこ焼きようかん
先月、黒帯認定のお祝いとして、藤田チエさんが送ってくださったのです。ありがとうございますっ!
それにしても、大阪にこのような名物ができていたとは、全く知りませんでした。しかしあってしかるべきの品といえるでしょう。地方性を問わない甘みの代表格「ようかん」。それに、土地にしっかりと根付いた「たこ焼き」を組み合わせる方がいらしゃるのは、予想しうべきことだと思います。
どちらもメジャーな日本の味覚。しかしながらそれのアンサンブルの味がどんなものになっているのか…。そちらは全く予想が付きません。どきどきします。このどきどきは甘さが目の前にあるからなのか、食べた後の状態を思うからでしょうか。
二つ三つ、ようかんではありえないものが入っています
販売元は「なにわ名物 いちびり庵」とあります。
いちびる
大阪弁などで、出しゃばる。図に乗る。
〔「市振(いちぶ)るの転訛とする説が有力。市振るは「魚市場で競りを仕切る」ことの意〕
(三省堂「デイリー新語辞典」goo辞書版)
あぁ、いちびってこのようなモノをお作りになったのですね。いちびりすぎですわ。でも、そのいちびりを全面的に受け止めましょう。さぁ、おいでなさい。
おっと、その前にようかんに対する礼儀を果たしましょう。
思い切って玉露淹れました
大前提:たこ焼きようかんはようかんである。
小前提:ようかんには緑茶が合う。
結論:たこ焼きようかんには緑茶が合う。
以上、三段論法で演繹的に導き出されたようかんの準備態勢です。さて、箱を開けてみましょう。「山」の奇天烈メニューに慣れたこの身なのに、ドキドキ感は増すばかりです。
透明のビニールじゃなかった
銀色のものでしっかりとパックされています。そう簡単に正体を明かさないおつもりですね。緊張感を高める演出方法を心得ていますね、いちびり庵さん。
しかし、もう覚悟は決まっています。ざっくりとハサミを入れて、
ようかん、入ハサミ
銀包みをめくると…、
思わぬ透明感
予想していたよりも、あっさりとした色使いです。厚さ15mm、長さ125mm、幅47mm(実測値)。普通のようかんに比べて透明度が高いですね。ようかん本体を透かして見えるのは、たこ焼きの友のアレでしょう。
逆光を浴びせかけてみる
銀色包みを4分の3くらいまで剥いで、下からライトを当ててみました。
厚さに比べて重さが耐えきれなくなったのでしょう。「ぷんなり」と頭を垂れています。実るほど頭が垂れるものなので、ようかんへの期待も膨らみます。
いよいよ、味見です。私は甘党。これを薄くカットして、つまようじで食べるようなことはできません。怒涛の攻めを見舞いますよ。
がっぷりと。クワガタにも見える
あぁ、これは、まさしくたこ焼きの味。生地の方ではなくて、ソースの味ですね。たこ焼きソースから酸味を抜いて、甘味を強くしているようです。あずきの味は全く感じられません。でも、ようかんとしかいえない歯ざわり。
そして、青ノリの主張がかなり強いです。これもメインのソース味をそぐことなく、妙なる磯の風味を加えております。
「のちのち」としたようかん特有の歯ざわりを楽しんだ後、ソースと甘味と磯がのどを通り過ぎると、そこには、まぎれもないようかんの甘さが残るのです。でも、やはりソースの辛みが加わっているからでしょう、その甘さも長く後を引くことはありません。
これは、美味しいですよ。
ようかんとしてよりも、「珍味」の味わいですね。さいころ状の甘辛いマグロのおつまみなどに近いですわ。
ぱくぱくぱくっと、あっという間にごちそうさまです。玉露をすする。
ちょっと変わった甘さで満足
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実は、チエさんからの贈り物は「たこ焼きようかん」で2回目なのです。「たこ焼きようかん」到着から、遡ること三ヶ月。一通の封書が届いたのです。
チエさんの直筆イラスト入りですよ
中を見ると、お手紙とともに、色とりどりの謎の小粒が封じられた小袋が入っておりました。以前、私がチエさんにお譲りしたサルミアッキのお礼にと、日本では珍しい、印度国のハーブを送ってくださったのです。
「どうもありがとうございますーっ! すぐに味の感想を書きますね」
と、お返事したまま早三ヶ月半。非礼も甚だしいです。本当に申し訳ございませんっ!
