段階的香辛加味「カリーパン」
ミスタードーナツが現在展開中のキャンペーン「夏、ほおばれ!」。2本立てのこのキャンペーンの「フロマージュバラエティ」のことは、以前の記事で書きました。今回はもう1本の「カリッカリカリーパン」についてです。
どうやらミスドは、こちらの方に力を入れているらしく、テレビCM、ポップ、ポスターなどでは、「カリーパン」が前面に出され、「フロマージュバラエティ」の方は隅においやられています。おいしいのに。
さて、その力の入れ具合に、「カリーパン」は答えているのでしょうか。
それを確かめる前に、まず考えたいのが、「どの季節にカレーを食べるのが最も似合うのか」という問題です。
1つは「正月」。ここでの「正月」は、元日ではなく2日以降、さらに限定するなら、2日の晩ごはん以降ということになります。大晦日の夜の年越しそば、そしておせち料理といった、和風だしとしょうゆが染みわたった食事に飽きるのが、2日のお昼ごはんの後。2泊3日の単調な食を打ち破ることができるのは、かなり強力な個性を持っていなければできないことです。その任にふさわしいのが、インドの偉大な戦士「カレー」というわけです。
正月のカレー。これは日本の食文化に対するクーデターといえるでしょう。これは、ハウス食品というオピニオンリーダーの「おせちにあきたらカレーもね」のアジテーションに端を発するものであると思われます。
実に巧妙な言葉ではありませんか。最期の「もね」がです。これが仮に「を」だったら、おそらくこれほどまでに人々に受け入れられたか疑問です。「もね」という婉曲的推奨の文末にすることによって、謙譲を美徳とする日本人に、正月のカレー食を働きかけることができたのです。
もう一つ、カレーの似合う季節があります。それは夏。梅雨明けから、学校の夏休みが終わるまでの、太陽が最も働く期間。その最も暑い昼日中。それがカレー第2の活躍の場なのです。
この季節のカレー食を刷り込んだのもハウス食品です。正月はククレカレーやバーモントカレーなど、ファミリー向けのカレーを推すのに対し、夏のカレーはジャワカレー、正月のCMが居間のえなりかずきなら、夏のCMは海ぎわの役所広司や江口洋介と、明らかに対象形となっています。
そうなのです。夏のカレーは熱く、辛く、外で、なのです。
ミスドの「カリッカリカリーパン」もこれに乗っかりました。「カリッカリカリーパン」のCMでは、水着女性が快晴の空の下で海にひたり「カリーパン」をかじっています。 また、キャンペーン商品も、従来は1種類だった「カリーパン」を3種類に増やし、その中の1つは、より辛味を増したものとなっています。これは「夏には辛いカレーを食べるものだ」というミスドのメッセージだと読み取れるのです。
カリーパン3種。外からは見分けがつきません
しかし、ミスドはドーナツ業。その基本姿勢を守り、ただ辛い「カリーパン」を出すということだけに終わってはいません。ミスドの提唱した夏のカレーとはどのようなものなのか。詳しく見ていきましょう。
先ほど「基本姿勢を守る」と書きましたが、その表明であるのが「夏野菜カリーパン」です。もともとミスドに足を運ぶのは、甘いものを好む方が大勢を占めているはずです。「甘い物好きノットイコール辛いもの好き」という式は必ずしも成り立たないとは思いますが、他のファーストフード店に比すると、辛いもの好きの割合は下がるはずです。
ミスドのメインターゲットである「甘いもの好き」の人々にも、手に取ってもらえるようにと開発されたのが「夏野菜カリーパン」であると考えています。
「夏野菜カリーパン」はカレーの風味を残しつつも、最小限までその辛味を抑えた、マイルドなカリーパンとなっています。しばらくもぐもぐとかんで、「さて飲み込もうか」と思った頃合に、わずかな辛味を感じます。これなら辛味が苦手な方でも一安心。
ぱかっと割ってみると、やたらとホット感あふれる真っ赤なソースが出てきますが、これはトマトの赤みなのでしょう。ふんだんに封じ込められている野菜からは旨味がにじみ出し、深い味わいをもったカレーソースになっています。
中身はこうなっています。「夏野菜カリーパン」版
次はワンランク辛みを増して「カリーパン」を食べてみます。辛みが苦手な私、ちょっと心配です。無事に食べることができるでしょうか。
ぱくり。
うん、家で食べるカレーみたいです。しかも作った日に食べるカレーではなくて、一晩たったカレーです。家でカレーを作るときは「甘口」ばかりなのですが、「カリーパン」はそれらの「甘口」カレーよりも、辛味はちょっと強いですね。後味で、少しぴりぴり来ます。でも、それほど気になりません。辛味が苦手な私でも受け入れられるレベルです。
こっちの方が、「夏野菜カリーパン」よりも具の量が多かったです。
さて、私にとって最大の難関「辛口カリーパン」が登場です。タイトルで「段階的香辛加味」などと書き、「夏野菜カリーパン」から食べてきましたが、それは「辛口カリーパン」を後回しにしたかったからです。腰が引けてます。
すぐにかぶりつくのは危険極まりないので、半分に割って中がどのような有り様なのか情報収集をしてみます。…黒味がかった色になっていますね。黒スーツとサングラスのスナイパーのような空恐ろしさがあります。目をそらすことができません。蛇ににらまれた蛙のよう。
よしっ、意を決して食べてみましょう。いただきますっ。
辛い。
辛いですよーっ!(リトルワールドの記事でもおんなじようなのを書いてます) これは頭にがつんとくる辛さです。ヒーッてなります。けっこうな酸味も加わっているので、なおさら辛みが際立っていますわ。旨味もあるのですが、それをはるかに凌駕する辛味の主張。これは私にとってはスパイシーすぎます。小さいお子様が召し上がるとおそらく泣きます。親御さんはご注意くださいませ。
発売以来、何度かこれらのカリーパンを食べましたが、一度だけゆゆしき事態がありました。3種類の「カリーパン」のケース(スリーブ)は全部同じもので、裏面にある3ヶ所のつめ状の切れ込みを折ることで、「カリーパン」の中身がなんなのかを見分けることができるようになっています。
なのに、よりによって、「夏野菜カリーパン」の表示になっているスリーブに「辛口カリーパン」が入っていたのです。
食べる際に割っていたので、あやうく難を逃れました。手作業でスリーブの折り目をつけているみたいなので、店員さんでも間違えることはあるでしょう。でも「間違える可能性のあるものは間違える」のです。入れ間違いが無いように「六実デリサンド」みたいに別々の色のスリーブを作ればよいと思うのですが…。コスト削減なんでしょうか。
キャッチフレーズにもなっている「カリッカリ」度、高いですよ。カラッと揚がった生地に歯を入れると、カリサクっとなって、内側はふわふわで、すこしもっちりとしたイースト生地。駄洒落だけで付けられたフレーズではないですね。
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