怖いマンガはやっぱり怖かった
デイリーポータルZの「駄洒落フーリガン」でMVPを取ったのが8月の終わり頃。ようやく、その賞品が届きました。
賞品は「怖いマンガ」。駄洒落と何のつながりも感じられませんが、そこが日刊デイリーっぽさとして受け取ることにしましょう。
モノがモノなので「恐怖新聞」みたいに、夜中に「賞品で〜す…」なんて届けば面白いのだけどと思っておりましたが、普通に佐川急便でやってきました。
中身を想像しながら震える手で開封すると、恐怖マンガの他に、ニフティのロゴが入った「シャーボ」(登録商標だと思いますが正式名称を知りません。軸を左右にねじると、ボールペンとシャープペンシルが切り替わるやつです)、「ボールペン」(シャーボもあるのに…)、デイリーポータル謹製スケジュール帳用シール×2も入っておりました。
正賞の恐怖マンガは、『呪われたふたつ顔』(さがみゆき著、1988年1月、ひばり書房、定価380円)というもの。副賞のシャーボには、[500]のプリントがあるところを見ると、副賞の方がお値打ちモノだと思われます。
さて、「ふたつ顔」に呪われたらしい女子のお話を読んでみましょう。
うわっ!
えっ!!
ひーっ!!!
こんな怖がらせ方はずるいよぅ!
初っ端のカバーの折り返しからこれです。
「ゲームデンタク」って何よ!? 「怪談絵はがき」の当選者!? 37回も続いてるの? 当選者の住所氏名がはっきりと載っています。個人情報保護という言葉が新語であることを認識させられました。
(締切日なし)。太っ腹ですわ。昔は良かったというべきでしょうか。
いかにして、お話に引き込むかは、冒頭部分にかかっています。
あまりに呑気な顔です。火事が起きているんですよ。
それに、世界が歪んだような遠近感。
右からの風に流されているような書き文字。
話に引き込む力は十分に持っているといえるでしょう。
冒頭部分をどうにか乗り切ると、火事のきっかけとなった、過去の恐ろしい物語が回想されます。見開き2ページで、必ず一ヶ所はつっこみどころを入れておくという、盛りだくさんな構成となっております。
後半、かなりの盛り上がりを見せるところで、とんでもない文章が目に入ってきました。
「●ひばり書房の本に君の名前がのっていたら、その本の題名を葉書でしらせてよ。」
半分切れていますが、右の人は血を流して倒れているのです。それなのに「しらせてよ」ってあまりにもフレンドリーな語り口。販促手段としては明らかに失敗です。
そして、追い討ちを掛けるように、その下はこう続くのです。
「次回のゲームデンタクが当る抽選に優先参加できちゃうんだよ〜ん。(コマーシャル)」
そこまで、ゲームデンタクを推したいのですか?そんなにゲームと電卓がくっついたものがいいのですか? この文章を書いた人が、今の携帯電話を見たとしたら卒倒するかもしれません。
「できちゃうんだよ〜ん」に至っては、もうこのテイストに慣れてきた自分を感じましたが、「かっこ コマーシャル かっことじる」で気が遠くなってきました。柱の部分に恐怖を埋め込んでいるとは思いもよりませんでした。
このゲームデンタク抽選告知は、なんと、もう一ヶ所あるのです。忘れた頃にもう一度恐怖を呼び起こさせるという、高等手段を用いているのです。
腹筋を痛めながら、どうにかこうにか読み終えると、奥付にこんな一文が。
「このこわい物語は」? 「このこわい物語は」!? 「このこわい物語は」!!
なにを言っているのでしょう。もうわけが分かりません。
怖いというのはどのようなことなのでしょうか? 人外の者が跋扈する世界が怖いのでしょうか。猟奇的な殺人事件などを見聞きすることが怖いということなんでしょうか。
この本を読んで、恐怖とは「自分の理解を越えた思考に接すること」が一つの要素であると考えたのでございます。
人はばけもの。世にないものはなし。 井原西鶴
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コメント
>はぴたんさん
残念ながらふたつ顔の怖さは私にはわかりませんでしたよ…。死んだ姉の霊がとりつくとかなんとかという話だったようですが、どの場面も笑いを追及しているとしか思えなかったです。
トイレは安心して向かえました。
投稿: 桜濱 | 2005.10.25 23:51
ふたつ顔の中身は、どれぐらい怖いのですかぁ~?!
怖いほうの顔が、意地悪を言うとか、最後は本体の可愛い顔面が怖い顔になっちゃうのとか・・
そんなのですかぁ~?!
夜トイレにいけなくなるぐらい、怖かったですかぁ~?!