このハーブは、食後の口直しに食べるもので、調味料というよりも、ガムやアメ玉のような食べ方をするものだそうです。
頂いたその日の夕食後、「ほんの少量ずつ食べてください」とのお言葉通り、口にちょっぴり入れてみました。
印度ッ!!
としか形容のできない味がぶわっと広がります。辛味はそれほど無いのですが、味が複雑に入り組み、口腔から咽喉、鼻腔へと印度が走り抜けていきました。
これは、強烈ですわ。これを上回る口直しは、当面出会いそうにありません。
それ以来、なかなか手をつけることが出来ずに、輪ゴムを掛けて、調味料入れに保管しておいたのですが、たこ焼きようかんの登場で、活動再開です。
小袋から小皿(バールのようなもの)に、パラパラッと移し変えて調査開始。
凝縮されたインド
これをそのまま口に流し込んだら、最初に食べたときと全く同じ感想しか出てこないでしょう。この混沌とした状況に秩序を与えねばなりません。種類ごとに分類してみましょう。
細かい作業は結構好き
つまようじを使って、ちょいちょいちょいっと、色と形の違いごとに選っていきます。
そして、分類終了。
こんなに入っていたのか!
14種類に分けることができました。内訳は
・球形…赤、深紅、緑、黄、銀
・紡錘形…深紅、黄緑、黄、白
・タネ…深紅、黄
・その他…黄緑ベビースター形、氷砂糖形、不定形大型
です。
それでは、個別に味を見ていきましょう。
・球形
赤―φ約3mm(平均。以下同様)。甘い砂糖玉。中心部は白色
深紅―φ約2.5mm。甘い砂糖玉。内側は白色。表面のコーティングの厚さは赤玉に比べて薄い。
緑―φ約3mm。甘い砂糖玉。赤の色違い。
黄―φ約3mm。甘い砂糖玉。赤の色違い。
銀―φ約3mm。甘い砂糖玉。甘さが来るのが、他に比べて遅い。銀色のコーティングがやや固いか。
・紡錘形
深紅―長さ5〜6mm。甘い。砂糖でコート。芯に香辛料(シード)。このシードは固い。噛むとピリッとした辛みと強い清涼感。砂糖玉と違い、歯で破砕されたシードが舌に残る。このスパイスミックスの強い香りは、このシードによるものと思われる。
黄緑―長さ5〜6mm。甘い。砂糖でコート。深紅の色違い。
黄―長さ5〜6mm。甘い。砂糖でコート。深紅の色違い。
白―長さ7mm。甘い。砂糖でコート。破裂した米粒(五分がゆ)の形。
・タネ
深紅―長さ6〜7mm。着色のみで甘みはほとんど無し。
黄―長さ5〜6mm。深紅の色違い。
・その他
黄緑ベビースター形―長さ20mm(最長)。刺身のツマの大根に似た、シャリシャリした食感。漢方薬っぽい香りとほのかな辛み。数の上では最大勢力。
氷砂糖形―見たまま氷砂糖。なのに、他のもののコーティング砂糖よりも甘さが下回る。
不定形大型―長さ11〜12mm。深紅。ドライフルーツが細かくカットされたもの。ガムやグミキャンディのような歯ごたえ。砂糖とは違う、抑えた甘さ。
●結果
砂糖玉、砂糖コーティングされたシード、着色のみのシード、ベビースターっぽいもの、その他の甘さと、五種に大別できることがわかりました。
なお、紡錘形とタネ部門に用いられているシードは、S&Bさん提供の「スパイス&ハーブ事典」から「フェンネルシード」ではないかと思われます。「種子には消化を助け、口臭を消す効用があることから、口に入れ噛む習慣があります」という用途にも合致します。
これらを総合すると、フェンネルシードの軽い辛みと、スーッした清涼感が主となり、砂糖玉とコーティングの甘さがその強烈さを和らげ、黄緑ベビースター(っぽいもの)や氷砂糖・ドライフルーツで、また別の甘味と辛みを加えることで、味を複雑にしているといえましょう。
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「たこ焼きようかん」も「印度国のハーブ」も、実に個性の強い食べ物でした。「これぞコネタ!」と声を大にせずにはいられない贈り物です。
チエさん、本当にどうもありがとうございました。今後も、お互い切磋琢磨して、コネタ道を突っ走りましょう!
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