だんごであり、ほうちょうであり、やせうま。
最近、デイリーポータルZできな粉がらみのコネタが続けて採用されています。藤田チエさんもそれを受けて、きな粉ごはんの魅力を熱烈にアピールされました。甘いもの好きの私は近いうちに試してみるつもりです。
それで、チエさんの記事に、
「きな粉ごはんに抵抗は全く無い。子供の頃はきしめんがさらに大きくなったような麺にきな粉をかけて食べていた」
という旨のコメントを書き込んだところ、
「ところできしめんみたいな麺にきなこまぶしたものってどこで食べられるのですか?」
と、お返事をいただきました。
そこで、今回は九州の一部の者にしかなじみがないであろう、この謎の麺をご紹介いたしましょう。
この麺の正式名称は「だんご」もしくは「ほうちょう」もしくは「やせうま」といいます。正式名称が三つもあるところからして、県民性がでています(どういう県民性かは詳述しません)。
「だんご」と呼ばれますが、丸くは無く、麺です。
「ほうちょう」とも呼ばれますが、物を切ることはできず、麺です。
「やせうま」とも呼ばれますが、痩せた馬ではなく、麺です。
実際どのようなものかはこちらを御覧下さい。麺ですね。おばあさんがすごい人数で麺を作っている様がすごいですね。
長いのに何故か「だんご」と言います。丸いものもだんごと呼んでいます。紛らわしいです。「ほうちょう」は「包丁」ではなく「鮑腸」。あわびの腸のような形状をしているから名づけられたということですが、あわびの腸なぞ見たことはないので、それが正しいのかどうかはわかりません。
「だんご」も「ほうちょう」も麺の事を指しますが、「やせうま」だけは麺の事も料理名も指します。麺にきな粉を絡ませたものを「やせうま」と呼びますが、「だんご」や「ほうちょう」とは呼びません。これにはこんなエピソードがあります。
昔、あるお城に若様がいました。
その若様には「八瀬(やせ)」さんというお世話係の女性がいました。
若様がお腹を空かせると、八瀬さんは手作りの麺にきな粉を絡ませたお菓子を作ってあげていました。
若様はそのお菓子がお気に入りで、お腹が空くと「やせ、うま」と美味しいあのお菓子をせがみました。
…ほんとかいな。とにかく、これが一番良く知られている「やせうま」の由来です。
私の地元では「やせうま」はスーパーなどに売っていました。ゆでうどんがビニールパックに入って売っていることがよくありますよね。あの形式で売っていたのです。なので、食べたくなったらその「やせうま」の麺を買ってきて、温めなおすだけ。あとはきな粉をかけて出来上がり。お店で食べたことはないです。出している店もあるのかもしれませんが、見かけたこと無いです。上に書いたように、わざわざお店で買わなくても食べられましたし。
なので、私の出身地にまで行って、スーパーで買わないと食べられないかも。と、思っていたら、通販で取り扱っていました。これ。
でも、通販まで利用しなくても、作ろうと思えば作れます。時間はかかりますが手順は簡単です。材料も身近にあるものだけです。
作りました。
材料
・薄力粉 100g
・塩 小さじ1/3
・水 60cc
・きな粉と砂糖 好きなだけ
これだけ
1.薄力粉に塩を入れ、徐々に水を足しながらこねます。
2.粉がまとまって、みみたぶくらいの固さになったら、ふきんを掛けて30分ほど寝かせます。
みみたぶくらいという言葉はこんなときにしか使わないな
3.生地を一つまみずつちぎって、直径1cmくらいの棒状にします。
わー、伸びるー。
なんだか…、ちょっと…な形
4.指で平らな麺状に伸ばしていきます。このとき引っ張って伸ばすよりも、生地を指でつぶすように伸ばしたほうがうまくいきます。
指で伸ばしていくのが他の麺とは違うところか
ひも麺状に
5.平らに伸びた麺を、4,5分茹でます。
空いた時間にきな粉をつくる
6.ざるにとってお湯を切ります。
つやつやの麺
7.きな粉をまぶして、全体に絡ませます。
やっぱりきな粉は山盛り
8.食べ始めます。
いただきます
久しぶりに食べたっ! 懐かしい味だわ。派手な美味しさは無いが、しみじみくる素朴な甘さ。たまにはいいわね。
きな粉が余った。
そのまま食べた。
口の中がもそもそする
「だんご」の食べ方は「やせうま」だけではなく、豚汁のような野菜がいっぱい入ったお味噌汁にいれたりします。これは「だんご汁」と呼びます。こっちは何のひねりも無い呼称です。
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コメント
どうやら、「ほうちょう」が何らかのメディア(たぶんテレビ)で取り上げられたみたいですね。何の番組だろう?
投稿: 桜濱 | 2005.06.26 23:30
>ゆうかさん
いらっしゃいませ。同郷の方ですね。よろしくお願い致します。
ブログ拝見いたしました。名古屋に移られて間もないとのこと。名古屋はいいですよ~。移ってきて一年強、美味しいもの巡りを始めて半年くらいになりますが、つくづくそう思いました。食道楽にとって楽園のような土地です。
今回手作りしたやせうまは、こしがやや強すぎました。スーパーで売っている茹ですぎとも感じられるようなやわらか~い麺の方が、きな粉がよくからんで美味しかったような気がいたします。
投稿: 桜濱 | 2005.06.05 01:55
はじめまして、ゆうかです。私は大分県出身(今は名古屋)なのでやせうまは一般的でした。ふつうにうどん麺のところに売られていましたし、きなこをまぶして食べてました。懐かしいです。身近な材料でできるのが昔からのおやつですよね。私も美味しいものとくにスイーツ大好きです。お腹がすいたら遊びにいらしてくださいね
投稿: ゆうか | 2005.06.04 19:14
>kinakoさん
コメント&トラバ、ありがとうございました。加えて「必見」という単語まで使ってご紹介いただき、大感謝です。
「やせうま」の麺は記事に書いたように、きな粉をまぶして食べることもあれば、汁物に入れて食べることもあり、用途は広く、出身県ではいたってポピュラーな食べ物です。マスコミは出身権特産のお魚や肉など高級食材だけではなく、こんな庶民的で広く愛されているおやつも全国に紹介して欲しいものです。
投稿: 桜濱 | 2005.05.26 01:35
はじめまして。
藤田チエさんのブログからたどりつきました。
初めて見る食べ物ですが、とってもおいしそうですね~。いつか食べてみたいと思います。「きな粉のブログ」で紹介させていただきました♪
投稿: kinako(きな粉のブログ) | 2005.05.25 04:47
>藤田チエさん
初めて作りましたが、なかなか上手くいきました。まあ、たいした手順ではないので、あまり失敗しようがありませんが。
「ほうちょう」が鮑腸のことだと書きました。でも、「ほうとう」と語源が同じで、訛ったものではないかとも考えられます。地方料理には謎なネーミングが多々あるものです。
今回、やせうまを手作りしてみて、一つコネタを思いつきました。そのうちご紹介できるかもしれません。
投稿: 桜濱 | 2005.05.23 20:37
うわー!わざわざ実演までしてくださってありがとうございます!!
麺はきしめんというより、甲州のほうとうみたいですね。
びろびろ~とした麺に絡むきなこ。
なんて魅力的な。
きなこを使うとなんでも素朴で心がほっこりしますね。
これ、ぜひ試してみたいです。
投稿: 藤田チエ | 2005.05.23 19:08