気になってますぅ~(^◇^)
投稿: はぴたん | 2005.10.24 21:42
ヤヌスの鏡・オープニングナレーション
「古代ローマの神、ヤヌスは物事の内と外を同時に見る事ができたという。
この物語はそんなヤヌスにもう一つの心を覗かれてしまった少女の壮大なロマンである…
もしあなたにもう一つ顔があったら…」
「はてなダイアリー」って便利だなー。あっさり分かりました。
投稿: 桜濱 | 2005.10.23 22:17
>藤田チエさん
ようやく届きましたわ。他のMVPの方々の賞品と同時に送ったのではなかろうかと推測しております。
内容は時代の移り変わりをしみじみと感じさせてくれるものでした。怖がらせようとしている部分が逆に滑稽になってしまっています。
「だよ~ん」の書き方はあれでよかったのかと疑問が頭をもたげます。何も盛り上がり部分の柱に書くこともないでしょうに。
住所氏名がまんま載っているのが、この本で一番恐ろしかったところでした。
インドのハーブは、おでこに赤いしるしを書く練習でもしながら、楽しみに待つことにします。
>みんたさん
おぉ、長文コメントありがとうございます。ひばりコミックスへの思い入れがモニターから放出されていますよ(笑)
1988年初版にしては、古い絵柄だなぁと思っておりましたが、リバイバルブームにおける復刻版だったんですね。納得しました。
日野日出志は、名前と絵柄だけは知っております。ウネウネとした虫がたかっているような絵じゃありませんでしたっけ?それで柱がアレだと、腰砕け度がさらに高まりそうです。
コミックスやマンガ雑誌には、著者の住所が載ることはなくなりましたが、研究書の類いではたまに現住所がはいっているものを見かけることがあります。マンガに比べたら影響は少ないでしょうが、そこはかとなく恐ろしいですわ。
そういえば、藤子不二男A著『まんが道』では手塚先生のお宅にうかがうというエピソードが書かれてありました。昔は漫画ファンにとってはいい時代だったのでしょう。
みんたさんのコメントを拝見して、ゲーム電卓のことを思い出しましたわ! 同じクラスの子が持っていました。計算表示部分でシューティングゲームのようなことができたように記憶しております。
たしか任天堂のゲームウォッチと同時期だったと思います。ほとんどの子はゲームウォッチに流れていたので、ものめずらしかったですわ。
かすれつつあった記憶が蘇えりました。
>★香音★さん
こちらこそ、ご無沙汰です。でも、最近の京都シリーズ(2時間ドラマみたい…)も楽しく拝見しておりますわ。
私もこの賞品のことは気になっておりましたが、腰砕け賞品の極みなので、それほど気には留めていませんでした。
先週の水曜日に送り先の問い合わせメールがデイリーポータルから届き、金曜日に到着したので、届けるとなったら素早いなと賞品とは別の部分で感じ入った次第です。
先ほども書いたように、ゲーム電卓とゲームウォッチは、私の周辺ではほぼ同時期に普及していました。シェアは圧倒的にゲームウォッチが占めていましたけど。
ゲームウォッチって子供にとっては実に高価なおもちゃでしたね。確か一つ6000円でしたよ。今のゲームソフトよりも高い!
ヤヌスの鏡も懐かしいなぁ。杉浦幸ですね。オープニングでは、ヤヌスの胸像がぐるぐる回ったのを覚えております。いかにも大映ドラマらしいナレーションも。…ここまで書いていたら、すごく気になってきました。今から検索で調べてみます。
投稿: 桜濱 | 2005.10.23 22:13
桜濱さん、ご無沙汰しちゃってました…がっ、この賞品の事は、一時として忘れる事はありませんでしたw
ついについに届いたんだね~★(^0^;
もうゲームデンタクのトリコだよー。ゲームウォッチ(←コレも時代を感じさせるアイテムでゴメン!)じゃなくってデンタク!?(謎)
そして、表紙の絵も何気にヤヌスの鏡(←またもや時代を感じさせる番組でゴメン!)みたいで気になります。
あぁ、やっぱり腹筋ねじれるほど、笑わさせてもらったよ~w
投稿: ★香音★ | 2005.10.23 02:39
あっ!なつかしい!
ひばりコミックスでさがみゆき、よく見たなあ~。昭和40年代前半に少女マンガで怖いマンガブームがあって一部の漫画家さんはだいぶメジャーになったのですが、マニアにそっと愛されていた作家さんも何人もいて、40年代後半にはこのひばり書房のコミックスがずらりと書店に並んでいたのです。
この柱のフレンドリー編集さんメッセージは、そのころは目立たなかったのですが、平成に入った頃にリバイバルブームがおきて、見たらあったんですよ。以前手元に日野日出志のものがありましたが、やっぱり柱で腰砕けでした。絵がもっとグロイのでまだましだったかしら、ってマニアな比較は_| ̄|○
プレゼント当選者もそうですが、昔はマンガ雑誌には「ファンレターを出そう」といって平気で作家の住所が載っていたのです。それを見て贈り物持って訪問するファンもいたり、のどかでしたね。でもこの単行本はもっと時代の新しい復刻かなにかのようですんで、ヤバそうです(汗)
ゲーム電卓、ご存知ないですか?いや、ここに力をこめて何度も出てくるのがおかしいですが(笑)80年代の遺物として、今でも我が家に1台現役です。ただしゲームは飽きるので普通に電卓として。電卓が気軽に手に入るようになった時代でした。ここから精密機械の普及に加速度がついていくんですね。パソコン普及前、ファミコン前夜というところでしょうか。
以上、なんの役にも立たない解説もとい思い出話でした。
投稿: みんた | 2005.10.22 23:42
届いたのですね。マンガ。
そのまま怖い内容だけ伝えてくれると思ったら、要所要所フレンドリーな文体が。(笑
それにしてもプレゼント当選者の住所がまんま載っているというのは今では考えられないですね。うーん・・・。
あ、そうそう。インドの食後に食べるハーブ、もう少しお待ちくださいませ。
投稿: 藤田チエ | 2005.10.22 21:38